またも悲惨なストーカー殺人が起きた。
最悪の事態を防げなかったのか。警察は徹底検証せねばならない。
東京都三鷹市で私立高校3年の女子生徒が8日に刺殺され、京都市在住の元交際相手の男が逮捕された。
女子生徒は、かつて付き合っていた男との交際を拒んでいた。6月からは電話やメールの着信も拒否していた。だが、今月に入り、自宅付近に男が姿を見せたため、担任教諭が4日、高校に近い警視庁杉並署に対処法を相談した。
問題なのは、被害内容を詳しく聞き取らなかった杉並署の対応だ。女子生徒宅を管轄する三鷹署への相談を勧めただけだった。女子生徒は4日後、三鷹署に相談したが、その日に殺害された。
杉並署は、管轄外で起きた事案への当事者意識を持てなかったのではないか。即座に三鷹署に連絡していたら、展開は違っていた可能性もある。
三鷹署の対応も十分だったのだろうか。女子生徒の相談を受けてから、事件発生までの半日間、担当者が1人で対処した。
ストーカー事件は急展開しやすいという危機感を持ち、女子生徒宅の周辺をパトロールするなど、手厚い態勢を取っていれば、事件を防ぐ余地もあっただろう。
2年前に長崎県で起きたストーカー事件では、千葉、長崎、三重の3県警が情報を共有せず、相談をたらい回しにした結果、被害女性の家族2人が殺害された。
複数の県警が絡んで対処が遅れた苦い経験から、警察庁は、迅速な対応や被害者保護の徹底を全国の警察に指示した。
ストーカー規制法も、被害者の居住地以外の警察や公安委員会でも警告・禁止命令を出せるように改正され、今月3日に施行されたばかりだった。
しかし、長崎の事件を教訓にしたこうした対策の趣旨は生かされなかった。それどころか、今回は都内の警察署同士でさえ速やかに連携できなかった。
招いた結果の重大性を警視庁は深刻に受け止めねばならない。
ストーカー被害は増加傾向にある。警察が昨年1年間に把握しただけでも2万件近くに上る。警察の職務の中で、ストーカー対策は重要性を増している。
大半の加害者は警察の介入でつきまといなどをやめるという。
いかにして加害者に接触し、被害者を保護するか。全国の警察が事例を持ち寄り、対処方法を練り上げてもらいたい。
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