震災2年半 復興こそ「全日本」必要だ

朝日新聞 2013年09月12日

震災2年半 終わりのない悲しみに

「仕方なかった」を繰り返して欲しくない――。

悲しみを長引かせ、時に増幅させるのを知りつつ、それでも検証を求め、裁判を続ける遺族たちは訴える。助けられたはずの命があったのだと。

東日本大震災から2年半。犠牲者が1万人を超す宮城県で、遺族たちを訪ねて歩いた。

がれきはほとんど目につかなくなった。ダンプが行き交い、重機が音をたてる。しかし、「復興」の垂れ幕の裏には、終わらない悲しみがある。

送迎バスが津波に巻き込まれて園児5人が亡くなった石巻市の日和幼稚園。うち4人の遺族が園側を提訴し、近く一審の判決が出る見通しだ。

女川町では、七十七銀行の支店屋上に避難した行員やスタッフ12人が死亡・行方不明となった。3人の遺族が銀行を提訴して、ちょうど1年がたつ。

児童と教職員84人が死亡・行方不明となった石巻市の大川小学校では、文部科学省の主導で市が設置した委員会で、検証作業が続いている。

遺族たちに話を聞くと、共通点が浮かび上がる。

当日の行動を知るほどに、「こうすれば死なずにすんだ」という選択肢が、はっきりしてくることだ。

地震発生後に幼稚園の送迎バスが海に向かわず、子どもたちが園にとどまっていれば……。

銀行員たちの避難先が、2階建ての支店屋上ではなく、歩いて数分の高台であれば……。

津波が来るまで50分も校庭に居続けず、子どもでも登れる裏山に逃げていれば……。

どうして、そうならなかったのか。

相手方の答えは、煎じ詰めれば「津波がここまで来るとは想定外だった」に行き着く。

説明会は開かれるが、「なかなか情報が出てこない」と遺族は言う。「仕方なかった、では同じ過ちが繰り返される」

裁判に訴えれば、損害賠償責任の有無が争われる。真相の解明、真摯(しんし)な謝罪、二度と繰り返さないための反省という、遺族が本当に求めているものが得られる保証はない。

避難行動を率いた人たちが津波の犠牲になった事例もある。

裁判の勝ち負けがどうあれ、それだけで「安全」につながるとは限らない。

それを承知でなお、訴え、争うしかなかったことに、遺族の一人は「私たちは、おかしいですかね」と問いかける。

遺族の悲しみを社会で受け止め、悲劇を防ぐ教訓を学ぶ。その努力を続けるしかない。

産経新聞 2013年09月12日

震災2年半 復興こそ「全日本」必要だ

東日本大震災から2年半が過ぎた。平成23年3月11日、あなたは何をしていたろう。被災地の過酷な現実を見て、何を思ったろう。

多くの人が避難と備えの重要性を再確認し、被災者との連帯や絆を強く意識したのではなかったか。その思いが、薄れてはいないか。

被災地の復興は順調に進んでいるとは言い難い。国や自治体、経済界、一般の人々を含む「オールジャパン体制」で復興の速度を高める必要がある。

地震と大津波の被害で、死者は太平洋岸を中心に北海道から神奈川県まで12都道県で1万5883人を数えた。2654人が行方不明のままだ。11日には沿岸部各地で大規模な捜索が行われた。

今も宮城、岩手、福島3県の避難者は約29万人にのぼる。このうち10万人以上が、プレハブなどの仮設住宅で不自由な生活を強いられている。その重い現実を直視しなければならない。

住宅再建の遅れは3県が共に抱える深刻な課題だ。国は県などと連携して災害公営住宅の整備に取り組んでいるが、完成したのは3県で400戸余りにとどまる。高台への移転や工事の遅れで造成がなかなか進まないためだ。

がれきの山はようやく小さくなったが、土台を残して住宅が流された荒涼たる光景は、ほとんどそのままだ。

何よりも国が前面に立ち、東京電力福島第1原発の事故処理を安全、確実に進める必要がある。

2020年夏季五輪の東京開催が決まった。「復興五輪」の掛け声もある。被災地の人たちが共に楽しみ、喜べなくては、大会の成功は望めない。

安倍晋三首相は「復興を成し遂げた日本の姿を世界に発信する」と語った。約束は、守らなくてはいけない。五輪のための復興ではないのは当然のことだが、五輪を復興速度に拍車をかける、いいきっかけとしたい。

五輪招致は国や都、財界やスポーツ界を挙げたオールジャパン体制で成し遂げた。陣頭に立った安倍首相は「みんなで頑張れば夢が実現できるということを体験できたのではないか」とも語った。

その体験を、震災からの復興に生かし切ってほしい。五輪で創出される雇用や整備工事に、被災者や被災企業を優先することも実行してもらいたい。

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