靖国と首相 参拝見送りは妥当だ

朝日新聞 2013年10月19日

戦没者追悼 新たなあり方さぐる時

安倍首相が、靖国神社の秋の例大祭での参拝を見送った。外交への悪影響や、台風26号の被災者の救出活動がなお続いていることを考慮したという。妥当な判断だ。

一方、きのうまでに新藤総務相や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の157人が参拝した。首相自身は就任後は控えているが、閣僚らの参拝は定着しつつある。

首相や閣僚が靖国に行くかどうか。例大祭や終戦の日のたびに内外から注目されるのは、やはり異様なことだ。

首相は在任中の参拝に、なお意欲を示しているという。だが、その意欲はむしろ、多くの国民が心静かに思いを捧げることができ、外交的な摩擦を招くことがないような、新たな戦没者追悼のあり方を考えることに注げないだろうか。

首相をはじめ政治指導者の靖国参拝には、賛成することはできない。

靖国神社は、亡くなった軍人や軍属らを「神」としてまつった国家神道の中心施設だった。戦後は宗教法人として再出発したが、A級戦犯14人を合祀(ごうし)したことで、戦争責任の否定につながる政治性を帯びた。

指導者が詣でれば、政教分離の原則に反する疑いが生じるとともに、靖国神社の歴史観を肯定したと受け取られる。戦場で命を奪われた犠牲者を偲(しの)ぶ遺族らの参拝とは、おのずと性格が異なるのだ。

先ごろ来日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、米国の閣僚として初めて千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花した。

墓苑は海外での無名戦没者約36万柱が眠る国の施設だ。1959年の創建時、「全ての戦没者を象徴する施設に」との構想もあったが、靖国の価値を損なうとの反発を受けた。こうした経緯から、外国政府の高官はほとんど訪れたことがない。

ケリー氏らの意図は定かでないが、海外の要人が訪れる追悼の場として、ひとつの可能性を示したのは確かだろう。

2001年から靖国参拝を繰り返した小泉元首相の在任中、新たな国立追悼施設の建設や千鳥ケ淵の拡充が議論された。だが自民党内外の反発は根強く、議論は沙汰やみになった。

それでも、02年に政府の懇談会が出した「新たな施設をつくり、21世紀の日本は国家として平和への誓いを内外へ発信すべきだ」との報告には、いまなお意義がある。

戦後70年も近い。もう一度、当時の検討を再起動させるべきではないか。

毎日新聞 2013年10月18日

靖国と首相 参拝見送りは妥当だ

安倍晋三首相は、靖国神社の秋季例大祭に合わせた参拝を見送り、供え物の真榊(まさかき)を神社に奉納した。最近の中国、韓国との外交関係悪化の一因が、安倍首相の歴史認識にあることを考えれば、参拝見送りは妥当な判断だ。首相は今後も見送りを継続し、靖国問題の抜本解決に取り組んでほしい。

誰もがわだかまりなく戦没者を慰霊できるようにしたいとの思いは、私たちも共有する。だが、靖国は単に戦没者を祭った神社ではない。

靖国神社は1978年に東条英機元首相らA級戦犯14人を合祀(ごうし)した。A級戦犯は、第二次大戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)で、侵略戦争を行った「平和に対する罪」で有罪になった日本の政治・軍事指導者だ。靖国が合祀した背景には、東京裁判を否定する思惑があったことが、関係者の証言などから明らかになっている。

こうした神社への首相参拝は、中国からは「侵略戦争の肯定」と見なされ、米国からは日本が東京裁判を受諾したサンフランシスコ講和条約とそれに基づく米国主導の戦後体制への挑戦と受け取られかねない。

72年の日中国交正常化で、中国は日本に対する戦争賠償の請求を放棄したが、その前提には、戦争責任は日本の一部の軍国主義者にあり、一般の日本国民と区別するという考え方があった。そういう日中関係の経緯も踏まえる必要がある。

だが、首相はかねて、前回の首相在任中に靖国に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と語っている。今回は中韓との関係改善や、両国との関係改善を求める米国の意向に配慮して、参拝を見送ったのだろうが、状況が許せば首相在任中になお参拝を模索すると見られている。

春と秋の例大祭や終戦記念日に首相が靖国を参拝するかどうかで国論を二分する騒ぎは、終わりにすべきだ。安倍首相が長期政権を目指すというのなら、A級戦犯の分祀や国立追悼施設の建設案など抜本的な解決策を真剣に検討してもらいたい。

また今回の参拝見送りを、中韓両国との関係改善にぜひ生かしたい。

首相は両国との首脳会談が一度も実現していないことについて「対話のドアは常にオープンだ」と語る。その一方で、訪米中の講演では「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであればどうぞ」と開き直るような発言をした。これでは両国から関係改善の意思を疑われても仕方ない。

中韓両国にも参拝見送りを前向きに受け止めるよう求めたい。靖国問題を利用してナショナリズムをあおるような言動は慎むべきだ。お互いに大局を見すえ、関係を再構築してもらいたい。

読売新聞 2013年10月21日

靖国参拝見送り 的外れな中韓両国の対日批判

安倍首相は、靖国神社の秋季例大祭中の参拝を見送り、神前へ()(さかき)を奉納するにとどめた。

春季例大祭と終戦記念日に続いて、今回も参拝を見送ったのは、中国、韓国との関係がさらに悪化する事態を避けるのが目的だ。

中韓両国は、極東国際軍事裁判(東京裁判)で処刑された東条英機元首相ら「A級戦犯」が合祀(ごうし)されている靖国神社を軍国主義の象徴とみなして、首相や閣僚の参拝に反対している。

