無人機による民間人への誤爆が、米軍主導のテロ掃討作戦への反発を招いている。誤爆の犠牲者の拡大を食い止めなければ、作戦の遂行も危うくなりかねない。
対テロ作戦として米国や英国がパキスタンやアフガニスタンで進める無人機攻撃の実態に関し、国連に調査を依頼された専門家が国連総会第3委員会で報告した。
攻撃の巻き添えで死亡した民間人は、2004年以降、合計で450人を上回るという。
米国は01年頃から、対テロ作戦でミサイルなどを備えた無人機による攻撃を開始したとされる。
情報提供者の協力で敵の所在を突き止め、米本土の基地から遠隔操作で無人機を現場上空に送り込む。搭載したレーダーやカメラで標的を見極めて攻撃する。
米国側に人的損害が出ない上、パキスタンの部族地域のように陸上からは接近が難しい場所でも、上空からならたやすい。長時間の滞空が可能で即時攻撃能力があるので、潜伏中のテロ容疑者の掃討に威力を発揮している。
最近も「パキスタン・タリバン運動」の最高指導者を攻撃して、殺害したことが判明した。
国連報告が指摘しているように、無人機は本来、敵に接近して精密誘導兵器で攻撃を行う。誤爆はむしろ防ぎやすいはずだ。
だが、実際に誤爆が多いとすれば、地上の情報収集で敵の動静を的確に把握することが必要だ。
国連報告は、米国に対し、民間人誤爆に関する情報を公開するよう勧告した。米政府は、無人機攻撃の作戦情報をほとんど公開していない。誤爆と疑われる場合は、情報を開示すべきである。
パキスタンのシャリフ首相は先月、オバマ米大統領と会談し、無人機攻撃の中止を求めた。
だが、大統領は無人機攻撃は続行する方針だ。米軍のアフガン撤退が来年に迫っている。それまでに、アフガンからパキスタンに逃げ込んでいるテロ組織幹部をできるだけ排除したいのだろう。
テロとの戦いには、パキスタンも加わっている。米パ両国は地域の安定のため、協力してテロ勢力掃討に取り組んでもらいたい。
米国の無人機攻撃は10年をピークに減少傾向にある。大統領は攻撃規模を縮小し、透明性を高める意向を既に明らかにしている。
一方で、無人機を導入する国が増えているのは気がかりだ。秘密の殺人兵器として、野放しにしてはなるまい。情報開示など国際規範作りへの検討を急ぎたい。
この記事へのコメントはありません。