核燃料取り出し 作業の安全に万全期せ

朝日新聞 2013年11月19日

核燃料の搬出 区切りにはほど遠い

福島第一原発の4号機で、核燃料の取り出しが始まった。危険性を下げるうえで重要な措置である。

ただ、作業には1年以上かかる。福島第一全体の状況が飛躍的に改善するわけでもない。原子炉本体が破損した1~3号機に地下水が流入し、放射能汚染水となっている状況は何も変わっていない。

電力業界や政府は、局所的な前進をことさらに強調して、国民をごまかしてはならない。常に全体状況を誇張なしに伝えていくべきである。

大震災当時、4号機は定期検査のため停止中で、1~3号機のような炉心溶融は起きなかった。だが、3号機から漏れたとみられる水素が爆発し、建屋は大きく壊れた。

4号機の建屋上部にある燃料プールには1533体もの燃料集合体が入っている。1~3号機の炉内にあった燃料集合体の合計1496体よりも多い。

燃料集合体は、核燃料が自然に熱を出すので冷やし続けなければならない。燃料プールの水が抜けると、燃料集合体は過熱し火災を起こす恐れがある。万一、こうした事態になるとプルトニウムを含む大量の放射性物質が大気中にまき散らされ、手がつけられなくなる。

余震が続き、不安定な4号機からの燃料取り出しは急務だった。だが、搬出装置やクレーンなどを一から造らねばならず、事故発生から2年8カ月たってようやく実現にこぎつけた。

今後は燃料集合体22体が入る輸送容器をプールに沈め、燃料を1体ずつ慎重に入れていく。容器は100メートル離れた共用プールにピストン輸送し、来年中に移送を終える計画だ。

作業自体、「潜在的には非常に大きなリスクを持っている。汚染水以上に心配なところがある」(田中俊一・原子力規制委員長)とされる。被曝(ひばく)リスクも高く、熟練作業員を確保するために、線量・労務管理がいっそう重要になる。

スケジュール優先ではなく、安全第一で進めるべきだ。

1~3号機は燃料プールにある燃料取り出しさえ、開始時期が見極められずにいる。炉心で溶けてしまった燃料の取り出しには、技術開発も必要だ。

さまざまな作業が複雑に入り組む福島第一原発で、気の抜けない作業がまた一つ始まったというのが実態である。

燃料も共用プールに移せば終わりではない。最終的には水抜けの心配がない乾式保管容器へ移し替えるなど、より安全な道を考えるべきだろう。

毎日新聞 2013年11月19日

核燃料取り出し 作業の安全に万全期せ

東京電力は、福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールにある核燃料(燃料集合体)の取り出し作業を始めた。2011年末から始まった廃炉作業は第2期に入った。完了まで30~40年かかるとされる廃炉の行方を占う試金石となる。核燃料は大量の放射性物質を含み、取り出しにはリスクを伴う。東電はスケジュールありきに陥らず、安全第一で作業を進めなければならない。原子力規制委員会も適切に作業を監視し、トラブル防止に努めてほしい。

4号機のプールには福島第1原発の全号機の中で最も多い1533体(使用済み1331体、未使用202体)の核燃料がある。東日本大震災時は定期検査中で原子炉に核燃料はなかったが、3号機から流入した水素が爆発し、原子炉建屋が大破した。建屋は事故後補強されたが、建屋上部にあるプールの強度は今も不安視されている。核燃料をより安全な場所に、早く移す必要がある。

取り出し作業では、クレーンを手動操作して核燃料を輸送容器に入れた後、プールからつり上げ、約100メートル離れた保管用プールへ運ぶ。

通常時はコンピューター制御でクレーンを操作するが、事故の影響で今回は手動で操作する。終了まで1年かかる。現場は放射線量が高い。熟練作業員の確保と被ばく管理が課題となる。プールには事故で多数のがれきが落下した。傷ついた核燃料を取り出す過程で傷が開き、放射能が漏れ出てくる恐れもある。

東電は地震の発生や輸送容器の落下などを想定した対策を立てているが、対策は万全だと過信せず、作業に臨まなければならない。

福島第1原発の廃炉工程は全体が3期に分かれており、4号機の核燃料取り出しで第2期に入った。4号機の後は1~3号機の核燃料プールからの燃料取り出し、溶融燃料の取り出しと進む。だが、1~3号機の建屋は4号機より放射線量が高く、プールからの燃料取り出し方法すら固まっていない。当面は4号機の経験を蓄積していくしかない。

福島第1原発では、汚染水対策も並行して進める必要がある。人為ミスの続発などを受け、東電は緊急安全対策をまとめた。要員増に加え、作業員の士気を維持するために8階建ての大型休憩所を建設し、3000食が供給可能な給食センターを設置するという。しかし、これらの施設の完成は来年度以降で、士気を維持する即効薬にはならない。

