中国防空識別権 容認できぬ一方的な現状変更

毎日新聞 2013年11月26日

中国防空識別圏 危険な挑発行動やめよ

中国国防省が東シナ海の大半に防空識別圏(ADIZ)を設定した。圏内を飛行する航空機が国防省の定める規則に従わないと戦闘機の緊急発進を行うという。

きわめて乱暴で危険だ。東シナ海上空は、これまで半世紀以上も日本、韓国、台湾の防空識別圏が存在し、それによって平和な秩序が保たれてきた。防空識別圏について国際法上の根拠はまだ確立していないとしても、長い実績がある。

それを中国が一方的に、武力によってこの空を排他的に占有すると宣言した。アジアの安全に挑戦する挑発的な行為といわざるをえない。

東シナ海は沖縄の在日米軍基地にも近い。北朝鮮のミサイル危機が起きると東シナ海上空を日米の戦闘機、警戒管制機が飛ぶ。中国はそのたびに戦闘機を緊急発進させて追い出すつもりか。米中の武力衝突がどれほど危険なことか、「富国強兵」の国策に浮かれる中国の指導部に頭を冷やしてもらいたい。

米国が懸念するのは当然だ。6月の米中首脳会談で、米中は「新型大国関係」を確認し、米国は太平洋で中国海軍が行動することを認めた。だが、西太平洋が中国の縄張りになったわけではない。国際ルールに不慣れで危険な独善的行動の目立つ中国軍が洗練された行動をとることが前提だろう。

中国艦隊が外洋で行動するには、その上空を管制機や護衛機、対潜哨戒機が飛ぶ必要がある。外国軍を中国大陸に接近させない「接近拒否戦略」だけではなく、外洋進出のためにも中国軍は東シナ海、南シナ海の制空権がほしいのだろう。中国軍は太平洋上で米中対決を望むようにみえる。このさい米国ははっきり警告のメッセージを出すべきだ。

日本政府は、中国政府に防空識別圏の撤回を求めた。防空識別圏自体は領土主権とは違うが、圏内に日本の領土である尖閣諸島が含まれている。島の上空で中国軍用機が行動することは明らかな主権侵害になる。島の領有権紛争を棚上げにするというこれまでの中国政府の主張に照らしても筋が通らない。

識別圏に領土問題がからむのは韓国も同様だ。中国は識別圏を白紙にし、そのうえで自国識別圏設定について先発各国に協議を求めるのが常識だ。日中には米中のような軍事対話がないことも危うい。日米、米韓は同盟関係にあり、中国との軍事摩擦が米国を巻き込む可能性は大いにある。

習近平政権は中国が米国をしのぐという「中国の夢」に酔っている。だが、中国自身の高度成長を可能にしたのはアジアの平和秩序があったればこそだ。それを破壊するとは、暴力的な文革の夢を見ているのか。

読売新聞 2013年11月30日

防空識別圏 中国は孤立を深めるだけだ

沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に、防空識別圏を一方的に設定した中国に、世界各国から非難が集中している。

中国の国際ルールを無視した振る舞いに、とりわけ反発したのは米国である。中国にとっては誤算だったのではないか。

米国は26日、日本の防空識別圏と重なる中国識別圏内で、事前通報なしに核兵器も搭載可能なB52戦略爆撃機2機を飛行させた。

日本の防空識別圏は、第2次大戦後に米軍が設定したものを、1969年に継承した。米国は、中国がアジアの戦後秩序に挑戦していると見て、現状変更を許さないという決意を示したのだろう。

これに対し、中国は緊急発進(スクランブル)は行わず、「監視していた」と後で発表した。

日本、韓国、台湾の識別圏は重複しないよう、境界を接して定められているが、中国は、事前協議なしに、日韓台の識別圏に重なる形で設定した。どの国も、中国の識別圏を認めないのは当然だ。

その後、自衛隊機や韓国軍機も識別圏の重なる空域で飛行した。日本の航空各社は、国交省からの要請を受け、中国に飛行計画を提出せずに、運航を続けている。

中国の外交的孤立は、今や決定的になりつつある。日米韓以外の、フィリピンやオーストラリア、欧州連合(EU)も「不安定化を招く」などと中国を批判した。

中国空軍は、識別圏内で戦闘機などによるパトロールを「常態化」させたとしている。だが、本土から遠く離れた識別圏で、全ての航空機の動静を把握する能力を中国が有しているのか疑問だ。

