米連邦準備制度理事会(FRB)が、金融危機対策として続けてきた量的緩和策第3弾(QE3)の縮小を見送った。
QE3の終了に向け、「出口戦略」の第一歩を踏み出すという観測が多かっただけに、サプライズと言える。
出口への道は不透明である。市場では早くも「縮小は12月」との見方が浮上しているが、FRBは難しい舵取りを迫られよう。
FRBは、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、米国債などを毎月850億ドル(約8・4兆円)買い入れて資金を市場に供給する異例の対策を維持した。
「景気や雇用情勢の改善を確実に見届けるまで判断を待ちたい」との声明を発表した。
あえて出口へ急がず、景気の持続的な回復を最優先する安全策を選択したのだろう。
米国経済は、4~6月期の国内総生産(GDP)の伸び率が前期比年率で2・5%増となり、景気回復基調が鮮明になってきた。
しかし、気掛かりは雇用情勢である。8月の失業率は7・3%に低下したが、非農業部門の就業者数の増加ペースは緩慢だ。
FRBは最近の長期金利の上昇による悪影響も警戒している。10月半ばに迫った連邦債務上限を巡る与野党協議の難航は、景気の先行きに影を落としかねない。
QE3縮小の先送り直後、ニューヨーク株価が急騰したのは、安心感が広がったからだろう。
FRBの出口戦略を先取りする形で投機マネーが流出していた新興国でも、現地通貨が買い戻され景気減速懸念が少し和らいだ。
FRBが拙速に動けば、日本を含めて、世界景気や市場に多大な影響を与える。ひとまず混乱を回避できた点は歓迎したい。
ただし、FRBはいつまでも大規模な量的緩和策を続けることはできない。過剰マネーが世界を駆け巡り、資産バブルを引き起こす副作用も懸念される。
FRBは「年内にQE3縮小を開始し、来年半ばに終了する」との方針を示してきた。その通りに踏み出したとしても、出口までの道は長い。混乱を招かないよう、「市場との対話」が要る。
来年1月末に任期が切れるバーナンキFRB議長の後任人事も焦点だ。オバマ大統領は、最有力候補とみられたサマーズ元財務長官の指名断念を発表した。
イエレンFRB副議長を軸に最終調整される見通しだが、大統領は早期に後任を指名し、金融政策の安定を目指してもらいたい。
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