みずほ改善命令 今度こそ変わらねば

毎日新聞 2013年10月03日

みずほ改善命令 今度こそ変わらねば

まだあったのか。そう思わずにいられない、みずほ銀行による反社会的勢力との取引発覚である。信販会社を通じて行った融資の中に、暴力団員向けの契約が230件もあったことが金融庁の検査でわかり、業務改善命令を受けたのだ。総額約2億円と他行にみない規模だった。

信用第一の銀行で、預金者の資金が一部とはいえ暴力団員に渡ったのだ。いまだに経営責任者が説明の記者会見も開かないのは理解し難い。

融資は、自動車ローンなどを扱うグループ内信販会社と提携したタイプだった。資金を貸すのは銀行だが、借り手の返済能力などを直接審査するのは信販会社だ。信販会社の保証付きなので、万一焦げ付いても銀行に損が及ばない仕組みである。

それ自体に問題はないが、みずほ銀の場合、借り手が反社会的勢力であるか否かをチェックする体制が整っていなかった。チェックに必要な情報を銀行側が持ち合わせていながら、それを活用することなく、融資を実行していたという。融資後に、行内チェックで暴力団員との取引を発見したが、契約を解消する措置までは取らなかった。

金融庁が重くみたのは、こうした反社会的勢力との取引が多数存在したにもかかわらず、金融庁に指摘されるまで、2年以上も組織として対策を講じなかった点だ。情報が担当役員レベルで止まり、経営の問題に上ることなく放置されていた。

反社会的勢力との関係では、みずほの前身の一つ、旧第一勧業銀行の役員経験者らが総会屋への利益供与事件で有罪判決を受けている。総会屋と金融機関との関係は社会問題にもなり、金融機関は反社会的勢力との関係根絶を決意したはずだった。

さらに暴力団については、社会のあらゆる場面で取引を徹底排除しようという動きが広がっているところである。反社会的勢力と絶対にかかわらないという意識が、みずほの組織内に浸透していたとは言い難い。

問題の中身は異なるとはいえ、2度の大規模なシステム障害、顧客情報の暴力団への流出など、みずほフィナンシャルグループ(FG)関係のトラブルや不祥事がなくならない。第一勧業、富士、日本興業の3行が経営統合して誕生した組織だが、出身母体ごとの心理的垣根が情報の共有を阻んだり、問題解決を遅らせたりすることはなかったのか。

前身の持ち株会社発足から13年になる今年、みずほFGは、傘下の2銀行をようやく一つに統合した。遅れた一体化を進めるためにも、まず今回の問題を徹底的に洗い出し、公表することだ。形だけの処分でやりすごそうとすれば、再び問題を起こし、信用を一層失うだけである。

読売新聞 2013年10月05日

暴力団融資 みずほの企業統治が問われる

メガバンクとしての責任感を欠く場当たり的な対応だ。緩んだ組織のタガを、早急に締め直さねばならない。

みずほ銀行が、系列信販会社・オリエントコーポレーションなどを通じ、多数の暴力団員らに融資していたとして、金融庁から業務改善命令を受けた。

これらの融資は、銀行と信販会社との提携ローンで行われていた。取引は230件、融資額は計2億円超にのぼるという。

経済界の取り組む暴力団排除の動きに逆行し、多額の融資をしていたのは論外である。

みずほ銀は4日、記者会見を開き、岡部俊胤副頭取が陳謝した。改善命令から記者会見まで1週間もかかったのは、理解に苦しむ。佐藤康博頭取が自ら、不祥事の理由などを説明すべきだった。

傷ついた信頼の回復へ、みずほ銀は厳しい社内処分で責任を明確化し、原因解明と再発防止策を徹底する必要がある。

問題になった提携ローンは、信販会社の融資審査に基づき、銀行が自動車などの購入代金を貸し付ける仕組みだ。

みずほ銀は融資後の確認で、暴力団員への融資を見つけた。

ところが、契約に基づく取引解除など適切な対応を取らず、昨年12月の金融庁検査で指摘されるまで、2年間も放置した。

さらに、こうした経緯の情報は当時の副頭取ら法令順守担当の役員にとどまり、経営トップに伝わっていなかったという。ガバナンス(企業統治)に欠陥があると言わざるを得まい。

提携ローンは、みずほ以外の銀行も扱っている。今回のケースを教訓に、銀行と信販会社が暴力団関係者のリストなど信用情報を共有し、問題融資の防止に努めることが求められよう。

2000年に第一勧業、富士、日本興業の3行が経営統合して発足したみずほグループは、今年7月に1行体制の「ワンみずほ」に移行した。再スタートの出ばなをくじくつまずきだ。

旧3行意識がいまだに根強いことが、お粗末な対応の背景にあるのだろう。風通しのいい企業風土へ改革することが急務である。

第一勧銀時代に起こした総会屋への利益供与事件や、みずほグループ発足後に相次いだ大規模なシステム障害などは、社会から強い批判を浴びた。

今回の対応を見る限り、苦い経験を生かしたとは思えない。今度こそ厳しい声を真摯(しんし)に受け止め、経営改革につなげるべきだ。

産経新聞 2013年10月06日

みずほ暴力団融資 排除機運に水差す大罪だ

あまりのお粗末さに、驚きを通り越してあきれてしまう。暴力団組員らへの提携ローンを通じた融資を放置して、みずほ銀行が金融庁から業務改善命令を受けた問題で、みずほフィナンシャルグループの副社長が謝罪の会見を行った。

だが、問題の発覚から1週間を経たようやくの会見では「認識が甘かった」の言葉がむなしく繰り返されるばかりで、なぜ2年以上もの間、反社会的勢力との取引を把握しながら放置され続けてきたのか、明確な説明はなかった。

その間、全国の都道府県で暴力団排除条例が施行され、社会を挙げた反社会的勢力との戦いが続いている。金融機関、特にメガバンクには、その先頭に立ってもらわなくてはならない。

今回の問題は、金融機関の信用を失墜させ、暴力団排除の機運に水を差す、社会に対する大罪である。みずほ銀行は、まず説明責任を徹底して果たし、厳しすぎるほどの処分で真摯(しんし)な反省の姿勢を示さなくてはならない。

みずほ銀行では、融資先に暴力団組員らがいることを平成22年12月時点でコンプライアンス(法令順守)担当の副頭取(当時)が把握していた。それ以降も歴代4人の法令順守担当役員がこの問題を引き継ぎ、隠蔽(いんぺい)を続けてきた。

前身の第一勧業銀行では平成9年、総会屋への不正融資による利益供与事件が発覚し、歴代の首脳が逮捕され、専務以上が総退陣に追い込まれた。

事件は小説や映画のモデルにもなった。反社会的勢力との取引がどれだけ重大な結果をもたらすか、誰よりも知っているのが、第一勧銀の関係者であったはずではないのか。

暴力団員らへの融資を把握しながら放置してきた歴代担当役員の多くは第一勧銀の出身者だったという。そこに反省の一片もみられないことが不思議でならない。

事件の反省から全国銀行協会は「反社会的勢力との関係遮断を徹底する」との行動憲章をまとめた。憲章は、実行されなくては何の意味もなさない。

福岡県では繁華街の飲食店が「暴力団員立入禁止」の標章を掲げ、暴力団排除の戦いを続けている。脅迫電話や放火などの恐怖と戦いながらだ。メガバンクのこのていたらくは、到底、許されるものではない。

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