日本の平和と安全を確保し、国益を守るため、政府の外交・安全保障政策の司令塔が誕生することを歓迎したい。
国家安全保障会議(日本版NSC)設置法が成立した。12月初めに日本版NSCが創設され、まず初の国家安保戦略と、新しい防衛大綱を策定する。年明けには、事務局の国家安全保障局が発足する見通しだ。
設置法には、自民、公明の与党のほか、民主、日本維新の会、みんなの党も賛成した。安保政策は超党派の合意を基に進めるのが望ましい。衆参両院議員の9割超が足並みをそろえた意味は重い。
NSCの中核は、首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」で、副総理も交えて、原則、2週間に1回開かれる。
中国・北朝鮮情勢や在日米軍再編、領土に関する問題などの重要案件について、首相と関係閣僚が定期的に議論し、共通認識を持つ体制を構築する意義は大きい。
多くの内政課題を抱えている時も、首相官邸が外交・安保案件に一定の時間と精力を充てる。自衛隊の制服組を含め、専門的知見を持つ事務局がこれを支える。外交・安保政策の優先度を高め、充実させることにつなげたい。
重要なのは、関係省庁の縦割り行政を排し、首相官邸が政策の方向性を主導することだ。
例えば、当面の課題である中国の防空識別圏や、米軍普天間飛行場の移設の問題などは、複数の省庁の連携が欠かせない。NSCの総合調整力が試される。
安全保障問題で的確な判断をするには、政府全体の情報収集・分析力の向上が前提となる。
設置法は、関係省庁のNSCへの情報提供義務を明記した。NSCは特定秘密も扱う。円滑な情報提供が実現するよう、関係閣僚は官僚に指示せねばならない。
関係国との情報交換を進めるため、情報漏洩を防ぐ特定秘密保護法案も成立させる必要がある。
今回は見送られた内閣情報調査室(内調)の改革も進めるべきだ。NSCと内調は、海外情勢や国際テロ情報の分析などの業務が重複する可能性がある。効果的な連携体制が求められる。
国会では、与野党協議の結果、NSCの議事録の作成を検討するとの付帯決議が採択された。
重要政策の決定過程の記録を残し、後世の検証を受ける仕組みは大切である。ただ、議事録や情報公開は、閣議や関係閣僚会議なども含めた政府の会議全体について総合的に検討するのが筋だ。
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