毎日新聞 2013年11月17日
ケネディ新大使 日本とアジアの力に
米国のキャロライン・ケネディ駐日大使(55)が着任した。ケネディ氏は、弁護士出身で政治や外交の実務経験はないが、ジョン・F・ケネディ元大統領の長女として、抜群の知名度と発信力を誇る。米国初の女性駐日大使でもある。こうした強みをいかし、日本国内を飛び回り、日米関係の強化とアジア太平洋地域の安定に力を尽くしてほしい。
中国の軍備拡張と海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中対立など東アジアが不安定化する中、日米関係はかじ取りが難しい時代を迎えている。
オバマ政権は、外交・安全保障の重点をアジア・太平洋地域に移すリバランス(再均衡)政策を打ち出した。だが、米政府の財政赤字は深刻化し、中国の台頭もあって米国の力は相対的に低下している。
その分、米国は日本に役割拡大を期待する。安倍政権は集団的自衛権の行使容認などで応えようとしているが、中国、韓国とのさらなる関係悪化を招くやり方には、米国内にも慎重な見方がある。従軍慰安婦や靖国神社の参拝問題をめぐる安倍政権の歴史認識にも警戒感が残る。
また沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題は解決のめどが立たず、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉も大詰めを迎えている。ケネディ氏の役割は大きい。
課題は外交・安全保障や経済にとどまらない。前任大使のルース氏は、日米の若い世代の交流が細っていることに強い危機感を示していた。
日本から米国への留学生は、最新で年約1万9600人で、ピークだった1997~98年度の約4万7000人の4割にとどまる。国別では中国、インド、韓国が上位3位で、日本は7位だ。米国から日本への留学生は約5300人に過ぎない。
ケネディ氏は作家、教育者としても知られる。日米の教育、文化の交流強化にも力を発揮するよう望む。
日本国民向けのビデオメッセージで、ケネディ氏は20歳で叔父のエドワード・ケネディ上院議員と広島を訪れたことに触れ、「より平和な世界を実現したいと願うようになった」と語った。ルース氏に続いて大使として広島と長崎を訪れるだろう。オバマ大統領の被爆地訪問の実現につながることを期待する。福島など東日本大震災の被災地や、沖縄にも足を運ぶよう求めたい。
父のケネディ元大統領が暗殺されてから、今月22日でちょうど50年になる。このタイミングで新大使が着任したのも何かの縁だろう。アジアについて理解を深め、大使としてはもちろん、数年後に大使を退いた後も、日米の絆と地域の安定を支える力となってほしい。
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産経新聞 2013年11月19日
ケネディ米大使 同盟強化へ明確な発信を
米国のキャロライン・ケネディ新駐日大使が来日した。故ジョン・F・ケネディ元大統領の長女としての抜群の知名度を生かし、日米関係の発展に尽くしてほしい。
22日は、ケネディ元大統領暗殺から50年にあたる。節目の年の着任となるケネディ氏は来日後、「日本と米国は自由、民主主義、法の支配という価値観を共有している」と語った。
軍事的に台頭する中国や核開発を進める北朝鮮など、わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。共通の価値観を背景とする一層の同盟強化に、新大使が寄与することを期待する。
ケネディ氏にはまず、日本の安全保障に関する米国の立場を明確に世界に発信してもらいたい。
人事承認に関する米上院公聴会でケネディ氏は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、「日本の施政下にあり、(米国による日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言した。同様の発言を日本で繰り返せば、力ずくで尖閣奪取を試みようとする中国に対する強いメッセージとなる。
米国内では慰安婦問題や靖国神社参拝などをめぐり、日本の「右傾化」を指摘するメディアも少なくない。「日本」がきちんと伝わっていないからではないか。
ケネディ氏には、日本の実情や立場を米国民や海外に正確に伝える役割も望みたい。
例えば慰安婦問題がある。韓国系米国人らが米国内に慰安婦像や記念碑を造るなど、反日キャンペーンを繰り広げているが、慰安婦の強制連行を認めた河野談話がずさんな「調査」に基づいて発表されたことは、元慰安婦らの聞き取り資料で明らかだ。
ケネディ氏の知名度は歴代駐日大使の中でも随一だ。外交手腕は未知数だが、大きな発信力に期待は大きい。米大使が日本についての正しい認識を内外に発信することは、日中、日韓関係にも好影響を与えることになるだろう。
日本の民主党政権時代にぎくしゃくした日米関係は現在も必ずしも最良の状態とはいえない。オバマ大統領はアジア・太平洋重視を打ち出しているが、財政問題に追われて内向き志向ともされる。
それだけに、ケネディ氏にかかる責務と期待は大きい。この地域における米国の存在感を、正しく大いに発揮してもらいたい。
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