竹富町の教科書 違法状態の解消迫る是正要求

毎日新聞 2013年10月19日

教科書是正要求 現場に根差す採択制を

残念な「初例」になった。

中学の公民教科書をめぐり、沖縄県八重山採択地区の竹富町教育委員会が地区協議会で決定したものとは異なる教科書を使っている問題で、下村博文文部科学相が沖縄県教委に対し、竹富町教委へ是正要求するよう指示した。

地方自治法に基づく措置だが、教育行政では前例がない。

複数の市町村で構成する義務教育教科書の採択地区の場合、教科書は協議会で決定したものに統一する。教科書無償措置法が定める。

2012年度から使用する公民について、竹富のほか石垣市、与那国町で構成する八重山地区協は保守色が強いとされる育鵬(いくほう)社版の教科書を採択したが、竹富は拒み、独自に東京書籍版を使うことにした。

根拠としたのは、教委に採択権を認めた地方教育行政法である。

文科省はこの2法は一体的に矛盾なく運用されるものとしているが、明快ではなく、下村文科相は法改正も考えるという。

こうした法の不備に今回の混乱の一因があったというべきだが、それだけが本質的な問題ではない。

国定教科書が廃止され、検定制度に移った戦後、学校ごとなどに教科書が選ばれた時期もある。だが、学校や地域によっては教員への負担が大きく、十分な調査研究ができない▽教科書会社の売り込みが個別に激しくなり、寡占化を生みかねない▽非効率的である−−などを理由に、1963年の教科書無償化とともに現行のように共同採択(広域採択)制が取り入れられた。

これを見直すべきだという意見は少なくない。例えば、96年、政府の行政改革委員会は規制緩和の一環として教科書採択制度の改善を提言している。

それによると、基本は各学校の教育課程にふさわしい教科書を学校自ら採択することであり、必要があれば共同研究をする仕組みを工夫することで問題は解決される。

また、採択の形態と業者の過剰な売り込みに直接関連はなく、不公正への対処はできる。寡占化の懸念も、むしろ採択の広域化が原因になるという指摘もある。言い換えれば、広域採択の理由とされてきたものが、必ずしも合理的ではないということだ。

主たる教材である教科書は、学校の個性的で多様な教育に、よりマッチしたものを現場の目で選ぶべきだという考え方が底にある。

法を改めて「再発防止」を図るよりも、それぞれの現場に根差した採択のあり方を熟慮、熟議する契機とすべきではないか。

今回の措置に伴う協議でも、実りある論議が広がることを望む。

読売新聞 2013年10月19日

竹富町の教科書 違法状態の解消迫る是正要求

違法状態を解消するためには、当然の措置と言えよう。

下村文部科学相が、沖縄県の竹富町教育委員会に対して是正要求を行うよう県教委に指示した。竹富町教委が教科書採択のルールを守らずに、独自採択した教科書を使用し続けているためだ。

是正要求の指示は地方自治法上で最も強い措置である。発動は過去に2例しかなく、教育行政では初めてだ。竹富町教委は重く受け止めねばならない。

今回の問題は、八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)が2011年夏、中学校の公民教科書に育鵬社の教科書を選んだにもかかわらず、竹富町教委だけが別の教科書を採択したことが発端だ。

「新しい歴史教科書をつくる会」の元メンバーらが執筆する育鵬社版は、領土に関する記述が詳しい。中国との緊張が高まる中、国境に近い八重山地区が育鵬社版を選んだ理由の一つだ。

一方で、国旗・国歌や日本の伝統文化にもページを割いている育鵬社版に対しては、沖縄県内で反発がある。竹富町教委が採択を拒んだ背景には、こうした事情があるのだろう。

国費による教科書の無償配布を定めた教科書無償措置法は、複数の市町村からなる広域地区では、同じ教科書の採択を義務づけている。教師が教材の共同研究をしやすい点などを考慮している。

竹富町教委の独自採択が、無償措置法に反するのは明らかだ。

混乱を長引かせたのは、民主党政権の誤った対応である。当時の中川文科相は「独自採択は法律に抵触する」という立場をとりながら、竹富町が自前で教科書を購入し、生徒に配ることについては、容認する姿勢を示した。

その結果、竹富町では町民らの寄付で別の教科書を購入し、昨年4月以降、生徒に配布してきた。政権交代後の今年3月に、当時の義家弘介文科政務官が竹富町を訪れ、決定を見直すよう指導したが、聞き入れられなかった。

無償配布を受けず、違法状態のまま、義務教育の授業を行っているのは極めて問題である。

竹富町教委を指導すべき立場にある沖縄県教委が、十分な働きかけをしてこなかったことも見過ごせない。混乱の収束に向け、県教委は、竹富町教委に法令を順守させるという本来の役割を果たさなければなるまい。

竹富町のような事態が再び起きないよう、文科省も改めて採択ルールの徹底を図るべきだ。

大門武司 - 2013/10/20 00:30
毎日新聞の社説が妥当に思える 読売新聞は特定の政党に肩入れしていて 新聞社として 公平性に著しく反している。
教科書問題は将来の日本の教育理念の流れを作るものになると思える 今後 国民や国会で大いに議論して 次の世代に恥ずかしくない 
教育の環境を残さないといけないと 形にばかり こだわる 政治家・役人 江戸時代の侍や殿様気分ですか?
心のない教育に明日はない 押し付けの教育ができるほで 国民は無知ではない。
この社説へのコメントをどうぞ。
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