「核不使用」賛同 抑止力維持しつつ軍縮進めよ

毎日新聞 2013年10月23日

核不使用声明 廃絶の一歩にしよう

日本やニュージーランドなど125カ国は、軍縮問題を扱う国連総会第1委員会で、核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明を発表した。日本はこれまで同様の声明への賛同を拒んでおり、今回初めて参加した。遅まきながら、一歩前進したことを前向きに受け止めたい。政府はこれをきっかけに、来年4月に広島で非核保有国12カ国が参加して開く「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」外相会合などを通じて、核廃絶への動きを主導してほしい。

声明は「いかなる状況下でも核兵器が二度と使われない」ことが人類生存にとっての利益と主張する。

同様の声明は昨年5月、同10月、今年4月の3回発表されたが、日本はいずれも賛同を拒否した。日本は「唯一の被爆国」でありながら、「核の傘」と呼ばれる米国の核抑止力に依存し、安全保障政策との整合性が取れないという理由だ。

4月の声明では「核兵器の非合法化」の文言が削られたこともあって、賛同国は80カ国に拡大したが、日本は加わらず国内外から批判を浴びた。長崎市の田上富久市長は平和宣言で政府の対応を酷評し「被爆国としての原点に返る」よう求めた。

今回、賛同に転じたのは「核軍縮に向けた全てのアプローチや取り組みを支持」との修正が受け入れられたためだ。政府は「核抑止力に頼りながら段階的に核軍縮を進める日本の政策と矛盾しない」と説明する。

しかし、ここまでの日本政府の対応はいかにも鈍い。

国際社会ではここ数年、核兵器の非人道性に着目して、核兵器の使用を禁止しようという有志国の動きが力を増している。オバマ米政権も核兵器の役割の低減を目指している。

日本は核兵器の段階的削減を目指す核廃絶決議を国連に毎年、提出するなど努力はしているが、核兵器禁止条約の制定につながるような有志国の動きに警戒感が強い。米国の核抑止力に依存するあまり、今やこうした動きのブレーキ役になっているという厳しい見方もある。

北朝鮮の核開発や中国の軍拡など日本を取りまく安全保障環境は厳しい。今回、日本はオーストラリアや北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとともに、18カ国による、同じタイトルのもう一つの声明にも賛同した。声明は安全保障論議の必要性などを強調している。日本やNATO諸国の立場の難しさを象徴した動きだ。

しかし「核の傘」に依存していても、日本がやれることはあるはずだ。世界の核廃絶の動きを具体的に主導するために何ができるのか。参加に恥じないよう、民間有識者らの知恵も借りながら、政府や国会での議論を深めてもらいたい。

読売新聞 2013年10月23日

「核不使用」賛同 抑止力維持しつつ軍縮進めよ

唯一の被爆国として、「核兵器のない世界」の実現を訴えていくのは日本の当然の責務だ。同時に、米国の「核の傘」で安全保障を担保する現実も忘れてはなるまい。

国連総会第1委員会で、「核兵器の不使用」を訴える共同声明が発表され、日本が124か国とともに賛同した。

同様の共同声明は昨年5月以降、計3回発表されたが、日本が加わったのは初めてである。

これまで日本が賛同しなかった主な理由は、「いかなる状況においても」核兵器を使用しないという文言があったためだ。米国の核使用を否定すれば、米国の核抑止力に頼る日本の安保政策と整合性が取れないとの判断があった。

今回の声明でもこの表現は残ったが、日本の要請で「核軍縮に向けたすべてのアプローチ」を支持するとの新たな文言が入った。

政府は、「アプローチ」には、「核の傘」の下で段階的な核軍縮を核保有国に促すという日本の政策も含まれると解釈し、矛盾は生じないとしている。

原爆の惨禍を経験した非核保有国の日本が声明への不賛同を続ければ、核軍縮に及び腰だと見られかねなかった。文言を調整した上で賛同したのは妥当である。

来年4月には広島で非核保有国12か国の「軍縮・不拡散イニシアチブ」外相会合も開かれる。日本は存在感を示すべきだ。

ただ、現実は厳しい。世界には依然1万7000発を上回る核弾頭が存在する。米露は削減方向に動いているが、中国は250発まで増強してきているとされる。

今年2月に3度目の核実験を行った北朝鮮は、核開発を続行しているとみられる。日本への核の脅威は増しているといえよう。

核を持たない日本が、核攻撃を阻止するには、日米同盟の強化を通じ、米国の核抑止力の信頼性を確実に維持していくしかない。

オバマ米大統領は、世界的な核削減を主張しつつ、日本への「核の傘」を堅持する姿勢を変えていない。今月初めの外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも、その方針が改めて確認された。

米国や関係国とともに、北朝鮮に働きかけ、核開発を阻止するための対話の枠組みを再構築する外交努力も必要である。

北朝鮮のように核開発に走る国が相次ぎ、核拡散防止条約(NPT)体制は揺らいでいる。核不拡散で日本の役割の重要性は増しこそすれ、減ることはない。

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