武器輸出新原則 防衛産業維持にも目を向けよ

毎日新聞 2013年12月16日

武器輸出三原則 厳格な歯止めの議論を

安倍政権は、武器輸出を原則として禁じてきた武器輸出三原則を緩和し、来年以降、新たな輸出管理原則を定める方針だ。17日に閣議決定する国家安全保障戦略と防衛大綱に見直しの方向性を盛り込む。三原則の理念を堅持した上で、厳格な基準や審査体制などの歯止めをかけることが肝要だ。国民の目に見える丁寧な議論を尽くしてほしい。

三原則について、政府は個別案件ごとに例外を認めてきたが、2011年12月に野田内閣が新基準を作り、抜本的に緩和した。相手国が日本の事前同意なく目的外使用や第三国移転はしないことを前提に「平和貢献・国際協力」「国際共同開発・生産」について、武器輸出を認めた。

今年3月には安倍内閣が、自衛隊の次期戦闘機F35の国際共同生産への参加にあたり、日本製部品の対米輸出を三原則の例外として認めた。

政権はこうした上に立って、さらなる緩和を目指している。防衛産業の技術力や国際競争力を高め、日米同盟を強化するのが狙いだ。これまでの「原則輸出禁止」をやめ、「日本の安全保障に資する場合」など一定の制限のもとで武器輸出を認め、新基準に基づいて個別に輸出の可否を判断する仕組みをつくるという。

武器輸出三原則は、日本の平和国家の理念を支えてきた基本的原則だ。例外措置を重ね、すでに形骸化しているが、見直すたびに国民への説明はいつも不十分だった。

今回も検討は専ら有識者会議に委ねられ、先の臨時国会での議論は低調だった。政権は一気に年内に新たな武器輸出管理原則を策定する構えだったが、公明党が自民党との協議で慎重な対応を求め、新基準づくりは来年以降に持ち越された。

政権が検討している「日本の安全保障に資する場合」という制限は、範囲があいまいだ。厳格な基準をどう作るか、議論を深めてほしい。基準に適合しているかどうかの審査体制を整備する必要もある。

ただ、今回の見直しには、検討に値する内容も含まれている。

例えば、国連平和維持活動(PKO)など平和貢献や国際協力での防衛装備品の供与は、野田内閣時の基準で解禁されたが、政府間の取り決めが前提で、国際機関は対象外だ。化学兵器禁止機関(OPCW)から器材提供を求められても、対応できない。こういうケースは、柔軟に認める方向で考えてもいいだろう。

一方、外国軍隊への修理など役務の提供や国産部品の輸出解禁、第三国移転に関する日本の事前同意の簡略化は、慎重な検討を求めたい。

見直すべき点とそうでない点を整理し、しっかりした基準と審査体制をつくることが不可欠だ。

読売新聞 2013年12月16日

武器輸出新原則 防衛産業維持にも目を向けよ

防衛装備面での国際連携を強化し、日本の防衛生産・技術基盤を維持するという安全保障の観点を最重視すべきだ。

政府・与党が、武器輸出3原則を抜本的に見直し、新たな武器輸出の原則を策定する作業を開始した。

3原則は、1967年に佐藤内閣が共産圏諸国、国連決議による武器禁輸国、紛争当事国向けの武器輸出を禁止したものだ。76年に三木内閣が3原則の対象国以外への輸出も慎むとして、事実上の全面禁輸に踏み込んだ。

83年以降、武器技術の対米供与、地雷探知機、巡視船など平和貢献目的の輸出や、ミサイル防衛の国際共同開発・生産について、官房長官談話で次々と例外を設けてきた。その結果、極めて複雑で、分かりづらい制度となっている。

安倍政権が今回、全面禁輸はやめて、禁輸対象国を絞り込むとともに、全体を整合性ある仕組みにするのは、時代の要請に応じたものであり、妥当である。

重要なのは、日本の安全保障に役立つ基準を作ることだ。

中国や北朝鮮の最近の軍事動向を踏まえれば、日本の国際情勢は厳しさを増している。

同盟国の米国や、欧州諸国、豪州などとの装備面の協力を拡大することは、日本の防衛技術の向上や国際連携の強化を促し、日本の平和と安全に寄与しよう。

武器の国際共同開発・生産に加えて、武器の完成品や部品の輸出も可能にすることで、国際協力を拡大することが大切である。

無論、武器の第三国移転を防止する手続きや、武器に転用されかねない汎用品の輸出管理を厳格化するなどの「歯止め」措置も適切に定める必要がある。

政府・与党できちんと議論し、早期に結論を出すべきだ。

留意すべきは、昨年度まで10年連続で防衛予算が削減されたことで、日本の防衛生産・技術基盤が揺らぎ始めていることだ。

ここ10年で90社近くの民間企業が防衛分野から撤収し、一部では特殊な熟練技術者の確保が困難になりつつある。

戦車や護衛艦、戦闘機の高性能化に伴い、装備の単価は上昇する。装備品の修理や整備費も増えている。その結果、装備の調達数を減らさざるを得なくなり、防衛産業の経営を圧迫している。

防衛生産・技術基盤の衰退は、国家の総合的な防衛力の低下に直結する。政府は、限られた予算で防衛産業を維持・育成する方策を真剣に検討する必要がある。

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