日欧EPA交渉 TPPと併せた戦略が必要だ

朝日新聞 2013年11月25日

日欧経済連携 TPPと両にらみで

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)について、双方の首脳が協議を加速させることで合意した。

今春に交渉を始めて以来、すでに会合を3回開いたが、はかばかしくないようだ。EUは来春時点で日本の姿勢を判断し、非関税障壁の撤廃への取り組みが不十分な場合は、交渉を中止するという。

経済連携では、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に関心が集まるが、5億人の市場と日本の3倍の域内総生産(GDP)を持つEUとの関係強化も欠かせない。

米国とEUは環大西洋貿易投資協定(TTIP)の交渉を進めている。両者だけで事実上の世界ルールが決まる事態を避けるためにも、米欧の双方としっかり向き合う必要がある。

EUが照準を定める非関税障壁の見直しでは、自動車の安全・環境基準、食品添加物や酒類の販売免許のあり方、医療機器・医薬品分野での基準や規制緩和が議題になっている。

TPPや、TPPと並行した日米協議とも重なるテーマが少なくない。欧州は米国と比べて「安全・安心」への意識が高いとされる。EUとのルールづくりは、TPPにも好ましい影響を期待できるのではないか。

一方、日本側が求めるのは、EUが工業製品などに課している関税の撤廃だ。10%の乗用車をはじめ、トラックやテレビなど、税率がなお2けたの品目が目につく。

EUは2年前に韓国との間で自由貿易協定(FTA)を発効させ、自動車などの関税をおおむね2016年までに撤廃する。韓国と比べて日本のメーカーが不利になる状況を放置してはいられない。

先進国から新興国までを含むTPPでは、テーマごとに利害が複雑にからみあう。それを生かし、さまざまに合従連衡することで、米国にも妥協を迫る道が開ける。

これに対し、EUとの交渉は一対一だ。厳しい判断を迫られる場面が増えよう。

EUが最近合意したカナダとのFTAでは、関税をゼロとする割合(自由化率)が全品目では100%近く、農産品に限っても90%を優に超えた。日本がこれまで結んできた協定では、農産品を中心に多くの例外品目を設けており、全品目での自由化率は90%に及ばない。

EUも、TPPに劣らない「高い水準」の自由化をめざす姿勢が鮮明だ。政府はTPPとの両にらみで、粘り強く交渉してほしい。

読売新聞 2013年11月22日

日欧EPA交渉 TPPと併せた戦略が必要だ

米国、豪州などとの環太平洋経済連携協定(TPP)交渉と並行し、欧州連合(EU)との経済連携交渉の妥結も急がねばならない。

日本には複数の自由貿易圏作りに取り組み、成長に弾みを付ける戦略が求められよう。

安倍首相はファンロンパイ欧州理事会常任議長(EU大統領)と会談し、共同声明を発表した。

4月にスタートした日本とEUの経済連携協定(EPA)交渉を「可能な限り早期に締結させる」と強調したのがポイントだ。

韓国とEUは2011年7月に自由貿易協定(FTA)を発効済みで、日本は大きく出遅れていた。日本のTPP交渉参加を契機に、EUの姿勢が軟化し、交渉開始にこぎつけた経緯がある。

しかし、これまで3回行われたEUとの交渉は難航している。両首脳が交渉加速で一致したのは危機感の表れだろう。アジアの巨大な自由貿易圏から取り残されることにEUの警戒感も強い。

焦点は、日本から輸出する自動車にEUが10%、テレビに14%かけている関税の撤廃問題だ。

EU向けに輸出する韓国製品の関税は、FTAで段階的に引き下げられて16年に撤廃される。不利な競争を強いられる日本が、対等な条件を求めるのは当然だ。

EUはこれに抵抗し、逆に日本にワイン、チーズなどの関税引き下げのほか、鉄道車両など公共交通分野の市場開放といった非関税障壁の見直しを要求している。

交渉開始から1年後に日本の改善姿勢が不十分と判断した場合、EUは交渉を打ち切る方針を示していることも問題と言える。

TPP交渉は年内妥結に向け、大詰めを迎えている。日本はTPP進展に焦るEUを揺さぶって、理不尽な要求の是正を求め、早期に妥協点を探る必要がある。

一方、今回の日EU首脳会談では、安全保障分野や地球規模の課題も論議になった。

尖閣諸島をめぐる日中対立を踏まえ、共同声明が「東アジア海域を含む緊張状態への懸念」を共有するとし、「法の支配」の原則に基づく解決を求めるべきだとの見解を明記した点は評価できる。

サイバーテロ防止と宇宙の平和利用に関する協議開始で合意したのも前進である。EUは国際規範作りを主導する狙いのようだ。

こうした地球規模の課題を巡って、協力の幅を広げることが重要だ。信頼関係の一層の強化が、EPA交渉を打開するムードを醸成する効果に期待したい。

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