コミッショナー NPBの体制強化を最優先に

毎日新聞 2013年12月31日

プロ野球 組織改革に猶予はない

日本野球機構(NPB)の新しいコミッショナーが決まった。東京地検特捜部長などを務めた弁護士の熊崎勝彦氏が1月1日付で就任する。ビジネスの拡大に向けた組織改革、統一球問題で欠陥が指摘されたガバナンス(組織統治)の構築など課題は山積している。ファンや選手あってのプロ野球という視点を忘れることなく、改革を進めてほしい。

統一球の仕様をひそかに変更していた責任を取って辞任した加藤良三氏の後任について2005年からコミッショナー顧問を務め、球界の事情にも精通している71歳の熊崎氏をセ・リーグが推したのに対し、パ・リーグの一部球団は積極的なビジネス展開を図れる人物の起用を主張したが、ビジネスを取り仕切る専務理事を新しく設けることで折り合いがついた。プロ野球がビジネスであることを踏まえれば、遅きに失した感はあるが、一歩前進と言える。

統一球問題を調査・検証した第三者委員会は再発防止に向け、コミッショナーが業務執行の責任者として職責を果たせるような組織体制の強化を求めた。さまざまな課題の解決に向け、熊崎氏にリーダーシップの発揮を求めるならば、現在はオーナー会議が決定したことを執行する権限しかないコミッショナーの役割を見直すことは欠かせないだろう。

就任会見で熊崎氏はポスティングシステム(入札制度)に代わる新移籍制度の見直しについて触れた。改定交渉は米大リーグ機構(MLB)主導で行われ、日本選手の獲得を希望する米球団から日本球団に支払われる移籍金に上限が設けられ、2000万ドルで決着がついた。

前制度では最高入札額を提示した米球団に独占交渉権が与えられたが、上限はなく、松坂大輔投手やダルビッシュ有投手の場合、約5000万ドルの入札額がついた。新制度では米球団は支出が抑えられ、日本選手は複数球団と交渉できる可能性が生まれた。日本球団だけが割をくった形で、ワールド・ベースボール・クラシックの収益分配問題に続いてNPBの交渉力の弱さがあらわになった。MLBと互角の交渉ができる人材の確保が急がれる。

日米全球団と自由に交渉できるフリーエージェント(FA)権についてプロ野球選手会は国内7~8年、海外9年となっている取得期間の短縮を求めている。移籍金が発生しないFA権を行使しての海外移籍に球団側が消極的なのは理解できるが、力のある選手が活躍の場を求めてMLBに渡る流れは止められない。

国内FA移籍ですでに実施している金銭補償や人的補償と組み合わせる形で海外FA権の取得期間を短縮することを検討してはどうか。

読売新聞 2013年12月31日

コミッショナー NPBの体制強化を最優先に

プロ野球が一層、国民に愛されるよう、力を注いでほしい。

東京地検特捜部長などを務めた弁護士の熊崎勝彦氏が、1月1日付でプロ野球の新コミッショナーに就任することが決まった。

熊崎氏は記者会見で、「プロ野球界を活力あるものにし、社会に貢献できるように持ち味を発揮したい」と抱負を語った。

2005年からコミッショナー顧問として、コンプライアンス(法令順守)問題などを担当してきた。その経験を生かし、プロ野球界が抱える問題点を改善するリーダーシップが期待される。

まず、手がけねばならないのは、足元の日本野球機構(NPB)の改革である。統一球問題で、NPBはファンの信頼を失った。

加藤良三・前コミッショナーは、統一球の反発力が高まった事実を把握していなかったという。重要情報がトップに伝わらないNPBの組織改革が急務だ。

熊崎氏は、細かく目配りできる常勤の補佐役が必要だとの考えを示した。コミッショナーが的確な判断を下せるガバナンス(統治機能)を確立する必要がある。

プロ野球を取り巻く環境は依然、厳しい。今季はセ・パ両リーグとも昨季より観客数が増えたものの、4球団では減少した。テレビの地上波中継も減っている。

ファンサービス向上のため、新コミッショナーは12球団と連携し、知恵を絞ってもらいたい。

特に、常設化した日本代表(侍ジャパン)の魅力を高め、収益につなげる戦略が求められる。ファンが喜ぶ国際試合の設定などで、手腕が問われよう。

楽天は、エースの田中将大投手の米大リーグ移籍を容認した。

大リーグに挑戦し、飛躍したいという選手の夢は、可能な限り尊重すべきだろう。

一方で、スター選手の流出が続けば、プロ野球の地盤沈下が避けられないのも事実である。

今回、日本選手が大リーグに移籍するためのポスティングシステムが、大きく変更された。移籍を容認した日本の球団が、2000万ドル(約20億円)を上限に譲渡金を設定する仕組みになった。

上限がなかった日本選手の獲得金額を抑えたい大リーグ側の意向を反映した制度変更と言える。

野球が世界的にさらに発展するには、軸となる日米の球界が共存共栄していくことが欠かせない。選手獲得における日米の公平なルール作りも、新コミッショナーの重要な課題である。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1655/