順当な人選で市場に安堵感が広がっているが、前途は多難だ。異例の金融緩和策を縮小する「出口戦略」に向け、新議長の手腕が問われよう。
オバマ米大統領は、来年1月末に任期が切れる米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の後任として、イエレン副議長を指名した。
議会上院の承認を得た後、2月に就任する。FRB100年の歴史で初めての女性議長だ。
大統領は記者会見で、「雇用が最重要課題であることを踏まえると適任だ」と述べた。
イエレン氏は失業問題を専門とする経済学者で、リーマン・ショック後の大胆な金融緩和策を主導したバーナンキ氏を支えてきた。バーナンキ路線を継承し、大きな政策変更はないとみられる。
大統領は、議長交代に伴う市場の混乱を回避し、金融政策の安定を図るうえで、副議長の昇格が最善と判断したのだろう。
議会の与野党対立で新年度予算が成立せず、政府機能の一部停止に追い込まれている。連邦債務上限が引き上げられないと、債務不履行(デフォルト)に陥る財政危機も現実味を帯びる。
新議長を速やかに指名することで、市場の不透明感を払拭する狙いもあったと言えよう。
イエレン氏は記者会見で、深刻な失業問題に言及し、雇用拡大に全力を挙げる姿勢を示した。
株式や金融市場が好感しているのは、成長と雇用を重視し、金融緩和に積極的な「ハト派」のイエレン氏への期待の表れだ。
FRBは、米国債などを毎月850億ドル(約8・4兆円)購入する量的緩和第3弾(QE3)を昨年9月から続けている。
だが、QE3を恒久的に継続することはできず、いずれ政策を正常化する舵取りが求められる。焦点は、購入ペースをいつから縮小し、緩和策を終了させるかだ。
FRBは先月に縮小を見送ったばかりで、縮小開始は12月が有力視される。雇用改善や景気回復ペースが緩慢な場合、開始時期が越年するとの観測もくすぶる。
拙速に出口戦略に踏み出せば、景気を腰折れさせかねない。逆にタイミングが遅れると、資産バブルなど副作用も懸念される。
「市場との対話」を工夫しながら、QE3終了へ、いかに軟着陸を図るか。難しい局面である。
米国経済の変調が、日本や新興国など世界の景気に悪影響を及ぼすことにも警戒しなければならない。女性議長の責任は重い。
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