JR北データ改竄 監査逃れ目的なら犯罪だ

朝日新聞 2013年11月18日

JR北海道 早く経営の刷新を

泥沼の深さに言葉を失う。JR北海道の保線部署で、レール幅の検査値が改ざんされていたことがわかった。

国の特別保安監査が入る直前で、異常を指摘されるのを避けるためだったとみられる。「会社のためと思ってやった」と語った社員もいたという。

監査妨害は鉄道事業法に触れる可能性がある。いや、それ以前の問題として、レールの異常は放置し続ければ列車の脱線につながりかねないものだ。

現場社員が、何をおいても守るべき安全より会社の体面を優先したのであれば、もはや公共輸送を担う資格はない。

深刻なのは、JR北の経営陣が、事態に対処する能力を明らかに失っていることだ。

野島誠社長は、保線業務の改善策を検討する外部専門家の委員会を設ける方針を示した。

だが、レール異常の放置が発覚してからほぼ2カ月たつのに、まだ発足していない。対応の鈍さにあきれるが、経営陣が問題の根深さをいまだ理解していないように見えるのが、いっそう気にかかる。

JR北では今年だけでも、列車の出火・発煙や運転士の覚醒剤使用など、深刻な不祥事が続いている。今回の改ざんも、病根はつながっていると考えるべきだ。保線業務だけの問題とみなしているなら、根治はとうていおぼつかない。

05年にJR宝塚線脱線事故を起こしたJR西日本は、数々の批判を踏まえて、外部専門家がすべての安全策を見直す安全諮問委員会を設けた。

今のJR北は、いつ重大事故が起きてもおかしくないリスクを抱えている。国の指導で、JR東日本から社員8人を期間限定で受け入れたが、その程度ではまったく不十分だ。

経営の構造から社員のモラルまで、多くの分野に精通した外部専門家を集め、社内の問題点を徹底的に洗い直すべきだ。

野島社長は「安全な鉄道をつくりあげるのが私の使命」と述べ、辞任を否定した。10年ぶりの技術系出身トップとして6月に就任し、改革は緒についたばかりとの思いがあるのだろう。

ただ、毎日35万人以上が使う道民の足の立て直しは待ったなしだ。社内の人心一新は避けて通れまい。

経営基盤が弱いJR北は今も事実上の国有企業で、毎年の事業計画や役員選任は国が認可している。事故が起きれば、間違いなく国も責任を問われる。

禍根を残さないよう、国がもっと前に出て、一刻も早く経営陣を刷新すべきだ。

読売新聞 2013年11月19日

JR北海道 徹底監査で不正を洗い出せ

鉄道会社にあるまじき安全軽視の意識がはびこっている。そう思うほかない深刻な事態だ。

JR北海道で、レール幅の計測値などを基準内に見せかけるデータ改ざんが明るみに出た。

国土交通省は無期限の特別保安監査を実施している。事態の重大性を考えれば当然の措置だ。規律の緩んだ組織の隅々にまでメスを入れてもらいたい。

JR北海道では、9月の貨物列車脱線事故をきっかけに、レール幅などの異常が放置されていたことが発覚した。

これを受けた社内調査の際、函館保線管理室は、複数の異常放置があったにもかかわらず、「異常なし」と本社に報告し、パソコンには虚偽のデータを入力していた。それが今回の問題である。

異常の放置があったのは、これまで計270か所とされていた。だが、実際には、これより多くの異常が見つかっていたことになる。極めて悪質な欺まん行為と言わざるを得ない。

改ざんは、国交省の監査に備えて行われたとみられる。鉄道事業法が禁じた検査妨害、虚偽報告に該当する可能性がある。国交省にはまず、改ざんに関わった社員を特定し、誰が主導したのか、指揮系統の解明が求められよう。

北海道内の保線業務を担当しているのは、44部署に及ぶ。函館保線管理室以外にデータの改ざんはなかったのか。

JR北海道では、自動列車停止装置(ATS)を誤作動させた運転士が、ミスを隠すため装置を壊すという不祥事も起きている。隠蔽体質が蔓延(まんえん)しているとみられても仕方がないだろう。

国交省としても、脱線事故後の2度の監査で改ざんを見落としてきた責任を重く受け止め、調査を尽くす必要がある。

JR北海道の経営陣は、不祥事が発覚する度に謝罪を繰り返し、企業風土を改善すると誓ってきた。だが、いまだに有効な再発防止策を打ち出していない。

野島誠社長は今回、外部の専門家を含む改善検討委員会設置の方針を示したものの、遅きに失した感がある。社内改革の意識があるのか、はなはだ疑問だ。

ガバナンス(企業統治)の欠如は明らかである。経営陣の刷新は避けられまい。

労働組合が強い影響力を持ち、管理職が現場を掌握しきれていないという指摘もある。

旧国鉄時代から引きずる悪弊の払拭を急がねばならない。

産経新聞 2013年11月15日

JR北データ改竄 監査逃れ目的なら犯罪だ

トラブルの連鎖は歯止めがかかるどころか、さらに拡大する気配だ。

レール幅が異常なまま広範囲に放置されていたJR北海道で、検査データそのものが本社への報告前に意図的に書き換えられていた。

野島誠社長が記者会見で「鉄道の信頼を裏切る事態を引き起こし、おわびする」と改竄(かいざん)の事実を認めて陳謝したものの、乗客の安全を最優先すべき公共輸送企業として、許し難い背信行為だ。

データの改竄は9、10月の国土交通省による特別保安監査の直前に行われていた。異常な数値の一部が許容範囲内に収まるよう修正されていた。脱線事故にも直結しかねず、管理が杜撰(ずさん)だなどというレベルをはるかに超えている。

同社は、10月末に外部から寄せられた情報で問題を認識していたが、確認に時間がかかり、公表が遅れたという。事態の重大さへの認識が乏しいのではないか。

異常値を隠蔽(いんぺい)することで監査を妨害したとすれば、鉄道事業法に抵触する明らかな犯罪行為だ。

国交省は14日、改竄の事実を確認するため、JR北に対し3度目となる追加の特別保安監査を始めた。抜き打ちで札幌市の本社のほか、改竄が発覚した函館保線管理室にも立ち入った。当然の措置であり、全容の解明を速やかに進めてもらいたい。

それにしても、これまでの監査では、なぜ今回の問題が見落とされたのか。その点についても明らかにしていく必要がある。

太田昭宏国交相は「誠に遺憾。鉄道事業者としてはあってはならない」と述べたが、監督官庁としての責任も厳しく問われていることを忘れてはなるまい。

車両火災や脱線事故などが相次いでいるJR北への信頼は、さらに失墜した。

先頃発表された同社の来年3月期の連結業績見通しによれば、相次ぐ事故に伴う特急列車の減便などで、営業赤字は305億円と過去最大に拡大するという。

国が用意した経営安定基金の運用益で経常赤字は回避される見通しだが、本業の悪化を止める抜本策は、いまだ見えない。

問題の根は深いが、同社の立て直しには、労使が一体となって膿(うみ)を出し切る決意と覚悟が、なにより欠かせない。

道民の足としての信頼回復は、そこからしか生まれない。

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