2013回顧・世界 災害への同情と中国への不安

読売新聞 2013年12月30日

2013回顧・世界 災害への同情と中国への不安

東日本大震災からの復興途上にあるだけに、国民は、海外で起きた災害にも強い関心と同情を寄せているのだろう。

本紙読者が選んだ「海外10大ニュース」の1位は、「猛烈な台風がフィリピン直撃」だった。レイテ島などで、死者・行方不明者合計約8000人という甚大な被害を出した。

ロシアの「隕石(いんせき)落下」が3位だ。隕石の軌跡をとらえた映像がテレビで流れ、天変地異の(すさ)まじさが強い印象を残したようだ。

今年は以前にも増して中国を巡る重要ニュースが多く、その台頭ぶりを裏付けた。

習近平氏の国家主席就任は、4位に入った。習政権は、日本に対して、軍事力を背景にした強圧的な姿勢を示している。日本の対中不信感は強まるばかりだ。

中国は、貧富の格差や環境悪化など、急激な成長に伴うひずみに直面している。

微小粒子状物質(PM2・5)による大気汚染の深刻化が5位になったのは、日本にも汚染の影響が及ぶのではないか、という強い不安の反映でもあろう。

北朝鮮・金正恩政権のナンバー2と言われた張成沢・国防委員会副委員長が失脚して処刑されたという衝撃的な出来事は、12月に報じられ、10大ニュースの「番外」として追加された。

恐怖政治によって独裁体制を固め、核・ミサイルの開発を続ける北朝鮮は、来年も、地域の不安定要因であることに変わりない。

米国では、オバマ大統領が2期目をスタートさせた(9位)。だが、外交、内政ともつまずきが多く順調とは言えなかった。

米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者が、国内外における米情報機関の広範囲な通信傍受を暴露した(8位)。傍受対象だとされた欧州諸国からは強い反発が起きた。

米国民からも批判の声が上がっており、大統領は、情報収集の方法の見直しを迫られている。

連邦予算を巡る与野党対立で、10月初めに政府機能の一部が停止する事態も発生した(13位)。

読者の心を和ませた出来事もあった。英国のウィリアム王子の妻キャサリン妃が、長男ジョージ王子を出産した(2位)。

一方、英経済を再生させた「鉄の女」サッチャー元首相の死去(7位)に続き、12月は、南アフリカで多人種融和に尽くしたマンデラ元大統領の訃報が伝えられた。2人の指導者の業績は、今日も世界に影響を与え続けている。

産経新聞 2013年12月31日

回顧2013 日本再生の希望がみえた 「成長」「憲法」で突破口開け

日本人が、誇りと豊かさを取り戻すため、活力ある国づくりに再び歩み出した1年だった。

昨年暮れに自公連立の安倍晋三政権が発足するまでの日本は、崖っぷちにあった。政権を担った民主党は国政を迷走させ、世界には「衰退する国」と映った。われわれも自信喪失気味だった。

しかし、今は違う。徳俵で踏みとどまると、経済が再生を始め、自国の安全保障を確かなものにすべく、さまざまな取り組みが進められている。

2020年東京五輪の開催が決まったのは、「元気な日本」が進行している象徴といえまいか。今年の成果を踏まえ、さらなる前進を新年に期待したい。

≪土俵際から反転できた≫

安倍首相が最も重視したのは経済再生と中国への備えだった。

まず着手したのは、デフレからの脱却だ。大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略を三本の矢とする「アベノミクス」を推進した。新しい日本銀行総裁に、積極的な金融緩和を主張する黒田東彦(はるひこ)氏を起用した。「異次元」と呼ばれた過去最大の量的緩和の実施で円安株高は加速された。

中長期的な成長に向けた手も打った。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を決断し、日本は米国と厳しい折衝を行っている。国益を守る交渉に引き続き粘り強くあたってほしい。

半面、財政再建という重荷を依然抱えたままだ。国の借金である国債の残高は、6月末時点で初めて1千兆円を突破した。

景気の腰折れを懸念しつつも、首相は税収増を図るため、平成26年4月1日から消費税率を現行の5%から8%へ引き上げることを決めた。

経済力は日本の国際的地位と国民の暮らしを支える基盤である。緒に就いたばかりの経済再生と財政再建という2つの難題にどのように同時に挑んでいくか。難問ではあるが、あらゆる手段を尽くして解決策を出してもらいたい。

