安倍首相が東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化に力を入れている。
軍事、経済の両面で台頭する中国を牽制し、地域の安定を図る上で戦略的重要性を持つと評価できる。
首相がカンボジアとラオスを訪問した。就任から1年足らずでASEAN加盟の10か国すべてを回り終えたことになる。
首相は今回の訪問で、日本の外交方針について「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場で貢献していく」と説明した。
カンボジアとラオスの首脳は、平和国家・日本の戦後の歩みを評価し、首相を支持した。安保対話の促進でも合意しており、相互理解を深めていく意義は大きい。
国連平和維持活動(PKO)に参加するカンボジアの要員育成に日本が協力することも決まった。カンボジアでのPKOに日本は初めて自衛隊を派遣した。自衛隊の道路整備技術などを伝えることは安保協力の深化につながろう。
一連の会談では、中国とフィリピン、ベトナムなどとの領有権争いが続く南シナ海情勢についても協議した。ASEANと中国が交渉中の「行動規範」を早期に策定する必要性で一致した。
法的拘束力を持つ行動規範は、国際ルールによって、中国の力による進出を抑え込む狙いがある。日米は規範策定を支持するが、中国は消極的だ。親中的なカンボジアやラオスなどを懐柔し、ASEAN内の分断も図っている。
カンボジアとラオスが行動規範に前向きな姿勢を示したことで、日本政府はASEANの結束に好影響を及ぼすと期待している。
尖閣諸島を巡る中国の示威行動に直面する日本にとっても、この問題は他人事ではない。
経済発展著しい東南アジアの活力を取り込むことは、安倍政権の成長戦略に欠かせない。首相がラオスでの記者会見で「ASEANの成長なくして、日本の成長もない」と語ったのはもっともだ。
保健や医療分野の協力では、日本式医療の導入に向けた覚書を締結した。日本の医薬品や医療機器の輸出増も期待できる。
ASEANの市場統合に日本が果たす役割は大きい。日本企業が投資しやすい環境作りへ、政府間協議を加速させるべきだ。
日本とASEANの関係は深い。今年は、友好協力40周年の節目に当たる。12月中旬には、東京に各国の首脳を迎えて特別首脳会議を開く。協力をさらに強固にする機会としたい。
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