国家戦略の名を冠しながら、こんな小粒な規制緩和のメニューでは「看板倒れ」と言われても仕方あるまい。
安倍政権の成長戦略の目玉として、地域を限定して規制緩和を行う国家戦略特区法案の国会審議が始まった。
安倍首相は「大胆な規制改革を実行し、世界で一番ビジネスがしやすい環境を作る」と戦略特区の意義を強調している。
与野党は突っ込んだ国会論戦を展開すべきである。
法案は首相を議長とする「特区諮問会議」を新設し、特区の地域指定や基本方針の決定を行うことを明記した。年明けにも首都圏など3~5か所を指定し、2014年度中に特区を始動させる。
戦略特区は、医療、都市再生、教育など6分野で用意した規制緩和の中から施策を選び、特区ごとに計画を作る仕組みだ。
例えば、高層マンション建設を促進する容積率緩和や外国人医師の受け入れ拡大などを行い、外国人の生活環境を向上させる、といったケースが想定される。
各特区の取り組みを後押しするため、政府は税制優遇など多角的な支援策を検討すべきだ。
問題なのは、特区で実施する規制緩和策の多くが、すでに各府省の抵抗で「骨抜き」にされていることである。
柔軟な雇用制度をはじめ、経済界の期待する規制緩和の多くが見送られた。医療や農業など関係団体の発言力が強い分野でも、緩和策の修正や縮小が相次いだ。
抵抗の強い規制に正面から挑むのを避けた印象は拭えない。
いい食材がないとおいしい料理が作れないように、肝心の緩和メニューが踏み込み不足では、いくら味付けを工夫しても、効果的な特区作りは望み薄だろう。
法案が成立すると、諮問会議が規制緩和の司令塔となる。規制を所管する閣僚は原則として外す方向だ。各府省に資料提出や説明を求める法的権限も持つ。
首相は諮問会議の権能を有効に活用し、既得権や府省縦割りを打破してもらいたい。今後、強固な岩盤規制に風穴を開けられるかどうかが問われよう。
戦略特区について自治体や企業から200件近い提案が寄せられたが、実現するのはごく一部に過ぎない。自治体や民間の声に丹念に耳を傾け、規制緩和をさらに深化させる必要がある。
戦略特区で効果が確認された規制緩和を、遅滞なく全国に広げる取り組みも忘れてはならない。
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