日本とASEAN 地域安定に連携強化を

毎日新聞 2013年12月14日

日本とASEAN 地域安定に連携強化を

日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議が東京で始まった。今年は交流開始から40年に当たり、ASEANにとって「最も古くからの友人」として関係を国際社会にアピールする重要な機会だ。東アジア地域の安定と繁栄を維持するため連携を一層強化したい。

安倍晋三首相はこの1年でASEANの全10カ国を訪問し、ASEAN重視を示してきた。こうした姿勢は加盟各国から歓迎されている。

首脳会議での重要議題の一つが「空と海の安全保障」だ。中国が東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定したのに続き、南シナ海上空にも拡大する構えを見せている。

フィリピンやベトナムは南シナ海の南沙諸島などの領有権を巡って中国と対立し、中国が海域の実効支配を進めようとする動きに警戒感を強めている。日本とASEANが協調し、中国に対して、他国への脅威となる行動を取らないよう求め、紛争防止のための外交努力を重ねていかなければならない。

成長地域であるASEANは日系企業の生産拠点、市場として重要性を増している。今年上半期の日本からASEANへの投資は中国向けの2倍を超えた。最近は水道や高速道路、鉄道などインフラ輸出に力を入れている。日本の高い技術を生かせると同時に、相手国民の生活の向上にもつながる。こうした互恵関係を進展させていくことが大切だ。

人の交流も活発化してきた。ASEANの国々ではアニメやファッションなど日本の新しい文化への関心が高く、和食の人気も広がっている。経済成長に伴って中産層が増え、タイやマレーシアから日本への観光客が急増している。

ASEANには人口構成が若い国が多く、教育の充実や人材育成など日本が貢献できる分野は広い。人材が育って中産層が増えれば、品質が良い日本製品の有望な消費者となり、日本の活性化にもつながる。

ASEANは2015年末を目標に、加盟10カ国が経済統合するASEAN共同体を構築する計画だ。人口6億人の大市場が登場し、地域の発展に弾みがつく。中国とのバランスを取るうえでも存在感を増す。

来年は、軍事政権から脱して民主化路線を歩み始めたミャンマーが初めてASEANの議長国を務める。共同体実現に向けた重要な年であり、議長国の責任は大きい。日本も積極的に支援していきたい。

アジアは中国の台頭やASEANの成長によって地域の秩序が変化しつつある。日本は良好な関係を維持してきたASEANとの連携をしっかり固め、アジア全体の協調ムードを高めることにつなげたい。

読売新聞 2013年12月15日

日・ASEAN 海と空で対中連携が強まった

中国が国際ルールを順守するよう、連携して働きかけることについては認識を共有できた。安倍首相の東南アジア外交の成果と言える。

日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国の首脳らが参加した特別首脳会議が東京で開催され、海上の安全、航行の自由及び、国際法の原則に基づく紛争解決などの重要性をうたった共同声明を採択した。

名指しは避けたものの、中国の防空識別圏設定を念頭に、公海上空での「飛行の自由」や「民間航空の安全」を確保するため、協力する方針も明記された。

東南アジアにはカンボジアやラオスなど中国と結びつきが強い国もある。だが、海のみならず、空でも緊張を高める中国を牽制(けんせい)する上で、日本とASEAN各国が共同声明を出した意義は大きい。

中国は周辺国と協議せずに一方的に東シナ海に識別圏を設け、全ての航空機を対象に、指示に従わなければ中国軍による緊急措置を取ると威嚇した。南シナ海での識別圏設定も示唆している。

安倍首相は、記者会見で「自由な海や空がなければ、活発な貿易は期待できない」と強調した。

首脳会議や各国首脳との個別会談では、「積極的平和主義」に基づき、地域の安定に貢献すると表明し、日本とASEAN各国との防衛相会合も呼びかけた。

中国や北朝鮮と向き合うためには、東南アジア諸国と安全保障での協力を深める必要がある。

ASEANと中国は、領有権争いの続く南シナ海での行動を法的に拘束する「行動規範」を検討中だが、中国は消極的だ。早期策定に向けて、日本は米国と連携し、ASEANを後押ししなければならない。

特別首脳会議では経済面での協力も前進した。日・ASEANの経済連携協定交渉が、投資とサービスの2分野でほぼ合意した。

安倍首相は、2015年をめどとするASEANの経済共同体設立を支援する意向を表明し、政府開発援助(ODA)供与も積極的に進めると約束した。

成長著しい東南アジアの活力を取り込むことが、日本の経済成長にも弾みとなる。

特別首脳会議で中長期ビジョンもまとまった。政治・経済だけでなく、防災面での協力を強化し、文化・芸術、観光、スポーツなどで交流を促進するとしている。

日本とASEANの友好協力は40周年を迎えた。戦略的な連携を一層強めていきたい。

産経新聞 2013年12月15日

日本とASEAN 「空の自由」で対中結束を

日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議が、中国による東シナ海への一方的な防空識別圏設定を念頭に、「飛行の自由」をうたう共同声明を出した。

中国の防空圏設定は、海、空両面からの対外拡張主義の発露としてアジア地域共通の脅威となっている。この強い対中牽制(けんせい)メッセージを歓迎したい。

共同声明には、「飛行の自由および民間航空の安全確保に向けた協力強化」が盛り込まれた。

中国が防空圏設定を発表してから時機を失せず、日本とASEANが、交流40周年の節目に東京の地から声を一つにして、それに異を唱えた意義は大きい。

中国は、その大半を勝手に領海と見なす南シナ海の上空でも、防空識別圏を設定する構えだ。

日米はもとより、領土・領海問題で中国の圧力にさらされているフィリピンやベトナムなど東南アジアの多くの国々が一層、懸念を深めている。

安倍晋三首相は首脳会議で、厳しさを増す地域の安保環境を背景に日本ASEAN防衛相会合の開催を提案した。フィリピンへの巡視船供与などを通じ海上交通の安全を確保するとも強調した。

全体会合と前後して10カ国との個別の首脳会談も開催され、安倍首相は中国の防空圏設定は受け入れられないと重ねて表明し、理解を求めた。一連の対中連携強化への取り組みを評価したい。

安倍首相は就任後1年以内でASEAN加盟の全10カ国を訪問し、普遍的価値観の重視、海洋における法の支配といった日本外交5原則を説く一方、首脳間の信頼関係構築にも努めてきた。その総仕上げが今回の会議である。

日本はASEANの「最も古い友人」だ。中国での反日感情の激化や賃金上昇から、日本の企業進出先、投資先としてのASEANの比重は一段と高まっている。

加盟10カ国は、2015年をめどに経済統合する「ASEAN共同体」の構想を持つ。実現すれば人口6億の大市場が登場し、日本の成長戦略にも欠かせないパートナーである。そうした経済分野はもちろん、対中、対韓関係の改善が険しい中で、外交・安保分野の協力の余地も大きい。

安倍政権は40周年を機に、ASEANとの関係の強化をこれまで以上に積極的に、そして戦略的に進めてもらいたい。

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