今後、30~40年間にわたって続く廃炉作業の入り口に、ようやく立ったということだろう。
東京電力福島第一原子力発電所の4号機で、核燃料の取り出しが始まった。政府、東電が策定した廃炉工程表の新たな段階である。
未知の領域が多く、強い放射線の中での困難な作業が続く。東電は安全確保を最優先に、緊張感を持って取り組まねばならない。
4号機は事故当時、定期検査中だった。核燃料は建屋内のプールに未使用の核燃料とともに保管されていたため、1~3号機のような炉心溶融は起きなかった。
だが、隣の3号機から排気系統を伝って流れ込んだとみられる水素が爆発し、建屋が壊れた。
プール内に残った使用済み核燃料は1331体、未使用燃料は202体に上る。東電は来年末までに、それらをすべて取り出す。
4号機には補強工事を施したとはいえ、損傷が大きい建屋に核燃料を置いておけば、放射能漏れのリスクを伴う。燃料取り出しは廃炉に向けた不可欠な作業だ。核燃料を1体ずつつり上げて輸送容器に入れ、共用プールに移す。
取り出し作業で細心の注意が求められるのは、4号機のプール内に残るがれきだ。核燃料をつり上げる際に接触するなどして、傷つけないようにする必要がある。
原子力規制委員会は特別体制で作業を監督する。スケジュールに無理はないか。トラブルの種が見過ごされていないか。しっかりとチェックすることが大切だ。
1~3号機については損傷部が特定されておらず、溶けた燃料の状況も分からない。損傷部から漏れる汚染水は増え続けている。
4号機の核燃料取り出し作業で得られるノウハウを、1~3号機での溶融した燃料などの取り出しにも役立ててもらいたい。
炉内の状況把握に役立つ高度なロボットや、損傷部分の補修技術の開発も進めねばならない。
大きな課題は、廃炉作業を担う要員の持続的な確保である。
全面マスクと防護服を着けて進める作業は過酷だ。2000~3000人が必要とされる要員の手配は、現在でも容易でない。
廃炉工程が進めば、放射線の被曝量がさらに増え、現場への立ち入りを制限せざるを得ないベテラン技術者も出るだろう。
廃炉・汚染水対策には2兆円以上が必要とされる。政府が前面に出て技術開発や要員確保、資金支援に取り組み、長丁場の廃炉作業を確実に進めることが肝要だ。
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