規制委は対策を評価し、柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査に入ることを決めたが、最優先すべきは福島第1原発の方だ。福島で問題が生じた場合は審査を中断し、東電をその対策に専念させるべきである。

読売新聞 2013年11月20日

核燃料取り出し 政府が前面に出て廃炉目指せ

今後、30~40年間にわたって続く廃炉作業の入り口に、ようやく立ったということだろう。

東京電力福島第一原子力発電所の4号機で、核燃料の取り出しが始まった。政府、東電が策定した廃炉工程表の新たな段階である。

未知の領域が多く、強い放射線の中での困難な作業が続く。東電は安全確保を最優先に、緊張感を持って取り組まねばならない。

4号機は事故当時、定期検査中だった。核燃料は建屋内のプールに未使用の核燃料とともに保管されていたため、1~3号機のような炉心溶融は起きなかった。

だが、隣の3号機から排気系統を伝って流れ込んだとみられる水素が爆発し、建屋が壊れた。

プール内に残った使用済み核燃料は1331体、未使用燃料は202体に上る。東電は来年末までに、それらをすべて取り出す。

4号機には補強工事を施したとはいえ、損傷が大きい建屋に核燃料を置いておけば、放射能漏れのリスクを伴う。燃料取り出しは廃炉に向けた不可欠な作業だ。核燃料を1体ずつつり上げて輸送容器に入れ、共用プールに移す。

取り出し作業で細心の注意が求められるのは、4号機のプール内に残るがれきだ。核燃料をつり上げる際に接触するなどして、傷つけないようにする必要がある。

原子力規制委員会は特別体制で作業を監督する。スケジュールに無理はないか。トラブルの種が見過ごされていないか。しっかりとチェックすることが大切だ。

1~3号機については損傷部が特定されておらず、溶けた燃料の状況も分からない。損傷部から漏れる汚染水は増え続けている。

4号機の核燃料取り出し作業で得られるノウハウを、1~3号機での溶融した燃料などの取り出しにも役立ててもらいたい。

炉内の状況把握に役立つ高度なロボットや、損傷部分の補修技術の開発も進めねばならない。

大きな課題は、廃炉作業を担う要員の持続的な確保である。

全面マスクと防護服を着けて進める作業は過酷だ。2000~3000人が必要とされる要員の手配は、現在でも容易でない。

廃炉工程が進めば、放射線の被曝(ひばく)量がさらに増え、現場への立ち入りを制限せざるを得ないベテラン技術者も出るだろう。

廃炉・汚染水対策には2兆円以上が必要とされる。政府が前面に出て技術開発や要員確保、資金支援に取り組み、長丁場の廃炉作業を確実に進めることが肝要だ。

産経新聞 2013年11月19日

燃料取り出し 国と規制委は廃炉支えよ

東京電力は福島第1原子力発電所4号機の燃料貯蔵プールから燃料を取り出す作業を始めた。

30~40年かかるとされる廃炉への、重要な一歩である。政府と原子力規制委員会は、一体となって廃炉工程を支えなければならない。

大震災時に定期点検中だった4号機は、1~3号機のような炉心溶融は起こさなかったが、水素爆発で原子炉建屋が大破した。過酷事故を起こした原発からの燃料の本格回収は世界でも前例がない。

4号機プールには未使用燃料202体、使用済み燃料1331体が保管されている。燃料回収に向けて補強工事やがれき撤去などの準備作業が行われたとはいえ、使用済み燃料の放射線量は高く、普通のプラントとは異なる。燃料取り出しは安全確保を最優先として慎重に行う必要がある。

計画では、「キャスク」と呼ばれる移送容器をプールに沈め、水中で燃料を容器に詰め込み、クレーンを使って約100メートル離れた共用プールに運ぶ。この作業は来年末まで続く。

プール内に残ったがれきが作業の障害になったり燃料がプール内で落下するなど、さまざまな不測の事態を想定する必要がある。政府と原子力規制委は、こうした危機管理と対応を「東電任せ」にしてはならない。

ネズミの侵入による停電や一連の汚染水漏れでは、東電は原因究明と応急対応に追われ、急場の対策が新たなトラブルにつながる悪循環を生じた。その過ちを繰り返すことは許されない。

長期にわたる廃炉工程を安定化させるのは国の責務である。原子力規制委も作業の監視役にとどまってはならない。専門的な知見と的確な助言により技術面で現場を支える役割も求められる。

廃炉の工程で最大の難関は、炉心溶融を起こした1~3号機の燃料を取り出す工程である。

4号機の燃料はほとんど無事とみられるが、より確実で安全性の高い燃料回収技術の確立に向けて、技術的な課題を検証することも重要だ。

また、廃炉の工程を持続可能なものにするには、作業員の安全確保や健康管理など、基本的な環境の整備が不可欠である。

政府が前面に立ってあらゆる技術と知恵を結集し、廃炉を支える体制を築くべきである。

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