NSC法成立 真に機能する組織構築を

読売新聞 2013年11月28日

NSC法成立 意義深い与野党の幅広い合意

日本の平和と安全を確保し、国益を守るため、政府の外交・安全保障政策の司令塔が誕生することを歓迎したい。

国家安全保障会議(日本版NSC)設置法が成立した。12月初めに日本版NSCが創設され、まず初の国家安保戦略と、新しい防衛大綱を策定する。年明けには、事務局の国家安全保障局が発足する見通しだ。

設置法には、自民、公明の与党のほか、民主、日本維新の会、みんなの党も賛成した。安保政策は超党派の合意を基に進めるのが望ましい。衆参両院議員の9割超が足並みをそろえた意味は重い。

NSCの中核は、首相、官房長官、外相、防衛相による「4大臣会合」で、副総理も交えて、原則、2週間に1回開かれる。

中国・北朝鮮情勢や在日米軍再編、領土に関する問題などの重要案件について、首相と関係閣僚が定期的に議論し、共通認識を持つ体制を構築する意義は大きい。

多くの内政課題を抱えている時も、首相官邸が外交・安保案件に一定の時間と精力を充てる。自衛隊の制服組を含め、専門的知見を持つ事務局がこれを支える。外交・安保政策の優先度を高め、充実させることにつなげたい。

重要なのは、関係省庁の縦割り行政を排し、首相官邸が政策の方向性を主導することだ。

例えば、当面の課題である中国の防空識別圏や、米軍普天間飛行場の移設の問題などは、複数の省庁の連携が欠かせない。NSCの総合調整力が試される。

安全保障問題で的確な判断をするには、政府全体の情報収集・分析力の向上が前提となる。

設置法は、関係省庁のNSCへの情報提供義務を明記した。NSCは特定秘密も扱う。円滑な情報提供が実現するよう、関係閣僚は官僚に指示せねばならない。

関係国との情報交換を進めるため、情報漏洩(ろうえい)を防ぐ特定秘密保護法案も成立させる必要がある。

今回は見送られた内閣情報調査室(内調)の改革も進めるべきだ。NSCと内調は、海外情勢や国際テロ情報の分析などの業務が重複する可能性がある。効果的な連携体制が求められる。

国会では、与野党協議の結果、NSCの議事録の作成を検討するとの付帯決議が採択された。

重要政策の決定過程の記録を残し、後世の検証を受ける仕組みは大切である。ただ、議事録や情報公開は、閣議や関係閣僚会議なども含めた政府の会議全体について総合的に検討するのが筋だ。

産経新聞 2013年11月28日

NSC法成立 真に機能する組織構築を

「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設関連法が、参院で与野党の賛成多数により成立した。焦点は、この組織が真に機能するかどうかに移った。

NSCは12月4日に発足し、首相、外相、防衛相、官房長官からなる4者会合が始動する。事務局の国家安全保障局は来年1月中に発足する予定だ。

首相官邸に外交・安保の司令塔機能を担うNSCが置かれることで、国の危機に際して迅速に政府の総力を挙げて対応することが期待される。

NSCには、危機を想定した模擬演習(シミュレーション)を重ね、対応策を準備する役割がある。NSCが中国の防空識別圏設置のシナリオを検討していれば、今回のケースでも外務、国土交通両省が日本の航空会社に飛行計画書を中国に提出しないよう、いち早く指導できたかもしれない。

期待通りの機能を発揮するには解決すべき問題が幾つもある。

各省庁の縦割りの壁を打ち破ることが最大の課題だ。外務省、防衛省、警察庁など政府の各機関が省益を守ろうとするあまり、重要情報を迅速に提供しなければ、NSCによる的確な情勢分析はできない。外交・安全保障政策の基本方針の形成もおぼつかない。各省庁が一級の人材の供給を出し惜しみすれば、同様の結果を招く。

省益よりも国益を重視する意識を、政府全体に浸透させなければならない。

外国との連携も極めて重要だ。各国の利害が複雑に入り組むなかで安全保障を確保するには同盟国や友好国との協力が欠かせない。米国や英国、韓国などもNSCを設けている。日本の国家安全保障局長は情報交換を行う米国のスーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)ら各国のNSC責任者と緊密な関係を築かなくてはならない。

首相らの4者会合は12月に国家安全保障戦略を決定する。これを踏まえてNSCはまず、安全保障上、どのような欠陥が日本に存在するかの検証と解決策の提示を行うべきである。

NSCが、安全保障上の国益を常に追求する観点から政策を検討することで「教育効果」も期待できる。外交・安全保障への関心が比較的薄かった政治家の意識が改まれば、日本にとって、大きなプラスとなる。

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