野口飛行士 宇宙の新時代を開く活躍を

朝日新聞 2009年12月24日

宇宙長期滞在 日本の飛躍につなげたい

野口聡一さんが、ロシアの宇宙船「ソユーズ」で国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。そこで5カ月間の活動を始める。

日本人が宇宙に長期間滞在するのは、7月まで約4カ月半滞在した若田光一さんに続いて2人目だ。

2011年に古川聡さん、12年には星出彰彦さんと、それぞれ半年間の滞在が決まっている。見上げた宇宙に日本人がいることが決して珍しくなくなったということだ。

考えてみたいのは、そうした時代になったことの意味は何か、それを日本の将来にどう生かすのか、だ。

宇宙は、科学と技術の挑戦の場であり、短期的な成果だけで判断するのはふさわしくない。しかし、ISS計画には財政難の中で毎年400億円の巨費を投じていくのだから、投資を生かし切る努力が欠かせない。

単にこれまでの延長ではなく、宇宙での活動を幅広い視野で見直す柔らかい発想を持ちたい。

ISSに実験室を持つのはアジアでは日本だけだ。それを考えれば、ISSという場を戦略的に活用する、斬新なアイデアがほしいところだ。

たとえば、アジアの人たちに使ってもらってはどうだろう。ISSでの実験にアジア枠を設けて広く公募してもいいし、アジアの若者に宇宙飛行士として参加してもらうことも考えていい。アジアの優秀な頭脳を生かし、アジアに対する日本の貢献策にもなる。双方にメリットが大きいはずだ。

一方、今回の野口さんの飛行では、古いが安定したロシアの宇宙技術が改めて注目を集めた。

何度でも使える宇宙船をめざした米国のスペースシャトルは初飛行から30年目の来年、引退する。1回の打ち上げ費用は約900億円と高価で、事故も2回あった。

これに対して、ソユーズは半世紀以上、基本的な設計が変わっていない。打ち上げ費用は1回数十億円と安いうえ、40年近く無事故だ。

今後は、こうした独特の技術思想を持つロシア、あるいはISSのパートナーでもある欧州と、互いの持ち味を生かせるような協力をもっと深めたい。日本には、ISSの実験棟「きぼう」の完成度の高さや、9月に初飛行に成功した無人輸送機HTVなどで国際的に評価された高い技術力がある。それをうまく生かしたい。

ISS後の有人活動については、オバマ米政権の方針次第だが、日本にとっては、こうした国際協力が重要なことだけは間違いない。

日本では現在、ロボットによる月探査計画の検討が進められている。国産の技術を伸ばし、日本の飛躍にもつながる、そんな大きな宇宙開発の戦略を描きたい。

毎日新聞 2009年12月22日

野口さん出発 露の発想にも学びたい

危なげのない打ち上げだった。野口聡一さんら日米露の宇宙飛行士3人を乗せたロシアの有人宇宙船「ソユーズ」は、当初の予定時刻ぴったりにカザフスタンのバイコヌール宇宙基地を飛び立った。

23日に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングし、野口さんらは5カ月間をISSで過ごす。

日本人のソユーズ搭乗は19年前の秋山豊寛さん以来2人目。今後、古川聡さん、星出彰彦さんがソユーズでISSとの間を往復する。

日本にとっては、米国とは異なる有人宇宙技術や、システム、その背景にある思想に触れるチャンスでもある。日本の有人宇宙開発を考える上で参考にできるところを吸収し、今後に役立ててほしい。

ソユーズの打ち上げは、1967年の初号機以来、これで108回目を数える。初期の事故では計4人が犠牲になったが、40年近く死亡事故を起こしていない。81年の初飛行以来、2度の事故で14人が犠牲になった米国のスペースシャトルに比べ、安定感がある。延期も少ない。

背景にある思想には学ぶべきところがある。60年代の「古い技術」を磨き上げるという考えだ。これまでに3回モデルチェンジはしているが、大きな設計変更はない。宇宙船は使い捨てだ。

飛行機をイメージして開発された再利用型のスペースシャトルは、ソユーズに比べるとメンテナンスなどのコストが高い。打ち上げ時に外部燃料タンクからはがれ落ちる断熱材が機体を傷つけるリスクもある。これが03年のコロンビア事故で現実になった。

シャトルは2010年秋の引退が決まっており、その後のISSへの人の輸送はソユーズに頼るしかない。日本は米国だけに顔を向けているわけにいかない。

有人宇宙開発の国際協力は、転換期にもさしかかる。ISSの運用は2015年までしか決まっていない。米国は、ISSの後に有人月探査、有人火星探査の構想を描くが、先行きは不透明だ。

日本は将来の有人宇宙開発で、米国だけでなく、ロシアや欧州などとどう協力していくか、よく検討しておく必要がある。その際に、単なる「お客さん」にとどまらないためには、技術力が鍵を握る。今年、技術実証機が成功した宇宙ステーション補給機「HTV」は、足がかりのひとつだ。

