米国議会の与野党が歩み寄り、政府が債務不履行(デフォルト)に陥るという最悪の事態は土壇場で回避された。
世界経済の最大の不安材料が解消したことは朗報だが、危機再燃の火種は残った。先行きは波乱含みと言えよう。
上下両院は16・7兆ドル(約1640兆円)の法定上限に達している連邦債務上限を来年2月初めまで引き上げる法案を可決した。オバマ大統領の署名で成立した。
上限を引き上げないと政府は新規国債を発行できない。資金不足で国債の返済や利払いも不能となるデフォルトの期限が17日に迫っていた寸前の決着だった。
新年度予算が成立せず、10月1日から政府機能の一部が停止した異常事態についても、与野党は1月半ばまでの暫定予算の編成で一致した。予算成立後、政府機関の閉鎖がただちに解除された。
ニューヨーク株価は大幅に上昇した。米国財政の信認を失墜させる二つの難題が同時に解決したことを好感したのだろう。
今回の大混乱は、来秋の中間選挙の前哨戦として、与野党が激突したために起きたものだ。
大統領は、内政の最重要課題として3年前に成立させた医療保険制度改革法(オバマケア)に沿って、具体的な政策を推進する方針を明確にしている。
野党・共和党の強硬派はこれに反発し、オバマケアを盛り込んだ予算成立を阻止したうえ、債務上限引き上げにも抵抗してきた。
だが、不毛な党派対立や自説を曲げない一部共和党議員への米国民の批判は根強い。国際通貨基金(IMF)や日本なども米国に警告し、収束を促した。
妥協が成立した背景には、共和党が強硬路線を修正せざるを得なかった事情がうかがえる。国内外の圧力に加えて、世論が大統領の追い風になった。
ただし、与野党の根本的な隔たりは解消されていない。むしろ対立が先鋭化する傾向にある。
巨額の財政赤字削減を目指し、「小さな政府」を掲げて歳出拡大に反対する共和党と、社会保障の充実を重視する与党・民主党の主張は基本的に異なるからだ。
上下両院で多数派が異なる「ねじれ」が生じ、合意形成が一層難しくなっている。来年、暫定予算切れや債務上限に達する際、対立が深まることに要警戒だ。
超党派で財政赤字削減策を協議する展望も不透明だ。政治の機能不全により、世界を何度も混乱させる米国の責任は重大である。
この記事へのコメントはありません。