フィリピン台風 「友人」支援の先頭に立て

朝日新聞 2013年11月12日

比の台風災害 一刻も早い人道支援を

フィリピンが記録的な強さの台風30号に襲われた。

比政府などによると、約1千万人が被災し、死者は1万人を超す恐れもあるという。現地からの映像は息をのむ惨状だ。

日本政府は、国際緊急援助隊の医療チームを派遣した。水、食料、医薬品の提供など、官民あげて一刻も早く救援を送るべきだ。

もっとも被害が大きいのは、中部のレイテ島だ。報道を総合すると、被害をもたらした最大の要因は高潮だったようだ。

5千人を超す犠牲者を出した1959年の伊勢湾台風と同じ構図である。その上陸時の中心気圧は930ヘクトパスカルと推定され、通常の潮位を3・45メートル上回る高潮が堤防を破った。

今年もっとも強い勢力となった台風30号は、直撃時の中心気圧が895ヘクトパスカル。高潮は一部で6メートルに達したという。

気圧が1ヘクトパスカル下がると吸い上げられた水面は約1センチ上昇する。さらに絶え間ない風が海水をあおり、高潮は起こる。海が盛りあがるさまは、津波が長時間続くようなものだ。

お年寄りや子どもら多くの人々が家を失い、劣悪な衛生環境にある。まずは直接被害を最小限に食い止めるためにできるだけの救助活動を急ぐべきだ。

今回の台風災害の根本には、防災インフラが遅れている途上国共通の問題がある。空港や道路など産業基盤への投資にくらべ、自然災害への備えは後回しにされがちだ。

防潮堤の建設や建造物の強化、治水などハード面の整備には時間もお金もかかるだろう。だが、気象情報や警報などソフト面の防災は即効的に改善できる面が大きいのではないか。

たとえば高潮は事前にある程度予測でき、本来は避難する時間があるはずだ。台風の進路予測や警報発令、その情報を伝えて住民避難に生かす方法……。そうした分野で日本が提供できる仕組みも多い。

地球温暖化に伴い、極端な気象現象が増えるのではないかといわれている。水温の高い海域が北に広がり、猛烈な台風が日本を直撃するようになるかもしれない。ひとごとではない。

とくにフィリピンと日本は、自然災害の共通点が多い。ともに世界有数の地震国、火山国である。90年代のピナトゥボ山の大噴火は、日本の火山防災にも教訓を残した。

自然災害に国境はなく、人命を救いたい人々の意識にも垣根はない。多くの国々と防災のノウハウを共有し、協力の輪をアジアと世界に広げたい。

毎日新聞 2013年11月14日

フィリピン台風 経験生かし支援急ごう

猛烈な台風30号が直撃したフィリピンでは、日がたつにつれて被害の深刻さがあらわになっている。被災者は1130万人と推計され、死者は確認されただけで2000人を超えた。水や食料が不足しているうえ、通信や道路が寸断されて救援活動が難航する極めて厳しい事態だ。

被災した島に住んでいた日本人数十人とも連絡が取れておらず、安否が気遣われる。日本大使館を通じて確認を急ぐ必要がある。

日本は国際緊急援助隊の医療チームを送り、約10億円の緊急無償資金協力を決めた。自衛隊の援助隊も派遣し医療活動や物資輸送に当たる。世界各国からの支援が届き始めているが、まだまだ緊急援助が必要だ。食料や医薬品に加え、被災者の生活再建に必要な物資など、日本もできる限りの支援を送りたい。

台風30号は上陸した台風では史上最強クラスだ。竜巻のような暴風と5メートル以上の高潮が島を襲い、「スーパー台風」の脅威を見せつけた。8万戸以上の家屋が破壊され、ライフラインも大きく傷ついた。

フィリピン近海では例年、多くの台風が発生し、同国には年間平均10個近い台風が上陸して被害が生じている。地震や火山噴火も多く、1991年のピナツボ火山噴火では120万人以上が被災した。しかし、経済成長を目指す開発が優先され、防災対策は後手に回りがちだ。