日本は独自の有人宇宙計画は持たないが、今年6月に策定した宇宙基本計画には、有人を視野に入れたロボットによる月探査が盛り込まれた。巨費はかかるが、本気で取り組むかどうか。これも検討を続けなくてはならない課題だ。

読売新聞 2009年12月22日

野口飛行士 宇宙の新時代を開く活躍を

日本の宇宙飛行士、野口聡一さんが、ロシアのソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーションに向けて無事、旅立った。

これから約半年間、ステーションの「住民」になる。

日本人の宇宙滞在としてはこれまでで最も長い。宇宙の国際協力で着実に使命を果たし、日本の存在感を高めてほしい。

これまでと違って、野口さんは当初から半年の滞在を予定しており、専用の個室もある。

ステーション完成は間近い。住民も、野口さんが滞在中の来春までに、今の2人から最大定員の6人まで増える。

ステーションの本格運用が始まり、世界の宇宙活動は新たな時代に入ると言ってもいい。

野口さんは、日本の宇宙実験だけでなく、ステーション運営と整備や他国の実験も支援することになる。米国が予定している睡眠薬の知覚影響を調べる実験など、体を張った協力もある。

国際協力を盛り上げる余暇、広報活動では、宇宙でスシを握るといった見せ場も計画している。大忙しになるだろうが、肩の力を抜いて乗り切ってほしい。

日本の公式の宇宙飛行士が地上との往復にソユーズ宇宙船を利用するのも、今回が初めてだ。

これまでは米国のスペースシャトルに搭乗していた。だが、ステーションが来春完成すると老朽化で退役する。米国の新宇宙船が出来るまで宇宙への足はロシア頼りで、今回はその1号だ。

ソユーズ宇宙船は、旧ソ連時代から約40年、根幹の構造を受け継ぎながら改良され、約100回打ち上げられてきた。技術の蓄積があり、安全性は高い。打ち上げコストも、約800億円の米シャトルの10分の1程度と言われる。

日本でも、有人宇宙船の開発を期待する声が高まっている。

この9月に初飛行に成功したステーションへの無人補給船(HTV)はその原型とされる。

輸送能力を比べればロシアの無人補給船の倍以上だ。米国はシャトル退役後の補給手段として利用を検討している。HTVの有人化へ向けて何が必要か、ソユーズの経験は参考になるだろう。

心配なのは、ステーションの将来計画が不透明なことだ。主要国の米国が、2015年までの利用計画しか決めていない。

宇宙利用は、事前に時間をかけて周到に準備しないとうまく行かない。ステーションの本格運用に合わせて、政府は、関係各国との将来計画の協議を急ぐべきだ。

産経新聞 2009年12月22日

野口さん出発 宇宙で増せ日本の存在感

凍(い)てつく未明の冷気を揺るがせて一条の光が中央アジアの砂漠の夜空を駆けのぼった。

日本人宇宙飛行士、野口聡一さんらを乗せたソユーズロケットが、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。

任務を持つ日本人飛行士が、ロシアのソユーズで宇宙に出るのは初めてだ。行き先は高度400キロの国際宇宙ステーション(ISS)である。

野口さんは宇宙実験などをしながら、日本人として最長となる5カ月間の長期宇宙滞在にのぞむ。来年3月には山崎直子飛行士がスペースシャトルでISSに到着することになっている。複数の日本人が一緒に宇宙で仕事をするのも初めてのことである。

「初物尽くし」で言えば、野口さんは宇宙で、初日の出を拝む。これも日本人飛行士にとっては初めての貴重な体験だ。

来年は、世界の宇宙開発史上、ひとつの転換点に位置づけられる年となる。9月に米国のスペースシャトルが30年の歴史に幕を閉じると、ソユーズが唯一の有人宇宙飛行の手段となるからである。

野口さんがソユーズ宇宙船の操縦技術を身につけていることの意義は大きい。

来年はまた、日本の宇宙開発活動が存在感を増す年でもある。今年9月に初飛行した日本の無人宇宙貨物船「HTV」は、ソユーズでは運べない大型装置をISSに届けることが可能だからだ。日本の独自技術が満載のHTVに寄せられる期待度は高い。

ソユーズロケットとソユーズ宇宙船には、日本が参考にすべき点が少なくない。システムとしては旧式だが、その分、実績を積んでいて確実性が高いのだ。少々の悪天候なら影響を受けることなく打ち上げられる。

日本の宇宙開発は、技術の熟成を待つことなく次々と先端を追いかけてきた感がある。ロシアとは対照的な路線だった。

有人宇宙飛行の検討を始めた日本は、確実性の技術を磨かねばならない。今回の打ち上げをその絶好の機会と位置づけたい。

地球温暖化防止のための国際会議(COP15)は、期待された成果を挙げられずに終わった。

宇宙には世界をひとつに結束させる視点がある。野口さんには、多国籍のISSから地球環境を守るためのメッセージも発信してもらいたい。

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