米政府一部停止 早期の混乱収拾へ妥協を探れ

読売新聞 2013年10月03日

米政府一部停止 早期の混乱収拾へ妥協を探れ

速やかに混乱を収束できるかどうか、先行きは不透明である。

米国議会の与野党対立で、新たな会計年度が始まる10月1日までに新年度予算が成立せず、政府の機能が一部停止した。

国防や空港など重要な業務は継続されているが、約80万人の連邦職員が自宅待機となり、国立博物館や国立公園などが閉鎖された。1996年以来、約17年ぶりの異常事態だ。

ニューヨーク株価が乱高下し、為替市場では円高・ドル安が進んでいる。市場は混乱を嫌気し、長期化を警戒しているのだろう。

こうした事態に至った背景には、上下両院で多数派が異なる「ねじれ議会」が生じ、政治が迷走していることがある。

与党・民主党が多数を占める上院は、オバマ大統領が最重要政策として推進している「医療保険制度改革(オバマケア)」を盛り込んだ暫定予算案を可決した。

一方、野党・共和党が多数の下院は、上院案に反発してオバマケアの実施を先送りする別の暫定予算案を可決した。上下両院の調整はつかず、膠着(こうちゃく)状態になった。

国民皆保険制度がない米国では6人に1人が無保険状態という。この改善を目指す医療保険制度改革法は、賛否が分かれた末、2010年に成立した。12年秋の大統領選でも争点になったが、オバマ氏が再選された経緯がある。

改革法に基づき政策を実施しようとする段階で、問題を蒸し返す共和党の強硬派に対し、オバマ氏が「脅しに屈しない」と公言しているのはもっともだろう。

だが、シリアへの軍事行動の是非を巡る迷走など、大統領の指導力の陰りもみられる。

懸念されるのは、与野党対立の構図が、17日が期限とされる連邦債務上限の引き上げ問題にも悪影響を及ぼしかねないことだ。

連邦債務はすでに法令で定めた16・7兆ドル(約1630兆円)の上限にほぼ達している。

議会が上限引き上げで合意しないと、政府は新規国債を発行できないうえ、国債償還・利払いも行き詰まる債務不履行(デフォルト)が現実味を帯びる。

11年夏に債務上限を巡る混乱で米国債が格下げされ、市場が動揺した二の舞いは避けたい。

米国景気の本格回復はまだ途上だ。政治の機能不全が冷や水を浴びせ、日本など世界経済に打撃を与えることに要警戒である。

与野党の責任は重い。妥協点を探り、混乱拡大を防ぐべきだ。

産経新聞 2013年10月05日

米政府機関閉鎖 政争で世界経済脅かすな

米国内政の紛糾は国内問題にとどまらず、世界の不安定要因になる。

米国2014会計年度(13年10月~14年9月)予算案の期限内成立が、与野党の対立から見送られ、一部連邦政府機関が閉鎖に追い込まれた。

長期化する恐れもあり、行政サービスの縮小などを通じ、約200万人の連邦公務員のうち最大約80万人が一時帰休となる見込みという。回復途上にある米経済を再び冷やすことになりかねない。超大国の米国は、自らの責任の重さを改めて認識すべきだ。

閉鎖が1カ月程度続けば、10~12月期の米経済成長は最大1・5%押し下げられるとの試算もある。だが、最大の懸念は、このままだと連邦債務が10月半ばに法定上限を超えることだ。

米国では国債など政府債務には法律で上限が定められている。今回も議会が上限引き上げを認めなければ、財務省は債券を発行できず手元資金が底を突く。やがて国債の利払いもできなくなれば、米国は債務不履行(デフォルト)に陥る。基軸通貨の米ドル債が一瞬にして紙くず同然になるのだ。

予算案をめぐる政治対立はそうした危険をはらむ。国内政治に他国が口を差し挟むことは基本的に慎むべきだが、最悪の結果だけは何としても避けてほしい。

最大の対立点は、オバマ政権の看板政策「国民皆保険」に向けた医療保険制度改革だ。大統領と与党・民主党は実現のための関連支出を盛り込むよう求め、共和党は歳出増になると反対している。

上院は民主党、下院は共和党が多数という「ねじれ」のもと、下院共和党の一部強硬派が改革延期を予算成立条件にして譲らず、大統領も交渉の余地なしと拒否し、妥協の見通しは立っていない。

対応に追われるオバマ大統領は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)と東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連首脳会議出席に伴う東南アジア4カ国歴訪の中止を余儀なくされた。

オバマ大統領は、事態を早期収拾できなければシリア情勢をめぐる優柔不断で損なった威信をさらに落としてしまう。中国台頭で安全保障の軸足をアジアに移す外交にも支障を来すだろう。それは米国の存在感の希薄化、リーダーとしての役割の喪失につながる。

米国は不毛とも思える政争に幕を下ろすときがきている。

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