カネボウ 意識改革し被害者救済を

朝日新聞 2013年09月15日

カネボウ 過信を防ぐシステムを

顧客ばかりか、専門家である医師からの情報まで軽くみていたことは深刻だ。

カネボウ化粧品の美白化粧品を使った1万人近い顧客に、肌がまだらに白くなる症状が出た問題で、外部調査の報告書が発表された。

利用者の相談は2年前から寄せられていた。加えて昨秋以降、複数の医師から「化粧品が引き金になった可能性がある」と指摘されていた。なのに同社は今春まで動かなかった。

「白斑は体質に由来する病気だ」という思い込みと、事なかれ主義が被害を広げた。報告書のこの指摘は重い。

開発の段階で、自社のテストや厚生労働省の審査を通っている。日ごろ助言を受けている医師からも「化粧品で白斑はまず起きない」と聞いた。そんな過信が社内にあった。

支社から問い合わせを受けても、「診察を受けてもらえば化粧品が原因でないと理解してもらえる」と繰り返し、軌道修正できなかった。

開発時に白斑のテストもしていたのだから、リスクは認識していたはずだ。美白は業界の主戦場であり、カネボウの看板でもある。そこでつまずきたくない。そうした思いが目をくもらせはしなかったか。

カネボウは親会社の花王とも連携し、トラブル情報を共有する仕組みを見直す。それは当然だが、聞きたくない情報に耳をふさぐ姿勢を正すには、身内だけの共有では心もとない。

厚労省や学会、メーカーは来年1月をめどに、トラブル情報をウェブで集めて共有するシステムをつくる。再発をふせぐ良い手だてになるだろう。

厚労省の審査のありかたも検証してほしい。

美白成分が白斑を起こすメカニズムは未解明だが、発症は夏場が多く、強い日差しで成分が変化して毒性を持つ可能性が疑われている。審査の過程で懸念を口にした委員もいたが、深く検討されずに終わった。

カネボウの申請書は、類似物質による白斑の症例を指摘した論文にふれていた。審議会で原典にあたっていれば突っ込んだ検討ができたかもしれない。

薬用化粧品の安全性テストの方法はメーカーに委ねられている。今回、化粧水やクリームなど同じ成分を含む商品をいくつも使っていた人ほど発症率は高い。併用を想定した試験が不十分だった可能性がある。

テスト方法に指針は要らないか。実際の使われ方に即したやり方を工夫できないか。検討すべきことは多い。

産経新聞 2013年09月13日

カネボウ 意識改革し被害者救済を

美白化粧品で肌がまだらに白くなる多数の被害を招いたカネボウ化粧品が、外部の弁護士による調査結果を発表した。

白斑症状について「個人の病気で、化粧品で起きたものではないとの思い込みが被害者対策を遅らせた」と調査報告は指摘した。事なかれ主義によって、被害を拡大させた会社や社員の意識改革を厳しく求めたのは妥当だ。

製品との因果関係が疑われた段階で適切な対応を取らず、問題を引き起こした会社の責任は極めて重い。その深い反省に立ったうえで、何よりも被害者救済に全力を注ぐ責任を負っていることをカネボウは改めて考えるべきだ。

専門医と協力して効果のある治療法を見つけ出すとともに、治療費負担を含め、十分な補償に力を尽くさなければならない。

同社は昨年9月、白斑症状を訴えた被害者を診断した医師から「化粧品が白斑症状発症の引き金になった疑いがある」と指摘され、さらに今年5月にも別の医師から同様の指摘を受けた。化粧品との因果関係を認識し、自主回収を決めて公表したのは7月4日になってからだ。

最初の指摘から10カ月が経過した段階での「遅きに過ぎた」対応だ。医師の指摘より前に、社員にも白斑症状が出たのに対応しなかった。「都合の悪いことは突っ込まないで無視しようとする態度」との批判は当然である。

公害などによる健康被害でも、企業が被害を小さく見積もり、事業計画や業績への影響を避けたがる傾向が指摘される。白斑被害も構図は同じだろう。

品質管理部門を親会社の花王の「品質保証本部」に統合し、顧客からの問い合わせ窓口も花王側に集約する再発防止策も取ったという。機構を見直しても、消費者の声に耳を傾け、安全対策に生かす当たり前の意識がなければ、再発は防止しきれまい。

健康な肌は女性にとってかけがえのないものだ。1万人近い被害者の不安は大きく、さらに背後には多数の消費者がいる。

調査を受けて記者会見したカネボウの夏坂真澄社長は「発症されたすべての方が回復し、笑顔が戻るまで責任を持つことを約束します」と語った。

まず、被害者救済の責務に必死で取り組むという、自らの言葉を真に実行すべきだ。

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