税金が有効に使われていないケースが、相変わらず目立つ。
会計検査院は2012年度の決算検査報告書で630件、4907億円の問題点を指摘した。
日本は先進国で最悪の財政赤字を抱えている。財政再建は待ったなしだ。検査院から改善を求められた各省庁は、予算の適正な執行に取り組まねばならない。
検査院は今回、公共インフラの維持・管理の調査に力を入れた。国民の安全にかかわるからだ。その調査で、杜撰な実態が浮かび上がったことは看過できない。
例えば、高速道路をまたぐ陸橋(跨道橋)の管理だ。全国の約4500か所すべてを調べたところ、635橋で点検が実施されていなかった。548橋では点検をしたかどうかすら不明だった。
30年以上経過した陸橋のうち968橋で、コンクリート片の剥落防止措置がとられていなかったことにも驚く。通行中の自動車を直撃すれば、惨事を招きかねない。過去には東名高速道路にコンクリ片が落下した事例もある。
大地震の際、陸橋が崩落すると、高速道路が寸断され、緊急輸送路としての機能を果たせなくなる事態が懸念される。
陸橋は、高速道路による地域の分断対策として、高速道路会社側が建造し、所在地の自治体が管理している。自治体が自らの予算で造った施設でないことが、当事者意識を欠いた対応につながっているのではないか。
高速道路会社と自治体は連携し、安全対策を進めるべきだ。
国道トンネルにも問題が多い。少なくとも11か所で約10年間、定期点検が行われていなかった。
20人が犠牲になった1996年の北海道・豊浜トンネル崩落事故の教訓が生かされていない。検査院が国土交通省に対し、点検の徹底を求めたのは当然である。
JR四国の鉄道橋では、補修の必要性を把握しながら、3年以上修繕していない橋が56か所に上った。中には23年間、放置された橋もあった。安全への認識が希薄だと批判されても仕方あるまい。
国や自治体のお粗末な耐震補強工事にもあきれるばかりだ。橋脚の柱部分に鉄筋コンクリートを巻き付ける工事で、重量の増加を適切に考慮しなかったため、橋脚を支える基礎部分の耐震性がかえって低下したケースがあった。
安倍政権は、国土強靱化の方針を打ち出している。だが、既存の建造物の基本的な保守・点検がおろそかなようでは心もとない。
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