内外で期待された経済改革には、ほど遠い内容といえよう。
中国の習近平政権が、1年前の共産党大会で発足して以来3回目の中央委員会総会(3中総会)を開いた。指導部人事が中心となった1、2回目に対し、今回は、政権の基本方針を打ち出した。
総会後に発表された声明は、焦点の経済改革について、「市場原理が決定的な役割を発揮する」とうたい、外資企業などへの規制を緩和する自由貿易区の建設を加速することを強調した。
一見すると、官中心の放漫投資による成長からの脱却を目指す、李克強首相の経済政策「リコノミクス」に沿った内容と言える。
だが、エネルギーや情報通信などの分野で、独占的に事業展開する国有企業については、従来通り「主導的な役割」を果たす、と明記した。
市場重視の経済改革路線とは明らかに相いれない。国有企業は、党組織と一体化している。その分厚い既得権益層の壁を打ち破れず、妥協を迫られたのだろう。
抜本的な改革抜きに、中国経済の安定成長は望めない。自由な競争を求める国際社会の期待にも応えられまい。
声明で目を引くのは、「最も重要なのは、党の指導の堅持」と述べ、治安維持の重要性を強調していることだ。民主化運動や人権擁護活動、自由な言論などに対する抑圧が一層懸念される。
「国家安全委員会」も新設される。党や政府、軍などが一体となり、テロや暴動に対処する司令塔との見方が強い。米国家安全保障会議(NSC)を意識しているとみられ、対外政策の意思決定に関与する可能性もある。
反日デモに迎合したり、国民の不満をそらしたりするために、尖閣諸島などで威圧行動を強める恐れがあるのではないか。新組織が何をするのか、警戒が必要だ。
中国では、貧富の差などへの不満から年間約18万件の集団抗議行動が起きているとされる。総会直前には、北京・天安門前への車の突入や、山西省党委員会前での連続爆発などの事件も発生した。
習政権が実力によって治安を維持しようとする背景には、これらの民衆の反発があるのだろう。
声明は、司法機関の独立性を向上させるとしているが、司法が党の指導下に置かれている状況には変わりなく、実現は疑わしい。
中国の社会や経済の不安定な状況が長期化する公算は、大きいと言わざるを得ない。
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