衆院予算委 実りある経済論争が聞きたい

毎日新聞 2013年10月24日

予算委員会質疑 エネルギー論が足りぬ

国会は衆参予算委員会で安倍晋三首相や閣僚が出席しての質疑が続いている。福島第1原発事故に伴う汚染水問題への政府の認識や、対策のあり方がポイントとなっている。

首相は国際オリンピック委員会(IOC)総会で汚染水対策の万全さを強調したが国会答弁を聞く限り、実態の深刻さとズレがあると言わざるを得ない。民主党など野党も質問に戦略性が乏しい。エネルギー政策や東電の経営形態も含め、踏み込んで議論すべきだ。

ねじれを解消し与党優位の状況で迎えた論戦だが、汚染水問題では答弁にほころびものぞく。IOC総会の首相による「汚染水による影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」「状況はコントロールされている」との発言をめぐる質疑がその代表である。

代表質問の際、首相は「影響は原発の港湾内にブロックされている。全体として状況はコントロールされている」と答弁、「完全に」の表現を省く一方で「全体として」との言葉を加え総会での発言を微妙に修正した。この点を委員会質疑で突かれた首相は今度は「健康への被害の意味でも完全にブロックされている」と答弁、健康への影響にふれながら「完全に」を復活させた。

質疑で汚染水が港湾外に漏れているかを追及された茂木敏充経済産業相は「外洋と湾の水は混ざり希釈される」と述べ、外洋の放射性物質調査結果は基準値以下と説明した。ならば少なくとも「影響は完全にブロック」などというまぎらわしい言い方は避けるべきだろう。こうした表現は汚染水問題をどう認識しているかにかかわるだけに「言葉じりの問題」と片付けるわけにいかない。

民主党が初日の予算委質疑で質問を6人で30分ずつに区切ったことも疑問だ。これでは議論を掘り下げようがない。米スリーマイルアイランド原発事故を例示しつつ国と事業者の費用分担を促し、モニタリングデータの公表方法の改善を求めた玉木雄一郎氏のように建設的な質疑もあっただけに残念だ。

エネルギー政策をめぐる議論は食い足りない。小泉純一郎元首相による「原発ゼロ」提唱を問われた首相は「(小泉氏は)政治の師匠」としながらも「エネルギーの安定供給を進める責任がある」と一線を引いた。小泉氏の主張の核心である使用済み核燃料の最終処分問題をとことんただす構えが全体的に乏しいのではないか。

首相の国会での出席日数制限などを検討する国会改革の議論も動き出すが、重要テーマでの説明責任を免除するものではない。野党が要求する汚染水問題の集中審議をすみやかに実現すべきである。

読売新聞 2013年10月22日

衆院予算委 実りある経済論争が聞きたい

日本の針路を左右する課題が山積している。国会には、実りある政策論争を期待したい。

衆院予算委員会で質疑が始まった。

民主党の前原誠司・元外相は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、「経済指標は良くなっているが、この考えにはくみしない」と述べた。

金融緩和と財政出動の効果は短期的で、経済指標の最近の好転は、中国の経済成長など外的な要因もあると指摘した。

安倍首相は、グリーンの先の崖を心配して、バンカーからパターで打つようなものだと、ゴルフに例え、デフレから脱却できなかった民主党政権を批判した。バンカーから脱するサンドウエッジがアベノミクスだとも主張した。

前原氏は、「グリーンに乗るかどうかわからない。一緒に崖に連れて行かれてはたまらない」と応じたものの、議論が深まったとは言い難い。

来春の消費税率引き上げによる景気の腰折れを避け、経済を再生させることが日本の最大の課題である。民主党なら、どんな政策を採るのか具体策を聞きたい。

前原氏は日銀の黒田東彦総裁に金融緩和縮小への「出口戦略」を示すよう迫った。だが、デフレ脱却は道半ばで、政策効果を見極める段階である。黒田氏が「時期尚早」と答えたのは当然だろう。

民主党は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、聖域なき関税撤廃を前提としないとする自民党の選挙公約との関係や、交渉に関する情報開示のあり方などをただした。

しかし、首相は「公約をたがえてはならないと考えている」と繰り返すばかりだった。

自民党はコメ、麦など「聖域」の絞り込みを検討している。TPP交渉の展開は不透明だ。自由貿易推進で、日本が成長にどう弾みを付けるのかという観点からも、与野党は論戦すべきだろう。

小泉元首相が「原発ゼロ」を唱えていることも議論になった。

安倍首相は「政権を預かる立場としては、いかなる事態でも国民生活に責任あるエネルギー政策を進める」と語った。

経済活動や家計に与える悪影響を考えれば、原発をゼロにする政策は非現実的だ。

放射性廃棄物処分場が確保出来ていない問題について、首相は「処分地選定に着手できていない現状を真摯(しんし)に受け止めなければならない」と語った。首相主導で取り組みを強化する必要がある。

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