来年度予算案 歳出改革の覚悟あるのか

毎日新聞 2013年12月26日

来年度予算案

来年4月に消費税率が8%に引き上げられ、国民の負担が5兆円増える。家計に痛みを求める一方で、安倍政権がどこまで予算の無駄に切り込み、財政健全化への姿勢を見せるかが注目された。だが、2014年度当初予算案は、社会保障だけでなく、公共事業、防衛、文教など主要経費で軒並み増額を許した。一般会計の総額は過去最大の95兆8800億円で、歳出の膨張に歯止めはかからなかった。

財政規律が緩んでいると言わざるをえない。1000兆円を超す借金漬けの財政を放置すれば必ずツケが回ってくる。だから国民は増税を受け入れた。政府が歳出を効率化、重点化するのは国民への義務だ。その改革はどこへ行ってしまったのか。

負担増を強いられる国民感情を意識し、政府もはじめは歳出改革を強く打ち出した。11月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相は「歳出の効率化を徹底する」と強調。公共事業は重点化・効率化を図り、社会保障も「診療報酬のあり方をはじめ、歳出の合理化・効率化に最大限取り組む」と述べた。政府の予算編成の基本方針の原案でも、こうした歳出抑制方針が示された。

ところが、抑制の掛け声が勇ましかったのはここまでだった。「国土強靱(きょうじん)化」を旗印とする自民党議員が「地方の活性化に公共事業は必要」と反発。臨時国会で国土強靱化基本法が成立したことを追い風に、防災・減災や耐震化、老朽化対策を旗印として、歳出圧力を強めた。結局、公共事業費は前年度当初予算に比べ実質2%増となり、2年連続で増加した。政府は今月中旬、消費増税後の低迷を支える経済対策として13年度補正予算案を編成した。そこに盛り込まれた公共事業費と合わせると大盤振る舞いと言える。

社会保障費は高齢化による自然増に加え、消費増税分の一部を子育て支援の拡大などに充て、初めて30兆円を突破した。財務省がマイナス改定を探った診療報酬も微増で決着した。安倍政権が力を入れる防衛費も「聖域化」して2年連続で増加。農業関連も、農地の大規模化や農業の基盤整備を後押しする予算を増やした。主要経費は軒並み増額され、歳出抑制の方針は1カ月余りですっかり「骨抜き」にされた。

それでも、安倍首相は「無駄を省いていくことを徹底的にやった」と自画自賛する。経済再生に重点を置き、財政健全化にも十分目配りしたとの説明だ。確かに財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額は18兆円と、前年度より5兆2000億円圧縮された。中期財政計画で示した圧縮目標の4兆円から1兆2000億円の上積みとなった。

読売新聞 2013年12月25日

14年度予算案 景気重視で消費増税乗り切れ

無駄な歳出の見直しは道半ばだ

来年4月の消費税率8%への引き上げによる景気失速をどう防ぐか。成長力の強化に全力を尽くさねばならない。

政府は2014年度予算案を決めた。政策や国債の利払いなどに使う一般会計総額は、13年度当初予算比3・5%増の95・9兆円と過去最大に膨らんだ。

安倍首相は予算案を5・5兆円の13年度補正予算案と一体の「15か月予算」と位置づけ、「景気回復を全国津々浦々に届けて力強い成長につなげたい」と述べた。

社会保障改革を急げ

安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果で、景気回復は鮮明になってきたが、先行きは楽観できない。景気重視で大型予算を編成した狙いは適切である。