偶発的な軍事衝突が起きかねず、危険な状態といえる。日米は連携して、周辺空域での警戒監視活動を強化する必要がある。

一方で、中国は、識別圏が重なった空域について「共同で飛行の安全を維持すべきだ」と述べ、日本などに協議を提案した。

協議を通じて、尖閣諸島の領有権問題の存在を日本に認めさせようとの意図があるのだろう。日本政府が、「中国の識別圏を前提とした協議は受け入れられない」と一蹴したのは妥当だ。

日本は、米国などと、中国に識別圏の撤回を粘り強く働きかけていくことが求められよう。

バイデン米副大統領は2日から日中韓3か国を訪問する。日本政府と調整の上、中国指導部に対して、識別圏に関する懸念を直接伝えるとみられる。

中国の国際常識を逸脱した行動をこれ以上認めてはならない。

産経新聞 2013年11月27日

防空識別圏 国際連携で中国に対抗を

中国が、尖閣諸島の上空を含む東シナ海に、防空識別圏を一方的に設定したことに対して各国が批判を強めている。

しかし、中国は、日本や米国の抗議にも「道理がない」と強硬姿勢を貫く構えだ。南沙諸島の領有権問題が存在する南シナ海など他の地域にも、中国は「適切な時期に設定する」と、防空識別圏の拡大を公言している。

中国が、真に「平和的台頭」を標榜(ひょうぼう)すると言うなら、このような暴挙は直ちにやめるべきだ。

安倍晋三首相は25日、参院で「領海、領空を断固守り抜く」と言明し、中国に「一切の措置の撤回」を要求した。小野寺五典防衛相は「厳正な対領空侵犯措置をとりたい」と述べた。航空自衛隊は退くことなく、引き続き緊急発進(スクランブル)などの任務を粛々と遂行してほしい。

中国は、民間航空会社が防空識別圏内の飛行計画の提出を拒めば緊急措置を取るとしている。国際法に基づく公海上空の飛行の自由への侵害で、受け入れがたい。

飛行計画の提出は、中国の防空識別圏設定を容認することになる。政府が日本航空と全日本空輸に対し、提出中止を求めたのは当然である。航空会社との連絡を密にし、政府は飛行の安全確保に万全を期してほしい。

中国の一方的な設定については、米国や韓国なども懸念を強めている。米政府は、中国の防空識別圏の発表後、直ちに非難する声明を出した。ヘーゲル米国防長官は、尖閣を日米安保条約第5条(対日防衛義務)の適用対象だと再確認した。アーネスト米大統領副報道官も25日、「不必要に挑発的だ」と中国を批判した。

同じく中国と防空識別圏が重なることになった韓国も24日、中国の識別圏内の韓国機飛行は通報しない方針を明らかにしている。

中国による防空識別圏の設定は、尖閣問題で対日圧力を強めるとともに、東シナ海における米軍や自衛隊の行動を牽制(けんせい)し、制海権、制空権を握るねらいがある。東アジアの国際秩序への挑戦であり、断じて許されない。

力ずくで現状変更を図ろうとする中国の動きに、岸田文雄外相は26日、米国、韓国などと連携して行動する考えを示した。南シナ海でも防空識別圏を拡大するなら緊張はさらに高まる。東南アジアの関係国との協調も重要だ。

