プロ野球が一層、国民に愛されるよう、力を注いでほしい。
東京地検特捜部長などを務めた弁護士の熊崎勝彦氏が、1月1日付でプロ野球の新コミッショナーに就任することが決まった。
熊崎氏は記者会見で、「プロ野球界を活力あるものにし、社会に貢献できるように持ち味を発揮したい」と抱負を語った。
2005年からコミッショナー顧問として、コンプライアンス(法令順守)問題などを担当してきた。その経験を生かし、プロ野球界が抱える問題点を改善するリーダーシップが期待される。
まず、手がけねばならないのは、足元の日本野球機構(NPB)の改革である。統一球問題で、NPBはファンの信頼を失った。
加藤良三・前コミッショナーは、統一球の反発力が高まった事実を把握していなかったという。重要情報がトップに伝わらないNPBの組織改革が急務だ。
熊崎氏は、細かく目配りできる常勤の補佐役が必要だとの考えを示した。コミッショナーが的確な判断を下せるガバナンス(統治機能)を確立する必要がある。
プロ野球を取り巻く環境は依然、厳しい。今季はセ・パ両リーグとも昨季より観客数が増えたものの、4球団では減少した。テレビの地上波中継も減っている。
ファンサービス向上のため、新コミッショナーは12球団と連携し、知恵を絞ってもらいたい。
特に、常設化した日本代表(侍ジャパン)の魅力を高め、収益につなげる戦略が求められる。ファンが喜ぶ国際試合の設定などで、手腕が問われよう。
楽天は、エースの田中将大投手の米大リーグ移籍を容認した。
大リーグに挑戦し、飛躍したいという選手の夢は、可能な限り尊重すべきだろう。
一方で、スター選手の流出が続けば、プロ野球の地盤沈下が避けられないのも事実である。
今回、日本選手が大リーグに移籍するためのポスティングシステムが、大きく変更された。移籍を容認した日本の球団が、2000万ドル(約20億円)を上限に譲渡金を設定する仕組みになった。
上限がなかった日本選手の獲得金額を抑えたい大リーグ側の意向を反映した制度変更と言える。
野球が世界的にさらに発展するには、軸となる日米の球界が共存共栄していくことが欠かせない。選手獲得における日米の公平なルール作りも、新コミッショナーの重要な課題である。
この記事へのコメントはありません。