伊豆大島の災害 命を守る策尽くしたか

毎日新聞 2013年10月17日

伊豆大島の災害 命を守る策尽くしたか

台風26号による集中豪雨に見舞われた東京都大島町(伊豆大島)で、土石流などによって多数の死者・行方不明者が出ている。

広域にわたって洪水や土砂災害が発生し、多くの家屋が押しつぶされた。警察や自衛隊などによる捜索・救助活動に全力を挙げてほしい。

なぜ大切な命を救えずに大きな被害を生んでしまったのか。徹底的な検証が今後、必要だ。

大島町の1時間雨量は観測史上最大の122.5ミリに達し、16日午前11時までの24時間雨量は800ミリを超えた。想像を絶する雨量だ。

気象庁は8月30日から特別警報の運用を始めた。50年に1度の気象災害の発生が予想される時に出されるもので、ただちに命を守る行動をとるよう住民に呼びかける。

気象庁がホームページで示した市町村ごとの「50年に1度の雨量」によると、大島町は「48時間雨量で419ミリ」だ。だが、特別警報は出なかった。気象庁によると、特別警報の発令は、予想される災害が「都府県単位の広がり」として発生することを基本としているため、今回は対象にならなかったという。

差し迫った災害の危険性と避難の必要性をわかりやすく伝えるために始まった特別警報だ。きめ細かい対応が望ましいのは言うまでもない。今回のケースを教訓に、発令のあり方を検討し直すべきだ。

もちろん、警報の有無に関わらず、早めの避難を心がけるのは防災上、もっとも重要なことだ。その最前線に立つのが市町村だ。

大島町では災害時、避難勧告や指示を出さなかった。風雨が強く、避難は危険との判断があったようだ。確かに外出が危険な時は、家にとどまる判断もあり得る。だが、過去10年で最大級の勢力の台風だと事前に繰り返し報道されていた。現地は火山灰が堆積(たいせき)する地質だ。土砂崩れの危険性も考慮すれば、もっと早く避難ができたのではと悔やまれる。

当時、トップの町長は出張で不在だった。そうした場合でも役所としての危機管理が適切に行われる体制が当然求められる。台風が頻繁に通過する地域だ。ハザードマップ作りなど日ごろの備えは十分だったのか。都との連携が機能していたのかも含め、自治体の対応は最大の検証対象だ。

中央防災会議の防災対策推進検討会議は昨年、東日本大震災を踏まえ、防災対策の方策をとりまとめた。

その中で、防災に当たっては「楽観」を避け、より厳しい事態を想定すべきだとうたう。また、災害対応は、「人の命を救う」ことをはじめとして、「時間との競争」であることを意識すべきだとしている。今回の大災害の教訓でもある。

読売新聞 2013年10月18日

伊豆大島災害 なぜ避難を促さなかったのか

大惨事を防ぐ手だてはなかったのか。

台風26号に伴う豪雨で伊豆大島の集落が土石流に襲われた。死者22人、行方不明者も多数に上っている。警視庁などは不明者の救出に全力を挙げてほしい。

10年に1度とされる強い台風が日本の南海上を北上中の15日夕、気象庁は大雨警報と土砂災害警戒情報を東京都大島町に出した。

土砂災害警戒情報は市町村が避難勧告や避難指示を発令する際の参考情報と位置付けられるが、町は発令しなかった。「夜間で大雨の中、被害者を増やす恐れがあった」というのが町長の説明だ。

雨量は16日午前0時過ぎから急増した。未明の3時間雨量は国内統計史上2番目の数値を観測し、その頃、土石流が発生した。

確かに、暴風雨の中での避難は難しかったろう。だが、警戒情報が出た前日のうちに避難を呼びかけることはできなかったのか。

進路予想がある程度正確な台風の場合、津波や竜巻などに比べて事前の避難には時間的余裕があるだろう。町は危険を察知し、適切な対応を取るべきだった。

町長と副町長が出張で不在だったことが、町の意思決定に影響を及ぼした可能性もある。

伊豆大島では、1958年の狩野川台風で104棟が全半壊し、18人が死傷するなど、度々、土石流が発生している。過去の教訓が生かされなかったのは残念だ。

気象庁は今回、最大級の危険に対して警戒を呼びかけるために導入した特別警報を発しなかった。府県のほぼ全域など、広い範囲で危険が迫っているという基準を満たさなかったからだ。

この基準では、離島の災害は特別警報の対象から外れるケースが多くなる。局所的な危険に対し、同レベルの注意喚起ができるよう基準の見直しを検討すべきだ。

土砂災害防止法上、都道府県は危険地域を警戒区域などに指定することになっている。指定されると、市町村は避難場所などを明示したハザードマップを作成・公表する責任を負う。

しかし、都は島嶼(とうしょ)部での指定に着手しておらず、大島町は土砂災害を想定したハザードマップを作成していなかった。

警戒区域などの指定は全国的にも遅れている。「指定されると不動産価値が下がる」といった住民の反対などが背景にある。各自治体は住民の理解を得るよう努めなければならない。

伊豆大島の惨事は、災害列島に暮らす国民への警鐘でもある。

産経新聞 2013年10月18日

伊豆大島の土石流 何が深刻な被害招いたか

台風26号による豪雨で大規模な土石流が発生した伊豆大島では、自衛隊や警察・消防が懸命の捜索・救助活動を続けている。厳しい状況だが、一人でも多くの人の無事を祈りたい。

温暖化による気候変動で極端な気象が地球規模で多発する傾向にある。日本列島でも記録的な猛暑や豪雨、竜巻などの災害が相次いでいる。

伊豆大島の土石流災害から、経験則が通用しないほどの自然の猛威に対し、どう備えたら良いのかを学ぶことが必要だ。住民の命を守る上で何が重要だったのか。しっかり検証しておきたい。

伊豆大島を襲った豪雨は想像をはるかに超える激しさだった。ピーク時の1時間雨量は122・5ミリに達し、24時間雨量は800ミリを超えた。東京の半年分の雨が1日で落ちてきたのである。

土石流から命を守る方法は、事前の避難しかない。気象庁は15日午後5時38分に大雨警報、午後6時5分に土砂災害警戒情報を発表した。大島町は「風雨が強まる中で、夜の避難は危険が大きい」と判断し、避難勧告や指示を出さなかった。午後8時49分には竜巻注意情報も出た。確かに、安全に避難できる状況ではない。

大島町が住民に避難を促すとすれば、15日夕までに決断するしかなかっただろう。ただ、この段階では災害の種類や発生場所を、具体的に想定できるわけではない。自治体としては、難しい判断を迫られるケースだったろう。このとき、町長と副町長がともに不在だったのは遺憾というしかない。

気象庁が8月末から運用を開始した「特別警報」は、今回は発表されなかった。「府県程度の広がり」という基準が、島嶼(とうしょ)部では満たされないためだ。気象庁は東京都と大島町に「特別警報級の防災対応を」と電話で要請したが、島嶼部での特別警報の運用は再検討する必要があろう。

特別警報は避難行動の目安ではないことも、改めて強調しておきたい。気象庁が「記録的短時間大雨情報」を出したのは16日午前2時半過ぎである。特別警報を同時に発表したとしても、避難誘導を始めるには遅すぎる。

火山島である伊豆大島と同じように、噴火堆積物に覆われた地域は、列島各地にある。記録破りの豪雨を想定して、これまでの防災対策を検証すべきだろう。

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