同じ災害多発国である日本の支援は重要だ。99年の台湾大地震や2004年のインド洋大津波では迅速な救助隊派遣や警報システム構築への協力が感謝され、お返しの意味も込めて東日本大震災の際に手厚い義援金が寄せられた。アジアの隣人として助け合う姿勢が国民同士の友好と信頼につながっている。

安倍晋三首相は今年7月に訪比した際、災害復旧用の融資枠の新設を表明した。今回の台風被害では住宅やインフラ再建に多額の費用がかかる。新たな支援策を生かす機会だ。蓄積した技術やノウハウを使って防災や人材育成にも貢献したい。

長らく政治混乱や経済停滞が続いたフィリピンだが、10年に発足したベニグノ・アキノ政権の下で安定を回復し、経済成長路線にも乗りつつある。しかし、今回の被災では対応の遅れが批判され、混乱が長期化すれば政権の不安定化につながる恐れがある。国際社会も被災地の復旧や再建を支えていくことが大切だ。

世界的に異常気象が頻発し、地球温暖化との関連が指摘されている。東アジア近海でも海水温が高い状態が続き、勢力の強い台風が多く発生している。国境を越えた防災を強化するため、日本は情報網の整備など国際協力を率先していきたい。

読売新聞 2013年11月13日

フィリピン台風 被災者救援に日本も力尽くせ

東日本大震災の被災地を想起させる悲惨な光景が広がっている。

猛烈な台風30号が、フィリピンを直撃し、死者1万人とも言われる壊滅的な被害が出た。被災者は約1130万人に上る。日本は最大限の支援を急ぐべきだ。

台風の最大瞬間風速は秒速105メートルだったとされる。最も被害が大きかったレイテ島の中心都市タクロバンは数メートルの高潮に襲われた。簡素な木造の住宅は破壊され、消滅した集落もあるという。

レイテ島と隣のサマル島に住む邦人133人の多くとも連絡が取れないままだ。

行方不明者の捜索や救助、負傷者の治療が急務である。同時に、被災者に水や食料、医薬品を届けなければならない。

感染症などで犠牲者をこれ以上増やさないようにするための衛生対策も重要だ。

アキノ大統領は台風上陸前に避難を呼びかけたというが、甚大な被害を食い止められなかった。被災状況の把握が進まず、死傷者に関する情報の公開も遅れている。政府の対応の不手際には国民の不信感も高まっている。

国際社会による全面的な支援が必要だ。被災者救出にとどまらず、通信手段や交通の確保、救援物資の集積など協力できることは多い。既に、日本をはじめ、米国、中国、欧州連合(EU)などが、次々に支援を表明している。

日本政府は、国際緊急援助隊の医療チームを現地に送るとともに、1000万ドル(約10億円)の緊急無償資金協力を決めた。

比政府の要請を受けて、政府が自衛隊の派遣を決めたのも妥当な判断だ。先遣隊50人がまず現地入りし、医療支援などにあたる。

東日本大震災の際、日本は、フィリピンを含む各国から多大な支援を受けた。国際的な災害支援は日本の責務と言えよう。

2004年のインド洋津波の後、日本政府は、インド洋における多国間の津波警戒システムの構築に、主導的役割を果たした。

台風に関しても、日本の気象庁が、気象衛星のデータや予報情報をアジア諸国に提供しているが、今回のような被害を少しでも減らすために、同様の情報ネットワーク作りが求められる。

アジアは世界有数の自然災害多発地帯だ。過去30年間の犠牲者の約半数が集中するという。

日本やフィリピンをはじめ、台風災害に苦しめられるアジア各国は、防災面での連携も一層強化すべきだろう。

産経新聞 2013年11月16日

フィリピン台風 信頼の蓄積生かす支援を

台風30号が直撃したフィリピン中部のレイテ島では、1週間が経過したいまも混乱が続き、被害状況さえ十分に把握できない状態だ。略奪など治安の悪化も深刻化しているという。

国連人道問題調整室(OCHA)の14日(日本時間15日)現在の発表では死者は4460人に達し、1180万人が被災しているという。現場の対策が遅々として進まないのも、被害の大きさを考えれば、ある程度やむを得ない面はあるのだろう。