尖閣諸島を奪おうとしている中国が、軍事力による圧力をますます強める1年でもあった。

中国公船が尖閣周辺で領海侵入などを繰り返すだけでなく、海軍艦船は海上自衛隊護衛艦に射撃管制用レーダーを照射、日本の接続水域へ中国潜水艦が潜航したまま入り込んできた。無人機の飛来、一方的な防空識別圏の設定など、中国の挑発行動は繰り返される。共通するのは、国際ルールや国際秩序を軽んじ、軍事力を背景に現状変更をねらっている点だ。

安倍政権はそのような中国に毅然(きぜん)と対応する姿勢を鮮明にした。国と国民の安全に責任を持つ政府として当然である。「(日本の主権への)挑戦を容認することはできない。どの国も判断ミスをすべきではない」と、2月の訪米時に講演で述べたのも、尖閣を守り抜く意志を示すメッセージだ。

≪欠かせぬ国民との対話≫

中国、韓国が日本との首脳会談を意図的に回避したのに対し、首相はミャンマーを含む中国の周辺国を相次いで訪問する外交を展開した。7月の参院選勝利で「衆参ねじれ」を解消すると、積極的な安全保障政策にも動き出した。

10月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、日本の集団的自衛権の行使容認の検討に米側が「歓迎」を表明し、防衛協力のための指針(ガイドライン)再改定で合意した。日米合同の離島防衛訓練も重ねている。

今月発足させた国家安全保障会議(日本版NSC)では、中国に対応する防衛力強化の方針が国家安保戦略として打ち出された。

政権発足から1年の節目に、首相が靖国神社を参拝し、沖縄県の仲井真弘多知事から米軍普天間飛行場移設の辺野古埋め立て承認を引き出したことは、懸案を解決する政権の姿を印象付けた。

再生の希望がみえた年にしては、首相のライフワークである憲法改正では足踏みが続いた。国民の多くが憲法改正に前向きになっており、国会ではすでに「護憲一本やり」の政党はごく少数派となった。にもかかわらず首相が提唱した改正要件を緩和する96条の先行改正論は下火となり、国民投票法改正も持ち越した。

集団的自衛権の行使容認問題は早急に決着すべき課題だ。国の防衛のあり方を大きく変えるからだ。首相は国民の理解を求めるために国民との対話を進めるときである。

読売新聞 2013年12月29日

2013回顧・日本 「五輪」「富士山」に希望がわいた

7年後の五輪開催に希望を見いだした人が多かったのだろう。

読売新聞の読者が選ぶ今年の「日本10大ニュース」の1位に、「2020年夏季五輪・パラリンピックの開催地が東京に決定」が選ばれた。

東京で五輪が開催されるのは1964年以来56年ぶりである。前回五輪は、日本の高度成長を加速させる契機となった。今度の五輪は、日本再生の起爆剤となり得る。ぜひとも成功させたい。

東京都の猪瀬直樹前知事が5000万円受領問題(16位)で辞職に追い込まれ、大会組織委員会の人事などに停滞がみられる。オールジャパン体制で着実に開催準備を進めることが肝要だ。

メーン会場の新国立競技場は「巨大すぎる」との指摘で、規模が縮小される見通しだ。無駄のない施設整備も欠かせない。

僅差の2位は「富士山が世界文化遺産に決定」だった。当初除外される見込みだった「三保松原」を含むすべての構成資産が「世界の宝」と認定された。

美しい姿を後世に残さねばならない。この夏は、マイカー規制が拡充され、入山料徴収が試験導入された。今後は一層、環境保全に知恵を絞る必要があろう。

プロ野球では、楽天の「初の日本一」が4位、「田中投手が連勝の新記録」が8位に入った。

仙台が本拠地の楽天の優勝は、東日本大震災の被災者を大いに元気付けた。日本一の原動力となった田中将大投手は、米大リーグ球団との移籍交渉に入る。さらなる活躍を期待したい。

「長嶋茂雄氏と松井秀喜氏に国民栄誉賞」は5位に入った。長嶋氏はプロ野球を国民的スポーツに発展させた最大の功労者だ。松井氏の豪快なホームランには、多くのファンが熱狂した。

巨人のユニホームを着て始球式を行った師弟の姿は、人々の記憶に深く刻まれたに違いない。

安倍政権は「参院選で自民、公明両党が過半数獲得、ねじれ解消」(3位)で安定度を増した。

一方で、課題も多い。来年4月に消費税率8%への引き上げ(7位)が実施される。越年した環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉(9位)も大詰めを迎える。

経済政策「アベノミクス」で上向いた景気を本格回復につなげる必要がある。来年は、経済再生を実感できる年としたい。

今年は、伊豆大島の土石流(6位)など、自然災害が相次いだ。防災対策を怠ってはならない。

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