みんなの党分裂 「江田新党」は野党再編序章か

毎日新聞 2013年12月11日

みんなの党分裂 第三極勢力の自壊現象

野党、みんなの党が分裂した。衆参35議員のうち渡辺喜美代表の党運営に反発した江田憲司前幹事長ら14議員が離党届を提出、年内に新党を結成する運びだ。

特定秘密保護法の安易な修正合意に加担した同党の対応は官僚支配の打破を掲げてきた看板に大きな傷をつけた。一方で、江田氏らの行動が巨大与党への対立軸を示し、野党の本格再編につながるかも疑問符がつく。巨大与党を前にした第三極勢力の自壊と言えよう。

4年前、5議員で旗揚げしたのがはるか昔のようだ。江田氏が秘密保護法に修正合意した渡辺氏の対応を批判し「もはや党に将来はない」と決別を宣言すれば渡辺氏も「(江田氏は)1年生議員にマインドコントロールを行った」と応酬した。

結党以来あつれきが目立った両氏だが、野党のブロック連合を掲げる渡辺氏と、日本維新の会とも連携した野党再編を志向する江田氏との路線対立が最近は目立っていた。不自然な党内別居状態がやっと解消されたということかもしれない。

今回の混乱の主たる責任はやはり渡辺氏の独断専行的な党運営にある。渡辺氏は秘密保護法への協力は党公約の内容に沿った行動だと説明する。だが、官僚による情報独占が懸念される重要な課題なのに国会審議をよそに安倍晋三首相との会食の場で修正案を持ち出し、安易な修正合意の流れを決めてしまった党首の責任は大きい。

急速に与党に接近する姿に失望した支持者も少なくあるまい。そもそも持論の野党の政党ブロック構想自体、渡辺氏はもはや熱意を失っているのではないか。

一方で江田氏らが結成する新党にも展望が開けているわけではない。民主党の細野豪志前幹事長や日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長らとの勉強会を発足させたのは、規制改革や地域主権を旗印とした野党再編につなげたい狙いからだろう。

だが、新党が維新の会と将来の再編含みで連携を目指すのであれば、憲法観や歴史認識も含めた政党の根幹に関わる理念まで歩み寄ってしまうのかが厳しく問われよう。

秘密保護法をめぐっては第三極勢力の維新の会も修正になびいた。江田氏がいくら「巨大与党への対抗」をとなえても、結局は新たな与党の補完勢力になってしまうのではないか。政党交付金支給に間に合う年末の新党結成がまた繰り返される様子にそんな疑念をぬぐえない。

野党再編という青い鳥探しに国民の期待が単純に膨らむような状況ではあるまい。渡辺氏は暴走の非を認め、江田氏らは安倍政権にきちんと対峙(たいじ)する姿勢をまずは示すべきだ。

読売新聞 2013年12月10日

みんなの党分裂 「江田新党」は野党再編序章か

みんなの党が、結党4年4か月でとうとう分裂した。野党再編への序章となる可能性がある。

江田憲司前幹事長らが離党届を提出し、年内に新党を結成する方針を表明した。離党するのは14人の衆参両院議員で、党所属35人の4割に上る。新党には無所属の柿沢未途衆院議員も加わる。

分裂の主因は、路線を巡る渡辺代表と江田氏の確執である。

渡辺氏は、みんなの党を存続させたまま、他の野党と連携する「政党ブロック」の構想を主張する。野党再編のためなら、解党も辞さないとする江田氏の動きを「反党行為」と攻撃してきた。

8月には、江田氏を幹事長から外し、その後、江田氏の側近である柿沢氏を離党に追い込んだ。

特定秘密保護法を巡る対応が、分裂の直接の引き金となった。

江田氏は、渡辺氏が主導した自民、公明の与党との法案修正合意について、「自民党へのすり寄り」と厳しく批判している。

今後の焦点は、江田氏の動きが、民主党や日本維新の会を巻き込み、政党の枠を超えた連携や野党再編に発展するかどうかだ。

江田氏は離党届提出後の記者会見で、自民党に対抗する政治勢力を結集する必要性を指摘した。「江田新党」も将来の野党再編への布石とする考えなのだろう。

自民党が突出した「1強多弱」の状況の下、野党の結束が問われている。巨大与党に対抗し、発言力を高めるために、野党が勢力結集を目指すのは理解できる。

だが、政治理念、政策で一致できるのか。維新の会の松野頼久幹事長代行が、維新と「江田新党」による統一会派結成という緩やかな連携を呼び掛ける意向を示しているのは、現実的と言える。

昨年の衆院選前に結党した維新の会も、橋下共同代表ら大阪の勢力と東京の国会議員団との間で政策の違いが表面化しており、一枚岩ではない。

統一会派が実現すれば、衆院議席で民主党を上回り、自民党に続く勢力となる。野党第1会派として、国会での発言権は増そう。

一方で、みんなの党の渡辺氏は、安倍政権と政策面での協調姿勢を強めるのではないか。集団的自衛権の憲法解釈見直しについても近く安倍内閣に提言するという。

みんなの党の分裂劇を静観する構えの民主党の海江田代表も安閑とはしていられまい。党内にも野党再編を志向する議員は少なくない。今のままでは、執行部の求心力が一層弱まる可能性がある。

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