メニュー偽装 「おもてなし」を汚すな

毎日新聞 2013年10月24日

メニュー偽装 「おもてなし」を汚すな

大阪市に本社のある「阪急阪神ホテルズ」が運営する関西や東京のホテルのレストランなどで、メニューの表示と異なった食材を使っていたことが判明した。全国に名の知れたホテルが、7年半にもわたってこうした不正行為を続けていたことに驚くとともに、怒りを覚える。消費者への裏切りであり、食の安全・安心に対する信頼は大きく傷付いた。

偽装は23店舗のメニュー47種類で行われ、「鮮魚のムニエル」と称しながら、実際は冷凍保存した魚を使用するなどしていた。担当者が知りながら放置していた悪質なケースもあった。

多くは担当者の知識不足が原因だったとホテル側は説明している。例えば、「鮮魚のムニエル」の場合、担当者が「鮮魚」と表示しても構わないと思い込んでいたという。食材の仕入れ担当と調理担当の意思疎通の悪さも挙げている。

だが、偽装が行われていた2006年3月から今年9月の間には、大阪の高級料亭「船場吉兆」が加工食品の産地や原材料を偽装して大阪府警の捜索を受け、客が残した料理の使い回しも発覚して廃業に追い込まれた事件も起きている。自店の状況をチェックできたはずなのに、なぜ7年半も見過ごされてきたのか。

ホテル側は過去の経緯を検証するとともに、早急に関係者向けの教育と研修を徹底し、再発防止に努めなければならない。これまできちんとした対策を取ってこなかった経営責任も問われる。

今回、阪急阪神ホテルズは今月7日に消費者庁に報告した後、約2週間も公表を控えていた。情報の整理などを理由に挙げているが、できるだけ早く公表すべきだった。対象の利用客は延べ8万人近くに上り、ホテル側は返金する意向を示している。混乱のないよう、誠意ある対応が求められる。

こうした問題発覚は、今回に限らない。今年になって、東京ディズニーリゾートのホテルやプリンスホテルなどでも明らかになっている。他のホテルやレストランでも同様のことがないか。世界的に日本の「おもてなし」が注目を集め、海外からの観光客も増えている時期である。各業者は実態を調べ、業界全体としてモラル向上を図ってもらいたい。

00年代になって、雪印食品の牛肉偽装など食品偽装事件が相次いだことから、日本農林規格(JAS)法が改正され、09年に消費者庁が設立された経緯もある。阪急阪神ホテルズについて、消費者庁は現在、調査を進めているが、高まる国民の食の安全・安心に対する意識に応えるよう、積極的な役割を果たしていく責任がある。

読売新聞 2013年10月26日

メニュー偽装 「誤表示」の強弁は通らない

「偽装ではなく、誤表示だ」という強弁は通用するまい。

阪急阪神ホテルズが運営する八つのホテルのレストランなどで出された多くの料理で、メニュー表示と異なる食材が使用されていた。

虚偽表示は7年以上に及び、約7万9000人に提供された。

阪急阪神ホテルズは記者会見で、「メニュー表示と食材が合っているかどうか、チェックする意識が欠落していた」「従業員が(食材に関して)無知・無自覚だった」と釈明している。

だが、一部の従業員は、料理の中身がメニュー表示と異なることを知りながら、「問題ないと思った」と話している。故意に偽装していたという疑いは拭えまい。

虚偽表示の例は、次のようなものだ。メニューには「芝海老(えび)」と記載していたが、実際はバナメイエビだった。芝海老の仕入れ値が1キロ・グラム2500円なのに対し、バナメイエビは1400円だ。

「九条ねぎ」とうたっていたものは、普通の青ねぎ、白ねぎだった。普通のねぎの仕入れ値は1キロ・グラム800円で、九条ねぎの2000円より格段に安い。

「不当に利益を上げる意図はなかった」というホテル側の主張は、額面通りに受け取れない。名の通ったホテルでコンプライアンス(法令順守)機能が働かない実態に、あきれるばかりだ。

ホテル側は、景品表示法(優良誤認)に違反する恐れがあるとして、消費者庁に報告した。森消費者相は「厳正に対処したい」と語った。徹底調査を求めたい。

東京のプリンスホテルでも6月に、チリ産ローストビーフを「国産牛肉」と表示していたことが明らかになった。

これを契機に、阪急阪神ホテルズが系列のホテルを調べた結果、今回の問題が発覚した。

ホテルの生命線は、サービスの質だ。利用客は、館内のレストランで、良質の食材を使ったうまい料理に見合う料金を支払う。

阪急阪神ホテルズの行為は、長年かけて築いてきたブランドイメージを自ら傷つけるものだ。

食品を巡る偽装行為は後を絶たない。2007年には、大阪市の高級料亭で牛肉の産地偽装が発覚した。食材の使い回しなども判明し、廃業に追い込まれた。

阪急阪神ホテルズは客に代金を返す意向だ。返金額は最大で約1億1000万円に上るという。

偽装の代償は大きい。信用を取り戻すのは容易でない。食品関係者は、人ごとではなかろう。

産経新聞 2013年10月25日

メニュー偽装表示 信頼こそ最高の調味料だ

「信頼を裏切った」と謝罪しながら、いまだに誤表示と説明している。「意図を持って表示し利益を得ようとした事実はない」と。だが、客をだましていたのだから、偽装と断じる。

阪急阪神ホテルズ(大阪市)系列のホテルのレストランなどが、メニューの表示と異なる食材を使っていた。「クラゲのレッドキャビア添え」はトビウオの魚卵、「若鶏の照り焼き九条ねぎロティ」は一般的な青ネギ、白ネギを使用、「手ごね煮込みハンバーグ定食」は手ごねではなく既製品だった。23店舗、47品目に及ぶ。

驚くのは約7年半にわたって偽装表示が行われていたことだ。

平成19年に大阪の高級料亭「船場吉兆」で食べ残しの料理の使い回しや、食材の産地偽装などが明るみに出て廃業に追い込まれた。さらに輸入牛肉を国産と偽ったり、賞味期限の改竄(かいざん)などが相次いで発覚し、食の安全・安心を揺るがす社会問題になった。

この間も偽装表示は続いた。一部では調理担当者が表記と違うことに気づいていたことも認めている。認識が甘いだけでなく、企業コンプライアンスは全く機能していなかったといえる。

ホテルのレストランは業界のリーダー的存在といえよう。値段もそれなりに高いが、客は付加価値として受け入れる。根底にあるのは、食材と調理人の技術、そしてサービスへの信頼である。

「信用を獲得するには長い年月を要し、これを失墜するのは一瞬である」。半世紀前、集団食中毒を起こした当時の雪印乳業社長が従業員を集めて涙ながらに訓示した。この言葉は、企業の危機管理の金言である。

阪急阪神ホテルズは利用を確認できた客に料金を返還し、経営陣の報酬減額処分などを発表したが、信頼回復は容易ではない。第三者の視点も必要になる。

行政にも注文をつけたい。

食品の生産段階から流通、消費までの経路を追跡できるトレーサビリティーが注目されており、BSE(牛海綿状脳症)問題をきっかけに牛肉、さらに米と米加工品の記録と表示が義務化された。

最近はスーパーなどで生産者の名前や写真付きの野菜なども人気を集めている。食の安全・安心に対する消費者の関心に応えて、さらなるルールづくりや監督機能の充実を求めたい。

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