厳しい環境の下、アフリカの国造りに共に取り組む仲間を助けるのは、国際常識である。
国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加中の陸上自衛隊が、小銃弾1万発をUNMISS経由で韓国軍に無償提供した。海外での自衛隊の弾薬譲渡は初めてだ。
南スーダンの治安情勢が悪化する中、韓国軍は宿営地に1万5000人の避難民を保護し、反政府勢力から包囲されていた。
韓国兵や避難民の生命にかかわる人道性や緊急性、国連平和維持活動(PKO)という公共性、UNMISS参加部隊で日本以外に同種の弾薬を携行していないことなど、どの観点からも弾薬を提供しない選択肢はなかった。
韓国軍から現地の陸自部隊に感謝の電話もあった。陸自が今後、他国に支援や救援を頼むケースもあろう。今回のような協力を重ね、国際的連帯を強めることが、陸自の安全確保にも役立つ。
政府はPKO協力法に関する国会答弁で、武器・弾薬の提供は想定されず、要請されても断るとしてきた。部隊の生存にかかわる武器・弾薬の提供を他国に要請される事態は極めて異例だからだ。
政府は今回、国家安全保障会議(日本版NSC)の4大臣会合や閣議を開き、UNMISSへの弾薬提供を、武器輸出3原則やPKO協力法の政府見解の例外扱いとすることを決めた。
手続き上の欠陥はなく、文民統制も機能したと言える。
一昨年に野田内閣が3原則を緩和し、平和構築・国際協力目的の武器提供は可能になった。ただ、提供先は国に限られ、UNMISSなど国際機関は対象外だ。
政府は、武器輸出3原則の抜本的見直しを検討している。今回の事例も踏まえ、柔軟で現実的な新原則を早期に策定すべきだ。
国連安全保障理事会は、現地情勢の悪化を踏まえ、住民保護の強化のため、UNMISSを増強する決議を採択した。展開中の軍事・警察要員約7500人に加え、約6000人を増派する。
事態の沈静化に向けて、決議を迅速に実施することが肝要だ。
独立から2年半たつ南スーダンは、大統領と前副大統領の対立が部族紛争に発展し、内戦の瀬戸際にある。これを阻止するには、国際社会の関与が欠かせない。
米国は、当事者間の対話による解決に向けて仲介を始めた。
日本も、陸自隊員の安全に細心の注意を払いながら、国際社会の和平努力に貢献したい。
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