政治の怠慢に重い警告が突きつけられた。
ことし7月の参院選での一票の格差をめぐる最初の高裁判決である。格差は「違憲」、選挙は「無効」と断じた。
法の下の平等という立憲民主主義の根幹が問われているというのに、選挙制度の改革に向けた国会の動きは極めて鈍い。
そのため判決は、次の3年後の参院選に向けた是正の可能性についても「はなはだ不透明」と、厳しい見方を示した。
もっともな判決である。国会は、来年の最高裁の判断を待つことなく、当然の責務である格差の是正に腰を上げねばならない。
この夏の参院選の一票の格差は、衆院よりも大きい最大4・77倍。2010年の時の5倍からほとんど改善していない。
最高裁は昨年、その10年時点の参院選について「違憲状態」とし、抜本改革を促した。だが国会は定数の「4増4減」の数合わせでやり過ごした。
焦点は、都道府県単位の選挙区だ。各都道府県に最低二つの偶数議席を割り当てる現行制度では、格差をただすハードルはかなり高い。
最高裁はすでに09年時点の判決で、安直な選挙区間の定数ふりかえではなく、抜本的な制度改革を促していた。
きのうの判決は、それから今夏まで3年9カ月たっても改正法案の提出さえできなかった現実を重くみて、違憲とした。
そもそも当の参院がつくった改革協議会の委員会も8年前、現行制度を続ける限り、格差を1対4以内に抑えるのは難しい旨を報告していた。
制度の変更には時間がかかるという言い訳は通じない。
国会議員の選挙制度は、衆参それぞれの役割や権限と合わせて議論すべき問題である。
都道府県ごとの選挙区と比例代表の組み合わせという、衆参とも似通った制度でいいのか。都道府県より大きなブロック制や、比例区だけではどうか。改革するには、参院の存在理由を定義し、それを踏まえた選挙方法を設計する必要がある。
衆院の格差については、最高裁が先週、違憲や無効の高裁判決よりも甘く、「違憲状態」とする判決を出した。
それで国会内には安堵(あんど)が広がり、緊張感がうすれている。違憲状態とされて危機意識をもてない国会に自らをただす能力はあるのだろうか。
参院の格差をめぐっては、今後さらに年内に13の高裁・支部で判決が続く。司法には厳格な姿勢を貫いてもらいたい。
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