普天間協議開始 移設の原点を踏まえて

朝日新聞 2009年12月29日

普天間移設 本気で「県外」探ってみよ

米海兵隊・普天間飛行場の新たな移設先を探る政府与党の作業チームが発足した。

新政権発足後100日以上、迷走を重ねたうえの再出発だ。3年前に日米両政府が合意した名護市辺野古への移設も選択肢として否定はされていないが、まずは沖縄県外に移す可能性をとことん追求すべきである。

代替案探しは容易ではない。騒音や米兵による事件、事故の危険を考えれば、積極的に米軍基地を受け入れようという自治体を簡単に見いだすことができるはずもない。

たとえ鳩山政権が新しい移設候補地を決めても、辺野古への移設こそが唯一実現可能な案との立場を崩していない米国側が、それを受け入れる保証はない。多難な交渉になる。

そうした困難は承知の上で、また日米政府間合意を見直すという賭けをしてでも、在日米軍基地の75%が沖縄に集中する異常さを何とか是正したいということだろう。歴史的な政権交代を機に、鳩山政権がこの難題に挑戦するのは意味のあることだ。

ただ、大事なことがある。日本防衛や地域の安定のため、沖縄の海兵隊が担ってきた抑止力は何らかの形で補う必要がある。その認識がこれからの検討の基本的な土俵ではないか。

その点で、鳩山由紀夫首相が先週末、普天間の海兵隊すべてをグアムに移すのは難しいと語ったのは、意味のある論点整理だった。作業チームのとりまとめ役である平野博文官房長官も、そうした論点を重視する考えを示している。

沖縄の基地負担を本土がどう分かち合うかは、自民党政権時代からの重い課題であり続けてきた。最近、大阪府の橋下徹知事は、沖縄が太平洋戦争で本土防衛の盾となり、激しい地上戦の舞台になった歴史に触れ、関西空港への移設について議論は拒まない考えを示した。

過去にも、沖縄で行われていた米軍の実弾演習が、北海道や宮城県など本土の5カ所に分散移転されてきた。神奈川県や山口県、青森県なども米軍施設を受け入れている。

普天間問題にとどまらず、県外移設という目標の持つ、日本全体にとっての重い意味合いを忘れてはならない。

首相は、5月までに移設先を決めると明言した。夏には参院選を控え、本当に結論を出せるのか懐疑論もある。

この問題をめぐっては、首相の発言がぶれたり、閣僚の意見が食い違ったりして、外交政策における政権の意思がはっきりしないという困惑を米政府に与えてきた。

またも迷走するとなると、政権への信頼を失って県外移設の国内調整もおぼつかない。さらなる先送りはとうてい許されまい。政権の信任がかかる。

毎日新聞 2009年12月29日

普天間協議開始 移設の原点を踏まえて

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を検討する政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」(委員長・平野博文官房長官)が発足した。鳩山由紀夫首相は来年5月までに移設先を決める考えを明らかにしている。「普天間」移設の出発点である周辺住民の危険の解消・沖縄県民の負担軽減と、在日米軍による抑止力の維持という二つの原点を踏まえた精力的な協議を望む。

今月中旬、与党3党が決着先送りを決めた時には、移設先決定の期限さえ合意できなかった。期限を設けない協議は、際限のない先延ばしとなり、危険性の温存につながる。検討委の初会合では、来年5月までに結論を得るよう「最大限努力する」ことを確認した。普天間の固定化は何としても避けなければならない。「5月まで」は努力目標でなく、最終期限として取り組むべきである。

平野官房長官は日米合意の「沖縄県名護市辺野古」以外の移設先を探す考えを表明したが、移設先の検討にあたって避けて通ることができないのが、抑止力に関する議論である。鳩山首相や閣僚もようやくこの点について言及し始めた。

首相は、抑止力の観点から普天間の基地機能をグアムに全面移設するのは困難との考えを表明した。岡田克也外相も同様の見解を明らかにしている。事実上、国内移設が軸になるとの見通しを示したものだ。外相はさらに、戦略上、本州より沖縄の方が有効だとも発言している。

一方、「沖縄県外・国外」を主張する社民党は、グアムへの全面移設を念頭に置いている。こうした首相らと社民党の落差を埋めるには、在日米軍、在沖米軍の抑止力に関する認識を一致させることが不可欠だ。

日米安全保障条約によって日本が米軍への基地提供義務を負い、北朝鮮の脅威や、中国の台頭などがもたらす東アジアの安全保障環境の変化に対して、米軍のプレゼンスが抑止力として有効に機能しているとの認識は、少なくとも首相や民主党の閣僚は共有しているようだ。在日米軍基地の存在による抑止力の中身や、在沖米軍の戦略上の意味、その主力である海兵隊の存在意義などについて、十分な議論を尽くしてもらいたい。

この議論を抜きに、県内の他の基地との統合や、県外、国外といった移設先の候補地を並べてみたところで、妙案が生まれるわけがない。日米合意の履行を求める立場を変えていない米国と、意味ある協議に入れるとも思えない。

政権100日の中で垣間見えた、鳩山首相の「その場逃れ」の対応では、5月までの政府方針決定に不安がある。首相自身が協議の進展に全面的に責任を負うべきだ。

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