なぜ、このタイミングなのか。理解も賛同も得られない辞任劇である。
プロ野球シーズンが大詰めを迎えたなか、加藤良三コミッショナーが来年6月までの任期を残して退くことを表明した。
統一球をめぐる問題が発覚したのは6月のことだ。昨年までのボールから、飛びやすいように仕様を変えながら、選手にもファンにも隠していた。
加藤氏は「変更は知らなかった」「不祥事ではない」と責任逃れに終始。その後、選手会から異例の「不信任」を突きつけられたが、居座っていた。
27日には、統一球の問題を調査している第三者委員会の結論が出る。コミッショナーの責任を追及する厳しい内容が予想され、引責辞任に追い込まれる前に逃げたと非難されてもしかたあるまい。
遅きに失した上に、立つ鳥跡を濁すような引き際である。
加藤氏をコミッショナーに迎え入れたオーナー会議も、この間の混乱の責任を問われるべきだろう。
そのオーナー会議は早速、コミッショナーの選び方や決め方について話し合ったという。だが、その前にコミッショナーの位置づけや役割を見直すべきではないか。
野球協約は、オーナー会議を「最高の合議・議決機関」と定めている。コミッショナーの「指令、裁定、採決及び制裁は最終決定」としながら、オーナー会議などでの決定を「執行する機関」と位置づけている。
これまで12代のコミッショナーは、いずれも球界の外から招かれてきた。なかには志をもって球界の刷新に取り組もうとしたひともいたが、オーナーに煙たがられて成果を上げられないこともあった。
名誉職のお飾りにすぎないなら、高額の報酬を払って置いておく意味はない。
その選任についても、協約に「任免はオーナー会議が行う」とあるだけで、具体的な選考方法などの規定はなく、不透明さが指摘されてきた。
13代目を選ぶにあたり、コミッショナーに求める資質や権限について話し合い、選び方を透明にし、そのために協約を改めることも必要だ。
厳しい経済環境のもと、球界全体の利害などをめぐって12球団の間で意見が対立し、調整が必要な場面が増えた。
そんなとき、公正な立場で指導力を発揮し、オーナー会議に遠慮なくもの申す。こういうコミッショナーがいれば、プロ野球はもっと活気づく。
この記事へのコメントはありません。