米連邦準備制度理事会(FRB)が、危機対策として続けてきた異例の金融緩和策の修正へ、一歩を踏み出した。
緩和を打ち切る「出口戦略」の道のりは長い。市場の混乱を招かないよう、難しい舵取りを迫られる。
FRBは、米国債などを毎月850億ドル(約8・7兆円)購入している量的緩和策第3弾(QE3)の規模について、1月から100億ドル減らすことを決めた。
11月の失業率は7%に下がり、5年ぶりの低水準だった。住宅着工件数も増大し、7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率で4・1%増えた。
景気回復や雇用改善を裏付ける好材料が、量的緩和縮小の決断を後押ししたと言える。
議会の与野党が財政協議で合意し、政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)の再来は避けられる見通しだ。財政面の不透明感が薄らいだことも追い風になった。
ただし、FRBはゼロ金利政策については、解除の目安としていた「失業率6・5%」を下回った後も維持する方針を示した。
ニューヨーク株式市場などの株価が上昇している。量的緩和策の縮小が緩やかで、ゼロ金利政策の解除も急がず、金融引き締めはまだ先になるという方針が安心感を広げた点を評価したい。
為替市場では、米景気回復を背景に、ドル買い圧力が強く、ドル高・円安傾向が続きそうだ。
今後の焦点は、来年以降、FRBがどんなペースで量的緩和策を縮小していくかである。
FRBは雇用などのデータ次第で「小幅の縮小を続ける」としているが、具体策は不明だ。「市場との対話」を工夫し、縮小を円滑に進めることが重要になる。
5年に及んだ米国の金融緩和策により、過剰マネーが世界を駆け巡り、米国だけでなく、新興国などでも資産バブルを引き起こす副作用が懸念されてきた。
一方、急激な緩和縮小をきっかけに、新興国からの資金引き揚げが加速し、世界経済を揺るがす事態を避けねばならない。
FRBは米国だけでなく、新興国経済の変調にも目配りする細心の政策運営が要る。
その重責を担うのが、1月末退任するバーナンキ議長の後任となるイエレン副議長だ。雇用を重視し、金融緩和に積極的なイエレン氏の手腕が問われよう。
FRBが直面する出口戦略の試練は、日銀もいずれ乗り越えなければならないハードルである。
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