だが、一日も早く、一人でも多くの人を救いたいという思いは、東日本大震災を経験した日本の国民には諸外国にも増して強い。政府がいち早く、国際緊急援助活動に1千人規模の自衛隊派遣方針を決めたことを歓迎したい。

国際的には2004年のスマトラ島沖地震、国内では東日本大震災など数々の災害現場で任務を実直に遂行し、信頼を得てきたことが今回の迅速な方針決定にもつながったといえよう。

政府と民間が協力して緊急援助活動に取り組むジャパン・プラットフォームでも、参加NGO(非政府組織)がすでにスタッフを現地に派遣し、企業からの寄付や支援の申し出が相次いでいる。わが国の援助活動への対応がこの10年、官民ともに大きく進化していることは心強い。

災害の現場には常に困難がつきまとう。情報が錯綜(さくそう)し、一足早く現地入りした国際緊急援助隊の医療チームも思うように活動できない。この状況をどう打開し、有効な支援につなげるかである。

現地で必要とされるものを現在進行形で把握し、刻々と変化する被災地の要請に的確に応えていくことがまず大切だ。それには、最大の支援国である米国や日本とフィリピン政府との緊密な連絡と調整が不可欠になる。政府間に加えて、OCHAによる国連の調整機能も活用すべきだろう。

日本の支援チームにしても、自衛隊は大規模な医療提供体制や物資輸送に力を発揮できるし、NGOには現地が求めているものをきめ細かく把握し、すぐに対応できる柔軟性がある。

緊急対応と並行して、感染症対策や生活基盤の応急的な整備、そして中長期的な復旧復興へと、なすべきことは今後も次々に出てくる。日本の経験の蓄積を生かし、支援にあたってほしい。

産経新聞 2013年11月12日

フィリピン台風 「友人」支援の先頭に立て

猛烈な台風30号の直撃を受けたフィリピンでは、中部のレイテ島を中心に950万人が被災し、死者は1万人に達する恐れも出ている。

政府は、取り急ぎ国際緊急援助隊の医療チーム25人を派遣したが、今後とも最大限の支援を行うことはアジアの友人として当然だ。日比の絆を強め、両国の信頼関係を強固にすることにもつながる。

被災地では、食料や飲料水の不足が深刻で、それにともなう略奪行為など治安状態の悪化に加え、遺体収容の遅れなどによる衛生環境の劣化も懸念されている。

それだけに救援には迅速さが何より重要だ。時間が経過すれば、被害がそれだけ拡大し、被災者の苦痛も増す。政府は自衛隊の派遣も検討しているという。状況は厳しいが、一人でも多くの命を救えるよう支援に全力を挙げたい。

日本の国際緊急援助隊は過去、世界各地に派遣され、各国の救助隊とともに、捜索や医療、支援物資の引き渡しなどの任務に当たってきた。2004年12月のインド洋大津波では、インドネシアに自衛隊の艦船が派遣され、捜索・輸送活動などに貢献した。

10年1月のハイチ地震、同年7月のパキスタン洪水被害の際も自衛隊が支援活動に参加した。道路が寸断されている被災地では、自衛隊の装備が威力を発揮する。

今回、米国はいち早く、太平洋軍にフィリピンでの救援活動支援を命じた。日本は米国と調整して、効率的、効果的な支援を行う必要がある。

一昨年3月の東日本大震災では、米軍が「トモダチ作戦」を実施し、自衛隊と連携して救援活動にあたった。フィリピンからも医療支援チームの派遣を受けた。

東北地方に、世界の多くの国・地域が手を差し伸べてくれたことを忘れてはならない。

日本と同じく、米国の同盟国であるフィリピンは、自由と民主主義の価値観を共有するアジアの近隣国だ。

12月には、東京で東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本の交流40周年を記念した首脳会議が開かれる。フィリピンは、そのASEANで重要な位置を占める。

巨大地震や台風を幾度も体験した日本は、災害時の支援活動でも先進的役割が期待されている。フィリピンを率先して支援することは日本の責務だ。

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