国内最大級の医療グループにおける組織ぐるみの選挙違反事件とみられる。捜査当局には徹底解明を求めたい。
東京地検特捜部と警視庁は、徳田毅・自民党衆院議員の姉2人と、「徳洲会」の幹部ら4人を公職選挙法違反(運動員買収)の疑いで逮捕した。
昨年12月の衆院選で、グループ関連会社の社長を務める姉2人と幹部らは、鹿児島2区から立候補した徳田議員の支援のため、大がかりな選挙違反を指示した疑いが持たれている。
系列病院の職員500人以上を選挙区に派遣し、その報酬として総額1億5000万円近くを支払っていたとされる。選挙期間中、職員を欠勤や有給休暇の扱いにして、報酬は年末の賞与に上乗せしていたという。
「徳洲会による丸抱えの選挙だった」と証言する看護師もいる。こうした供述と、系列病院や選挙事務所から押収した資料を照らし合わせるなど、捜査当局には丁寧な立証が求められよう。
選挙時、関連医療法人の常務理事だった徳田議員は、事情聴取に対し、関与を否定しているという。一方で、自民党には離党する意向を伝えた。責任追及の声が党内でも高まったからだろう。
自らの選挙活動に司直のメスが入った以上、現職の国会議員として説明責任を果たすべきだ。
候補者の父母や配偶者、子、兄弟姉妹が選挙違反を犯した場合、公選法には連座制の規定がある。執行猶予を含む禁錮以上の刑が確定すれば、候補者の当選は無効となる。同一選挙区から5年間、立候補することも禁止される。
徳田議員に連座制が適用されるかどうかが焦点となろう。
徳田議員の実父は、グループ創始者の徳田虎雄元衆院議員だ。難病で入院中だが、病室から選挙運動の全般について指揮していたと言われている。
体が不自由なため、逮捕は見送られたものの、特捜部は容疑者として在宅で取り調べを続ける。
虎雄容疑者も議員時代、激しい選挙戦を繰り広げ、多くの運動員が選挙違反で逮捕されたことがある。地盤を引き継いだ徳田議員の選挙でも、こうした体質が残っていたのだろうか。
徳洲会グループは「年中無休・24時間オープン」を掲げ、規模を拡大してきた。全国に280余りの医療施設を展開し、地域医療を担う病院も多い。
事件の影響で、患者の治療がおろそかになってはならない。
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