与野党の不毛な対立で政策論議が後景に追いやられた感がある。
臨時国会は、会期末の8日を前に事実上閉幕した。外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の設置法と、特定秘密保護法が成立し、国家戦略を立てる基盤が強化された。
また、産業競争力強化法、国家戦略特区法など安倍内閣の成長戦略の柱となる法制や、社会保障改革法、改正生活保護法といった重要法案も成立した。
短期間で一定の成果を上げたと言えるだろう。7月の参院選で衆参のねじれが解消したことが、その大きな要因である。
ただ、会期末の秘密保護法を巡る与野党の対立は、“泥仕合”の様相を呈した。来年の通常国会に向けて、与野党の関係修復も課題となるのではないか。
疑問なのは、最終局面で抵抗野党と化してしまったかのような民主党の態度である。
民主党は6日夜、秘密保護法の成立を急ぐ安倍内閣に対する不信任決議案を衆院に提出した。
これに対し、日本維新の会が「議事運営の問題で内閣に不信任を出すのはピントがずれている」として反対したのはうなずける。野党共闘の不調を印象づけた。
参院本会議での秘密保護法採決の際、民主党はいったん退席した。ところが、党内から異論が相次いだため会議場に戻り、反対票を投じるという迷走ぶりだった。
維新の会とみんなの党は、法案修正で与党との協調姿勢を示しながら、それぞれの党内で足並みが乱れ、採決時には与党の姿勢を理由に退席した。
維新、みんな両党は、いずれも以前から亀裂があったが、秘密保護法の賛否を巡って、それがさらに拡大したと言える。野党再編の動きにもつながるだろう。
与党の国会運営も、強硬かつ稚拙だった。参院特別委員会での秘密保護法採決に至るまで、委員長職権による審議日程設定や、質疑打ち切り、一方的な地方公聴会開催など、いたずらに野党の反発を招いたことは否定できない。
自民党の石破幹事長は秘密保護法に反対する国会周辺などでのデモを「テロ」にたとえ、その後撤回した。デモは拡声機を使用し、国会周辺静穏保持法にも抵触する可能性がある。しかし、結果的に野党の攻撃材料となった。
「1強多弱」の国会であるからこそ、自民党は今後、「数の力」におごらず、謙虚で丁寧な国会運営を心がける必要がある。
この記事へのコメントはありません。