読売新聞 2013年11月26日

中国防空識別権 容認できぬ一方的な現状変更

中国が、沖縄県の尖閣諸島上空を含む空域に防空識別圏を設定した。

東シナ海の現状を一方的に変更する措置であり到底容認できない。

防空識別圏は、領空侵犯を防ぐため、日本など各国が独自に定めている。領空の外側に設定され、不明機に緊急発進(スクランブル)を行うこともある。

問題なのは、中国の設定した空域が、尖閣諸島周辺の日本の領空を含み、日本の防空識別圏と重なっていることだ。

日本政府が、中国大使を呼んで、厳重に抗議し、設定の撤回を求めたのは当然である。安倍首相は、中国の発表した防空識別圏を認めないとの考えを表明した。

中国は、防空識別圏内で指示に従わない航空機には武力による緊急措置を取ると威嚇している。

互いに緊急発進した自衛隊機と中国軍機が接近した場合、偶発的な軍事衝突が発生する恐れすらあり、危険きわまりない。

中国は、防空識別圏の設定を「国家主権と領土・領空の安全を守る」ためと述べ、日本の抗議をはねつけている。尖閣諸島を巡り新たな既成事実を作り、対日圧力を増す狙いがあるとみられる。

習近平政権は内政面で、経済格差などへの国民の反発に直面し、苦境に立たされている。威圧外交により、国民のナショナリズムを刺激して、政権の求心力を高めようとしているのではないか。

中国の今回の行動は、東シナ海などを勢力圏として囲いこみ、米軍の接近を拒否する軍事戦略を具現化したものとも言える。日米同盟に対する重大な挑戦である。

ヘーゲル米国防長官は「地域の現状を変えて不安定化させる企てだ」と批判する声明を出し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて強調した。

米国が、中国に対して、同盟国である日本の領土を守る強い意思を示したと言える。

尖閣諸島周辺の空域では、中国機が昨年12月、初めて日本領空を侵犯した。中国機に対する航空自衛隊機の緊急発進の回数も大幅に増えている。今年9月には、中国の無人機が確認された。

日本は、米国と連携し、尖閣諸島周辺の空域で警戒を強化する必要がある。那覇基地のF15戦闘機飛行隊も増強すべきだろう。

尖閣沖では、中国公船の乗組員が今月、中国漁船に乗り込み、自国の排他的経済水域内であるかのようなアピールをした。海上の監視態勢も緩めてはなるまい。

産経新聞 2013年11月24日

防空識別圏 中国は挑発の責任負うか

日本の領土である尖閣諸島の上空を含む東シナ海に、中国が防空識別圏を設定した。もとより、尖閣上空は日本の領空である。そこに中国が識別圏を設定する権利はいささかもない。

中国の行為は、軍事力によって現状変更を図ろうとするもので、決して容認できない。強く撤回を求めたい。日本政府が抗議したのは当然である。

防空識別圏は領空侵犯を阻止するため、戦闘機が緊急発進(スクランブル)を行う際の基準となる。日本はすでに、尖閣上空を含めて防空識別圏を設定し、中国機の侵入に対して航空自衛隊がスクランブルを重ねてきた。

中国国防省が出した公告は、識別圏内を飛ぶ各国の航空機に、国防省の指令に従うことや飛行計画の提出を求めている。従わない航空機には「防御的緊急措置を講じる」として、スクランブルを行う方針も示した。

中国は、空の守りを固めてきた日本の実効支配を突き崩したいのだろう。識別圏が重なることで、両国のスクランブル機が接近しかねない。不測の事態が起きた場合の責任は、すべて中国が負わなければならない。

中国は昨年12月、国家海洋局所属の航空機が尖閣近辺の領空を侵犯した。今年9月には尖閣付近に無人機を飛来させた。空自機が中国機にスクランブルした回数は、今年7~9月の3カ月だけでも80回にのぼる。日本はスクランブルの態勢を一層、堅持しなければならない。

海でも中国は挑発を強める。尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)では21日、中国海警局の船の乗組員が中国漁船に乗り移って立ち入り検査を行った。

EEZは領海とは異なるが、国連海洋法条約によって、沿岸国(この場合は日本)だけに天然資源の探査、開発の権利や、海洋環境の保全のため管轄権を行使することが認められている。

海警などの中国公船は、これまでも尖閣周辺のEEZで中国漁船への立ち入り検査を行ってきた。「法執行」の事例を重ねる巧妙な手口だが、日本が管轄権を持つ海域での法執行は国際法違反だ。

尖閣奪取を図ろうとする中国の意図は露骨だ。自衛隊や海上保安庁をはじめ政府一体で、領土や領海、領空を守り抜く態勢の整備と覚悟が求められている。

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