ドイツの総選挙で、メルケル首相の保守政党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が大勝し、首相の3選が確実になった。
任期を全うすれば在任12年に達し、女性宰相の先輩、サッチャー元英首相を抜く。独歴代政権の中でも長期政権となる。
同盟の勝利は、欧州の財政・金融危機で各国指導者の交代が相次ぐ中、ドイツの堅調な経済を守り抜いたメルケル首相の実績が国民に評価されたためだろう。続投は、安定的な景気回復を望む国際社会からも歓迎されよう。
メルケル氏はこれまで、欧州一の経済大国ドイツを、強い指導力で牽引してきた。
メルケル政権下で、10%を超えていた失業率は半減した。輸出も昨年、過去最高額を更新した。前政権からの構造改革と規制緩和を推進し、法人税率の引き下げなどに踏み切ったことが、企業の国際競争力を高めたと言える。
危機に瀕したギリシャなど南欧諸国に対し、欧州連合(EU)が支援を行った際、中心的役割を担ったドイツの負担が膨らんだことに、有権者の一部には強い不満があった。だが、選挙戦で同盟の優位は揺るがなかった。
ユーロを守るため他国を救済することは、欧州経済の発展に不可欠で、ドイツの国益にかなうという首相の粘り強い説得が、国民に浸透してきたのではないか。
3期目も、危機の収拾が最大懸案であることには変わりない。
南欧諸国からは、ドイツが支援の条件として過度の緊縮財政を強いて、景気回復を遅らせたと反発する声が出ている。
「通貨は一つで財政はバラバラ」というユーロ圏の構造的な問題も未解決だ。フランスなど欧州主要国との連携が一層問われる。
当面の焦点は、安定的政権を目指す連立交渉の行方だ。
連立を組んでいた自由民主党が議席を失い、過半数議席にわずかに届かない同盟は、第2党の社会民主党(SPD)との大連立を軸に多数派工作に乗り出す。
左派のSPDは、南欧支援やユーロ圏の財政統合に同盟より積極的であり、連立には政策のすり合わせが必要になろう。
日本にとって気がかりなのは、メルケル首相が中国との経済関係強化に熱心な一方で、2008年以来、訪日していないことだ。
3期目では、首脳の往来を活発化してほしい。日EUの経済連携協定(EPA)や環境問題など協議事項は少なくないはずだ。
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