全国学力テスト 刺激し合う効果出てきた

毎日新聞 2009年08月28日

学力テスト もっと有効な手だてを

「携帯電話の使い方で家の人との約束を守っている子供の方が正答率が高い傾向が見られる」

全国学力テストの結果分析で、文部科学省はこのように成績と生活の相関を示す。「読書が好き」「宿題をする」「朝食を毎日食べる」「家の人に学校の出来事を話している」……。これらは「正答率が高い傾向が見られる」子供たちという。

大切だが、改まって全国調査をやり初めて知るような事柄ではない。

今年が3回目の学力テストはこれまでと同様、全国の小学6年生、中学3年生全員を対象に、国語、算数・数学の2教科で4月に一斉実施された。それぞれ知識の「A」と活用の「B」に分かれる。今回も成績は過去2回と大きな変化はなく「知識はあるが活用の方は苦手」という平均像がまた描かれた。

そして冒頭に例示したように、質問用紙で普段の勉強ぶりや生活のアンケートをし、成績と照合した。

肝心なのは、では子供をどう読書好きになるよう導くか、家族とのコミュニケーションをどう促すかなど、具体策だ。文科省は調査結果に授業の工夫例も付けてはいるが、学校現場に必要なのは、より細かく多様で有効な処方せんである。

そもそもこの学力テストは、国際学習到達度調査で読解力の成績が低下したことを契機に導入された。第1回で今回と同傾向の結果は出た。なのに毎回50億円以上もかけて全員参加方式の調査(悉皆(しっかい)調査)を続けるのは無駄と言わざるを得ない。昨年、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」もこれを挙げた。

学力実態掌握は抽出調査で足りる。悉皆だと順位を意識し準備学習する学校も出て、調査目的にそぐわなくなる可能性も生じる。文科省は「全国での位置が分かり、指導に生かせる」と言うが、膨大な答案処理で4カ月かかり、最終学年の2学期にこれをどう生かせよう。

学力とともに緊急の教育課題は、格差などによる「機会不均等」だ。こうした問題こそ速やかな調査と対策が求められる。実際、最近文科省の委託調査で、親の年収差で学力テストの正答率に差異があることが裏づけられた。小学校100校、保護者5800人を抽出した結果だ。

都道府県別順位にまた関心が集まりそうだ。ほとんどが平均正答率の+-5%以内で、ばらつきは小さいと文科省は説明する。市町村別などで正答率を公開し奮起させようとする地域もあるが、順位の上下だけに注目してもさほど意味はない。

衆院選後、教育政策の中で、このテストのあり方や、着実で有効な学力向上策について抜本的に論議されることを期待したい。

産経新聞 2009年08月28日

全国学力テスト 刺激し合う効果出てきた

小学6年と中学3年対象の全国学力テストの結果が公表された。全国規模の一斉テストが復活して3年目となり、大阪や沖縄など成績の悪い県が上位に学ぶなど効果が見え始めている。さらに活用し、公教育の充実を図りたい。

都道府県別の正答率をみると、秋田や福井、富山などは今回も上位だった。

上位県では学校の指導のほか、家庭での学習を習慣づける工夫や規則正しい生活習慣が学力向上に影響していることが今回も裏付けられた。

一方で小学生の算数の基礎問題(A問題)を中心に大阪や沖縄などが順位を上げた。

大阪では過去2回の成績低迷を受け、橋下徹知事が教育委員会に発破をかけ、学力向上の取り組みを加速させた。授業で計算問題など反復学習を熱心に行った効果が出ているという。

また沖縄では秋田と教員の相互交換を始めた。教育界ではこれまであまりなかった取り組みだ。

大阪や沖縄はまだ全国平均を下回り、応用力など課題は多い。だが基礎をまず固めることが学力アップにつながることは専門家も指摘している。さらに授業や家庭との連携など工夫してほしい。

全員参加の全国学力テストにはいまだに反対する動きがある。日教組は昭和30年代に学力テスト反対闘争を行い、テスト復活の際には北海道教職員組合の一部が妨害する動きがあった。

民主党は全員参加型を見直し、抽出調査へ縮小する方針という。しかし、抽出調査では参加しない学校などの課題が分からない。全国規模で自身の成績の位置が分かる全員参加の学力テストの教育効果は大きい。

学力テストをめぐっては市町村や学校別の成績公表をためらう教育委員会などが少なくないことも問題だ。今回同時に行われた調査では保護者や地域の人たちに自校の成績を説明している学校は約7割にとどまる。

政府の規制改革会議の調査では学校別成績について保護者の約7割が公表を望んでいる。これに対し、市区教委の約9割は公表すべきでないとし、親との意識の差が大きい。競争や評価を嫌うなれ合い体質の教委の意識改革も必要である。

学力向上の取り組みは緒に就いたばかりだ。刺激し合う流れに水を差してはならない。

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