コミッショナー 指導力発揮できる人を

朝日新聞 2013年09月21日

コミッショナー お飾りならいらない

なぜ、このタイミングなのか。理解も賛同も得られない辞任劇である。

プロ野球シーズンが大詰めを迎えたなか、加藤良三コミッショナーが来年6月までの任期を残して退くことを表明した。

統一球をめぐる問題が発覚したのは6月のことだ。昨年までのボールから、飛びやすいように仕様を変えながら、選手にもファンにも隠していた。

加藤氏は「変更は知らなかった」「不祥事ではない」と責任逃れに終始。その後、選手会から異例の「不信任」を突きつけられたが、居座っていた。

27日には、統一球の問題を調査している第三者委員会の結論が出る。コミッショナーの責任を追及する厳しい内容が予想され、引責辞任に追い込まれる前に逃げたと非難されてもしかたあるまい。

遅きに失した上に、立つ鳥跡を濁すような引き際である。

加藤氏をコミッショナーに迎え入れたオーナー会議も、この間の混乱の責任を問われるべきだろう。

そのオーナー会議は早速、コミッショナーの選び方や決め方について話し合ったという。だが、その前にコミッショナーの位置づけや役割を見直すべきではないか。

野球協約は、オーナー会議を「最高の合議・議決機関」と定めている。コミッショナーの「指令、裁定、採決及び制裁は最終決定」としながら、オーナー会議などでの決定を「執行する機関」と位置づけている。

これまで12代のコミッショナーは、いずれも球界の外から招かれてきた。なかには志をもって球界の刷新に取り組もうとしたひともいたが、オーナーに煙たがられて成果を上げられないこともあった。

名誉職のお飾りにすぎないなら、高額の報酬を払って置いておく意味はない。

その選任についても、協約に「任免はオーナー会議が行う」とあるだけで、具体的な選考方法などの規定はなく、不透明さが指摘されてきた。

13代目を選ぶにあたり、コミッショナーに求める資質や権限について話し合い、選び方を透明にし、そのために協約を改めることも必要だ。

厳しい経済環境のもと、球界全体の利害などをめぐって12球団の間で意見が対立し、調整が必要な場面が増えた。

そんなとき、公正な立場で指導力を発揮し、オーナー会議に遠慮なくもの申す。こういうコミッショナーがいれば、プロ野球はもっと活気づく。

毎日新聞 2013年09月20日

コミッショナー 指導力発揮できる人を

日本野球機構(NPB)の加藤良三コミッショナーが任期半ばでの辞任を表明した。統一球の仕様がひそかに変更されていた問題への対応をめぐり、労組日本プロ野球選手会(楽天・嶋基宏会長)から前代未聞の「不信任」を突きつけられていた。とはいえ、ペナントレースが大詰めを迎えている中での辞任表明は、選手やファンの気持ちをないがしろにした無責任な行動でしかない。

記者会見した加藤氏は「統一球に関してファン、関係者に迷惑を掛けたこと」と理由を述べた。時期についてレギュラーシーズン終了後、つまり球界最高のイベントである日本シリーズの前としたことは「職務放棄」との批判は免れないだろう。

外務省のキャリアで、駐米大使まで務め上げた加藤氏であれば、自身の行動が周囲にどんな影響を与えるか判断するのは難しくないはずだ。今月末には、統一球問題の事実調査を進めている第三者委員会の最終報告が出る予定になっている。それを待たずに、なぜ今なのか。当事者意識と責任感があれば、問題が発覚した6月に辞めるべきだった。

当時の加藤氏は「(変更は)まったく知らなかった」と否定したばかりか、「不祥事とは思っていない」と言ってのけ、世間をあきれさせた。だが、統一球の採用を主導した加藤氏が本当に知らなかったのか。今も疑問はぬぐえない。

選手会は6月、問題を生み出した大きな要因にNPBの構造を挙げ、「プロ野球の将来について消極的で責任回避的な人物がこれまでコミッショナーを務めてきたことにある」と指摘したうえで、「ビジョンと責任感を持った強いリーダーシップを発揮できる人物を登用すべきだ」と事実上の退任要求をした。

7月の臨時大会では「不信任」を全会一致で確認していた。

後任には中立的で、ビジネス感覚を備えた人物を充てるのも一案だ。折しも、これまでオーナー会議が任免を決定していたコミッショナーの選任方法について議論が進められている。一部の球団の意向が働き、「密室選考」ともされていたが、今後は透明性を高める方向で、12球団代表者会議では選考委員会を設置する案などが検討されている。

NPBはこの機会に選手会と意見交換しながらコミッショナーのあるべき姿を検討すべきだ。現在はオーナー会議などの決定事項を執行する役割しかなく、「お飾り」との批判もある。球界の憲法でもある野球協約の見直しにも手をつけてほしい。

今後のNPBの対応には、嶋選手会長の言葉を借りれば、「プロ野球を発展させる組織に変われるかどうかが問われている」のだ。

読売新聞 2013年09月21日

コミッショナー 辞任機にNPBの組織改革を

混乱を招き、野球ファンの信頼を失ったことを考えれば、辞任はやむを得ないだろう。

プロ野球の加藤良三コミッショナーが任期途中での辞任を表明した。

統一球の反発力が昨季より高まったにもかかわらず、公表が遅れ、「ファン、関係者にご迷惑をかけた」ことなどを理由に挙げた。日本シリーズ開幕前の10月後半に退任するという。

ペナントレースは大詰めを迎えている。プロ野球が最も盛り上がるこの時期に、日本野球機構(NPB)のトップであるコミッショナーの辞任に世間の耳目が集まるのは、残念な事態である。

駐米大使などを歴任した加藤氏は2008年7月、コミッショナーに就任した。外務官僚として培った国際感覚をプロ野球の発展に生かすことが期待された。

加藤氏が強く推し進めたのが、統一球の導入だった。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など国際大会では、日本とは異なるボールが使用される。

日本代表が海外の試合でも実力を存分に発揮できるよう、海外仕様に近いボールをプロ野球でも使うという意図自体は正しかったと言えるだろう。

ただ、11年に統一球が導入されると、本塁打が激減した。本塁打は野球の華であり、興趣をそがれたファンもいたのではないか。

対策として、NPBは今季から反発係数を上げたボールを使用したが、その事実を公表せず、メーカーにも口止めをしていた。

なぜ、ボールの仕様変更を隠す必要があったのか、甚だ疑問である。ボールの変更は、選手の打撃や投球術に大きな影響を与える。6月に仕様変更が明らかになった際、多くの選手がNPBへの不信感を口にしたのも無理はない。

加藤コミッショナーは、統一球の反発係数を変更した報告を受けていなかったという。

そうであるなら、重要情報がトップに伝わらないNPBの組織としてのガバナンス(統治機能)には、重大な欠陥がある。コミッショナーを補佐すべき事務局長が、情報を知りながら報告しなかったことが、それを物語っている。

NPBが設置した第三者委員会は、統一球問題の報告書を月内にまとめる予定だ。これを基に、NPBは再発防止と組織改革に取り組まねばならない。

今後は後任人事が焦点となる。12球団が協力し、NPBの信頼回復と球界発展の重責を担えるコミッショナーを選出してほしい。

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