年初から続いていた高成長にブレーキがかかったが、プラス成長は維持している。
政府と日銀は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を着実に前進させ、成長の再加速を図ってもらいたい。
内閣府が発表した今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0・5%増と、4四半期連続でプラスになった。だが、年率換算の成長率は1・9%で、前期の3・8%から半減した。
成長を牽引してきた個人消費が低迷したことが響いた。円安の追い風が期待された輸出も、アジアなど新興国の景気減速を受けて、マイナスに転じた。
内外需の柱が不振に陥る中で、成長を支えたのは、緊急経済対策で上積みした公共投資だった。
甘利経済財政相は「内需は底堅く、景気が引き続き上向いていると考える」と、強気の見方を示したが、油断は禁物だろう。
財政出動による成長の押し上げは、持続力に限りがある。消費や設備投資など民間需要が主導する自律的な成長に移行しないと、いずれ息切れは避けられまい。
懸念されるのは、食品や燃料など輸入品の価格が上昇し、原子力発電所の停止で電力料金も値上がりしていることだ。
内閣府の調査で、9割の世帯が1年後の物価は「上がる」と答えた。物価高を警戒して、消費者の心理が冷え込みかねない。
来年4月の消費税率引き上げをにらんだ「駆け込み需要」で、消費は年末から来年にかけて堅調さを取り戻すにしても、問題なのは増税後の反動減だ。
消費が失速すれば、日本経済再生に黄信号がともる。安倍政権の目指す「経済の好循環」を実現するどころか、深刻な「消費不況」に沈む恐れがある。
上場企業の今年9月中間決算は、利益総額が前年の2倍に増える勢いだ。好業績の企業が賃上げに踏み切り、家計の購買力を底上げすることが望まれる。
大企業だけでなく、中堅・中小企業の従業員や非正規労働者を含めた、所得全体の向上も大きな課題となろう。
民間企業の設備投資の回復が鈍いのも気がかりである。
経済成長の主役は民間企業である。各社が前向きの経営戦略を描き、合理化頼みの「守りの経営」から脱することが求められる。
政府は、大胆な規制改革や主要国より高い法人税実効税率の引き下げなど、企業戦略を後押しする施策を加速させるべきだ。
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