反面、消費増税と景気回復の追い風で、税収が約7兆円増えて50兆円に達すると見込んだことから財政規律が緩み、硬直化した歳出構造の大胆な見直しには踏み込めなかった。

首相が目標とする「経済再生と財政健全化の同時達成」の難しさを改めて浮き彫りにしたと言えよう。

象徴的なのが、最大の歳出項目である社会保障費が、初めて30兆円を超えたことである。

医療や介護などの自然増分だけで6000億円以上に上った。歳出の切り込み不足は否めない。

高齢化の進行に伴い、今後も毎年1兆円程度ずつ膨らむ見通しだ。国民の将来不安を和らげるには、持続可能な社会保障制度を目指し、改革を急ぐ必要がある。

価格が安い後発医薬品の普及などで医療費を抑える努力を続けるとともに、年金の給付水準の引き下げも検討すべきだろう。

公共事業費は実質2%増の6兆円弱だったが、今年度補正予算案で約1兆円を前倒しで計上した分を含めると、大幅増額になる。

資材価格の高騰や人手不足で公共事業の入札が不調となる例も増え、景気を刺激する即効性が薄れてきたと指摘される。

必要性の高い事業を絞り込み、円滑な執行によって効果を上げる方策が求められよう。

政府は成長基盤の強化のため、科学技術振興策などを盛り込んだ「優先課題推進枠」に1・9兆円を計上した。有効な事業を選別し、規制改革の推進と併せて、成長戦略を加速してもらいたい。

2020年の東京五輪・パラリンピック関連の事業にも力を入れた。スポーツ予算を大幅に増やしたほか、道路など首都圏の交通網整備も充実させる。ただし、巨大な競技施設の建設などでの無駄遣いを防がねばならない。

防衛費の増額は当然だ

防衛費は、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイルの脅威などを念頭に2年連続で増やす。日本の安全保障環境の悪化を考えれば、自衛隊の警戒監視体制を強化するための歳出増は当然だ。

沖縄振興予算は、要望を上回る異例の増額を認めた。沖縄県の米軍普天間飛行場の移設に必要な名護市辺野古の埋め立てについて、県の承認を得るための環境整備を図っているのだろう。

東京電力福島第一原子力発電所の事故に対応する予算も増額する。国が除染費用などで積極的に応分の負担をするのはもっともである。

農業予算はメリハリが乏しい。主食用米の生産調整(減反)を5年後に廃止するのに伴い、減反に応じた農家へ一律に支給する補助金を減らしたのは妥当だ。

一方で、農地や環境の保全を名目にした補助金などを新設した。横並びで手厚い補助を続けていては、生産性は上がるまい。

歳入を見ると、税収増により、新たな借金となる新規国債の発行額は41・3兆円で今年度と比べて1・6兆円減った。その結果、歳入に国債が占める割合を示す国債依存度は、今年度の46%から43%に低下する。

歳入4割が借金頼み

政策に使う経費を税収などでどれだけ賄えているかを示す国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額は、5兆円ほど圧縮される。

15年度までに10年度比で赤字を半減させる政府目標の達成へ、一歩近づいたことは評価できる。

しかし、歳入の4割以上を借金に頼るのは異常だ。新規発行額は減るが、過去に発行した国債の借り換え分を合わせた発行総額は約182兆円と最高額に達する。

景気回復とともに物価が上がり続ければ、やがて金利も上昇し、国債利払い費が急増するだろう。財政運営の綱渡りが続くことを深刻に受け止めるべきである。

産経新聞 2013年12月25日

来年度予算案 歳出改革の覚悟あるのか

来年4月の消費税増税で景気を腰折れさせてはならない。同時に、国民に大きな負担を強いるからこそ、政府は歳出を洗い直し、効率化を図る必要がある。

平成26年度予算案で問われたのは、その両立である。経済再生と財政健全化はともに、消費税増税を決断した安倍晋三首相の約束であり、首相は歳出効率化を徹底するとも訴えてきた。

だが、実際には予算規模が過去最大に膨らんだ。社会保障費や公共事業などが増えたためだが、支出増が避けられないなら、他の予算を切り込んで全体の伸びを抑える取り組みも必要だ。前年度を3兆円余も上回る予算案からは歳出改革の覚悟が見えてこない。

歳出の膨張は、消費税だけでなく景気回復で法人税や所得税の増収が見込めることもあるからだ。ただ、税収には景気変動で増減するリスクがあり、税収増を当てにした財政規律の緩みは厳に慎むべきだ。多くの予算を獲得しようとする歳出圧力が与党で高まっていることも要警戒である。