もとより、戦没者をどう追悼するかは、国内問題であり、他国から干渉される筋合いではない。

だが、外交問題化している以上、首相の判断は妥当だろう。

靖国神社に参拝することへの首相の意欲は強いとされる。なお慎重な対応が求められる。

残念なのは、中韓両国に、首相の参拝見送りを前向きに受け止める姿勢が見られないことだ。

中国外務省は、首相の真榊奉納について「いつ、いかなる方式で参拝しようとも反対する」と述べ、事実上の参拝と見なす考えを示した。韓国外交省も「深い憂慮と遺憾の意」を表明した。

日本は戦後一貫して平和国家として歩み、国際社会にも貢献してきた。中韓両国は、そのことに目をつむっているのではないか。

中韓の指導者が、安倍政権の政治姿勢を「右傾化」と批判するのは、反日世論を利用し、自らの求心力を維持する狙いもあろう。

しかし、的外れな対日批判をエスカレートさせた結果、日本から中国への投資が落ち込み、中国経済への悪影響も広がっている。

安倍首相は、首脳会談の開催を繰り返し呼びかけている。中韓首脳はこれに応じ、事態打開に動くべきだ。「互損」から「互恵」へ転換を図らねばならない。

今回の参拝見送りの背景には、日中・日韓の対立を懸念する米国に配慮した側面もある。

今月初旬に来日した米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花した。無宗教の国立施設である墓苑は、先の大戦の戦没者のうち、身元不明などで引き渡し先のない遺骨を納めている。

千鳥ヶ淵訪問は、靖国神社参拝について慎重な対応を求めるメッセージとも見られている。

戦没者の慰霊をどう考えるかは、日本国内にも様々な意見がある。戦争指導者への批判も根強い。だれもが、わだかまりなく戦没者を追悼できる国立施設の建立について議論を深めるべきだ。

産経新聞 2013年10月19日

靖国神社 やはり首相は直接参拝を

安倍晋三首相は靖国神社の秋の例大祭に「真榊(まさかき)」を奉納した。

春の例大祭に続いて今年2度目となる。真榊奉納は戦死者らの霊に哀悼の意をささげる重要な行為だが、やはり首相自身が直接、靖国神社に参拝してほしい。

安倍首相は「どこかのタイミングで参拝することは決めている」と周囲に話している。17日から始まった例大祭は20日まで行われている。秋の例大祭は4月の春の例大祭、8月15日の終戦の日に続く3度目の節目にあたり、首相が参拝する大きなチャンスだ。仮に例大祭でなくても首相はいつでも機会をとらえて靖国神社に参拝してほしいと、多くの遺族や国民は願っている。

毎年1回、計6回の靖国参拝を実行した小泉純一郎元首相は例大祭や終戦の日以外に、元日や平日の1月14日を参拝日に選んだ。

小泉政権の後、首相の靖国参拝が途絶えているのは、極めて残念なことだ。安倍首相は第1次政権時に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と重ねて悔いている。第2次政権で首相が靖国参拝を果たすことは、第1次政権時からの大切な宿題の一つともいえる。

繰り返すまでもないが、首相が国民を代表して、靖国神社にまつられている戦死者の霊に尊崇の念を表することは、国の指導者として当然の務めである。国を守る観点からも、必要なことだ。

首相周辺では、首相の靖国参拝に反対する中国や韓国への配慮に加え、日中、日韓関係の改善を求める米国の反応を心配する空気も強いといわれる。しかし、首相が第一に考えるべきことは、外国の思惑より、国民および戦死者らとその遺族ではないか。

今回、安倍首相の真榊奉納に対しても、韓国は「深い憂慮と遺憾を表明せざるを得ない」と批判する論評を出し、中国は「侵略の歴史を正視、反省し、適切に問題を処理する」よう求めた。日本は中韓の内政干渉に抗議すべきだ。

閣僚では、新藤義孝総務相が秋の例大祭に参拝した。古屋圭司拉致問題担当相も例大祭の期間中に参拝する意向だ。また、平成に入ってから最多の国会議員157人が参拝した。内閣からも、加藤勝信官房副長官や西川京子文部科学副大臣らが参拝した。

多くの政治家が普通に靖国神社に詣でる以前のような光景が戻りつつあることは、歓迎したい。

大門武司 - 2013/10/20 00:56
① 安倍総理が行くのが妥当か判断するのは 本人の決めることだとおみます。
② 安倍総理は前内閣の時 訪問できなかったことを後悔してると 公で述べているなら 参拝すべきだ。
③ 安倍総理は立場が変わると 言ったことと 行うことが 変わるのはおかしい。
④ 靖国神社の英霊は日本の平和 残った 国民の幸せを願っていると思います 政治家が集団で参拝することが 英霊にこたえることでないと思う
  社説は各社の特徴が出てよかったと思います。
  私の父も戦争に参加し戦後の生き残りですが 靖国で会おうと戦友といつも言ってたと話してました 靖国は神社です静かにみんな参拝ください
  集団で参拝するところではない 一人で行けないなら 行くな。
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