猪瀬氏5000万円 自ら進退を決めるときだ

毎日新聞 2013年12月12日

猪瀬知事釈明 もはや重責は担えない

猪瀬直樹東京都知事が、昨年12月の都知事選を前に徳洲会グループから5000万円の提供を受けていた問題で、9日と10日の定例都議会で集中的な審議が行われた。

猪瀬氏は、個人的な借入金との姿勢を崩していない。一方、肝心な点で説明が変わったり、具体的な場面について「覚えていない」などと、のらりくらりの答弁を繰り返したりした。誠実に説明責任を果たそうとしたとは、到底言えない。

都議会各会派からは、知事を続ける資格はないとの厳しい意見も出始めた。猪瀬氏は、1年間の知事給与返上の考えを示し、続投の意欲を見せた。だが、東京五輪の準備や来年度予算案とりまとめなど都政の重要課題の停滞を危惧する声は強い。もはや重責は担えないのではないか。都議会は今週末の議会閉会後も総務委員会で追及の構えだ。有権者が納得できる説明がなければ、猪瀬氏は自ら身を処して辞職すべきだ。

昨年11月6日、都知事選立候補を決めた猪瀬氏は、徳田虎雄前徳洲会理事長に面会し、あいさつした。同20日、前理事長の次男の徳田毅衆院議員から直接5000万円を受け取った。この経緯をみれば、選挙のために資金提供を受けたと考えるのが普通だ。一方で、徳洲会グループは都から補助金を受けており、事業上のつながりも深い。

先月22日に授受の事実が明らかになり、猪瀬氏は釈明に追われた。26日に借用証を公表したが、名前と金額が書かれていただけで、当時作成されたものか疑問が相次ぎ、金の性格についての疑惑はふくらんだ。

その借用証は、5000万円返還後、仲介者の新右翼団体「一水会」の木村三浩代表から郵送されてきたと10日の審議で猪瀬氏は明らかにした。そもそも、なぜ長年の友人とはいえ木村代表が徳田一家との仲介に入ったのかほとんど説明がない。

10日の審議では、貸金庫は5000万円の授受前日に妻に借りるよう指示したとも説明した。従来は、授受当日、「大金を目の前に驚き、貸金庫にしまわねばと思った」と答えていた。説明を変えたのは、貸金庫の契約日を確認されれば言い逃れがきかないからだろう。銀行に記録の残らない現金での授受という方法を含め、5000万円は用意周到に受け取った疑念が一層つのる。

一方、徳洲会病院の事業については「知らない」を連発し、資産報告書への不記載は「頭が混乱していた。事務的なミスだった」と、逃げの答弁に終始した。これでは納得できないのは当然だ。都議会は、これ以上明快な説明がなければ、偽証の罰則がある百条委員会設置や不信任決議なども視野に置くべきだ。

産経新聞 2013年12月11日

猪瀬氏5000万円 自ら進退を決めるときだ

東京都の猪瀬直樹知事は、自らの進退を決断するときを迎えているのではないか。医療法人徳洲会グループ側から、猪瀬氏が受領した現金5千万円の問題で、都政は立ち往生している。

都議会総務委員会で行われた疑惑追及の質疑で公明党などは、辞職要求を突きつけた。この混乱は当分続くだろう。原因が猪瀬氏の不自然な現金受領と、曖昧な弁明にあることは明らかだ。

猪瀬氏は昨年11月、知事選出馬のあいさつのため徳洲会前理事長の徳田虎雄氏に会い、後日、息子の徳田毅衆院議員から議員会館で現金5千万円を受け取った。

選挙後の生活に不安があって借りたもので選挙資金ではないという。無利子無担保で、借用証には返済期日も押印も印紙もない。

そんな大金を渡してくれた毅議員については「親切な人だと思った」。返済が今年9月、東京地検特捜部が徳洲会を強制捜査した後になったのは「五輪招致などで忙しかったから」。これを信じろという方が難しく、すべて事実であるなら、社会常識を疑う。

都が徳洲会が運営する病院などに多額の補助金を支払い、開設許可を出していたことも、猪瀬氏は「知らなかった。僕にとっては驚きだった」という。知っていようがいまいが、都職員であれば、利害関係者からの借金は「都職員服務規程」違反に当たり、懲戒免職処分の可能性もあった。

猪瀬氏は昨年12月の都知事選で過去最多の約434万票を獲得して初当選した。ライバル都市との激しい競争を勝ち抜いた2020年夏季オリンピック・パラリンピック招致では、立候補都市の首長として、中心的役割を担った。

だが皮肉なことに、いまでは知事の存在自体が、五輪開催準備の足かせとなっている。

国際オリンピック委員会(IOC)からは大会組織委員会を来年2月までに設立するよう求められており、年内には組織委のトップ人事を決める予定だ。

猪瀬氏が弁明に窮している現状では組織委人事も含め、何ひとつ前に進まない。

このままでは来年度の予算編成もできない。1年分の給料返上で済む話ではない。

7年後の五輪本番に向けて東京は、国や海外に発信を続けなくてはならない。誰が今の知事の言葉に耳を傾けるだろう。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1636/