東日本大震災の被災地を想起させる悲惨な光景が広がっている。
猛烈な台風30号が、フィリピンを直撃し、死者1万人とも言われる壊滅的な被害が出た。被災者は約1130万人に上る。日本は最大限の支援を急ぐべきだ。
台風の最大瞬間風速は秒速105メートルだったとされる。最も被害が大きかったレイテ島の中心都市タクロバンは数メートルの高潮に襲われた。簡素な木造の住宅は破壊され、消滅した集落もあるという。
レイテ島と隣のサマル島に住む邦人133人の多くとも連絡が取れないままだ。
行方不明者の捜索や救助、負傷者の治療が急務である。同時に、被災者に水や食料、医薬品を届けなければならない。
感染症などで犠牲者をこれ以上増やさないようにするための衛生対策も重要だ。
アキノ大統領は台風上陸前に避難を呼びかけたというが、甚大な被害を食い止められなかった。被災状況の把握が進まず、死傷者に関する情報の公開も遅れている。政府の対応の不手際には国民の不信感も高まっている。
国際社会による全面的な支援が必要だ。被災者救出にとどまらず、通信手段や交通の確保、救援物資の集積など協力できることは多い。既に、日本をはじめ、米国、中国、欧州連合(EU)などが、次々に支援を表明している。
日本政府は、国際緊急援助隊の医療チームを現地に送るとともに、1000万ドル(約10億円)の緊急無償資金協力を決めた。
比政府の要請を受けて、政府が自衛隊の派遣を決めたのも妥当な判断だ。先遣隊50人がまず現地入りし、医療支援などにあたる。
東日本大震災の際、日本は、フィリピンを含む各国から多大な支援を受けた。国際的な災害支援は日本の責務と言えよう。
2004年のインド洋津波の後、日本政府は、インド洋における多国間の津波警戒システムの構築に、主導的役割を果たした。
台風に関しても、日本の気象庁が、気象衛星のデータや予報情報をアジア諸国に提供しているが、今回のような被害を少しでも減らすために、同様の情報ネットワーク作りが求められる。
アジアは世界有数の自然災害多発地帯だ。過去30年間の犠牲者の約半数が集中するという。
日本やフィリピンをはじめ、台風災害に苦しめられるアジア各国は、防災面での連携も一層強化すべきだろう。
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