税収増は一方で、国債依存度も引き下げた。新規国債発行額を前年度当初予算よりも減らし、政策経費を借金以外で賄えているかを示す基礎的財政収支の赤字も5兆円以上縮小した。いずれも中期財政計画の目標を上回ったことは前進だといえよう。

ただ、歳出をもっと削減していれば、国債の発行をさらに減らせたはずだ。財政再建を着実に進めるには、歳出改革への不断の取り組みが欠かせない。

一方、政府は今回、25年度補正予算案と一体で26年度予算案を編成した。補正予算は増税による景気の落ち込みを食い止める経済対策が目的で、2つの予算を通じて成長力を底上げし、経済再生につなげる狙いがある。そのためにも個々の施策が最大限の効果を上げるよう工夫してほしい。

公共事業はその典型だ。国土強靱(きょうじん)化は安倍政権の看板であり、防災対策や老朽インフラ対策は急を要する。ただ、復興需要で建設現場の人員や資材は不足し、入札が成立しない例もある。公共事業を積み増しても消化できなければ意味はない。発注方法や資材調達などの見直しは不可欠である。

防衛費は2年連続で増額となった。警戒監視能力や島嶼(とうしょ)防衛などを強化する安倍政権の姿勢を明確にしたことは評価したい。

毎日新聞 2013年12月26日

来年度予算案 歳出改革どこへ行った

来年4月に消費税率が8%に引き上げられ、国民の負担が5兆円増える。家計に痛みを求める一方で、安倍政権がどこまで予算の無駄に切り込み、財政健全化への姿勢を見せるかが注目された。だが、2014年度当初予算案は、社会保障だけでなく、公共事業、防衛、文教など主要経費で軒並み増額を許した。一般会計の総額は過去最大の95兆8800億円で、歳出の膨張に歯止めはかからなかった。

財政規律が緩んでいると言わざるをえない。1000兆円を超す借金漬けの財政を放置すれば必ずツケが回ってくる。だから国民は増税を受け入れた。政府が歳出を効率化、重点化するのは国民への義務だ。その改革はどこへ行ってしまったのか。

負担増を強いられる国民感情を意識し、政府もはじめは歳出改革を強く打ち出した。11月の経済財政諮問会議で安倍晋三首相は「歳出の効率化を徹底する」と強調。公共事業は重点化・効率化を図り、社会保障も「診療報酬のあり方をはじめ、歳出の合理化・効率化に最大限取り組む」と述べた。政府の予算編成の基本方針の原案でも、こうした歳出抑制方針が示された。

ところが、抑制の掛け声が勇ましかったのはここまでだった。「国土強靱(きょうじん)化」を旗印とする自民党議員が「地方の活性化に公共事業は必要」と反発。臨時国会で国土強靱化基本法が成立したことを追い風に、防災・減災や耐震化、老朽化対策を旗印として、歳出圧力を強めた。結局、公共事業費は前年度当初予算に比べ実質2%増となり、2年連続で増加した。政府は今月中旬、消費増税後の低迷を支える経済対策として13年度補正予算案を編成した。そこに盛り込まれた公共事業費と合わせると大盤振る舞いと言える。

社会保障費は高齢化による自然増に加え、消費増税分の一部を子育て支援の拡大などに充て、初めて30兆円を突破した。財務省がマイナス改定を探った診療報酬も微増で決着した。安倍政権が力を入れる防衛費も「聖域化」して2年連続で増加。農業関連も、農地の大規模化や農業の基盤整備を後押しする予算を増やした。主要経費は軒並み増額され、歳出抑制の方針は1カ月余りですっかり「骨抜き」にされた。

それでも、安倍首相は「無駄を省いていくことを徹底的にやった」と自画自賛する。経済再生に重点を置き、財政健全化にも十分目配りしたとの説明だ。確かに財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額は18兆円と、前年度より5兆2000億円圧縮された。中期財政計画で示した圧縮目標の4兆円から1兆2000億円の上積みとなった。

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