◆オールジャパンで成功させたい◆
東京に再び聖火がともることを喜びたい。
2020年夏季五輪・パラリンピックの開催都市が東京に決まった。
ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会で、イスタンブールとの決選投票を大差で制し、招致を勝ち取った。
東京では1964年以来、56年ぶりの五輪だ。冬季の札幌(72年)、長野(98年)と合わせると、日本では4度目の五輪となる。
世界のアスリートが東京に集う。五輪決定の報は、多くの国民に希望をもたらしただろう。安倍首相は、五輪開催をデフレ脱却の「起爆剤にしたい」と語った。
◆国挙げた招致が奏功◆
開幕まで、あと7年。国を挙げて準備に万全を期し、スポーツの祭典を成功させたい。
招致レースはイスタンブール、マドリードとの横一線と言われたが、結果は東京の完勝だった。
IOC総会で、パラリンピック選手の佐藤真海さんらによる最終プレゼンテーションは、いずれも熱意がこもった見事な内容だった。
高円宮妃久子さまが、東日本大震災での各国からの支援に謝辞を述べられたことは、票を投じたIOC委員の心に響いたのではないか。
勝因の一つはオールジャパン体制で臨めた点だ。政財界が招致を全面支援した。五輪開催に対する国民の支持率は、2016年五輪の招致時より大幅に上昇した。
メダリストら招致委員会のメンバーによるIOC委員への積極的なロビー活動も功を奏した。
東京の開催計画は、当初から高い評価を受けていた。移動時間を短縮させるため、主要な競技会場を選手村から半径8キロ・メートル圏内に集中させるなど、選手に最大限、配慮した内容と言える。
4000億円の基金など都の安定した財政基盤、整備された交通網や宿泊施設、良好な治安――。政情不安や財政危機などの問題を抱えた他の2都市と比較し、東京の高い開催能力を支持の決め手としたIOC委員もいただろう。
最も懸念されたのは、海外でも報じられている福島第一原子力発電所の汚染水問題だった。
韓国は6日、福島県など8県の水産物の輸入を禁止すると発表した。科学的根拠を欠く措置だ。東京のイメージダウンを図ったとの見方もある。
◆汚染水問題の収束急げ◆
安倍首相は、IOC側の質問に対し、「影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインの500分の1だ」などと説明した。
具体的事実を挙げて、五輪開催への影響を明確に否定したことが、IOC委員が抱く不安の解消につながったと言えるだろう。
政府は今後、着実に汚染水問題を収束させねばならない。
64年の東京五輪は、戦後の復興を世界に示した大会だった。東海道新幹線が開通し、首都高速道路が建設された。東京のインフラ整備が飛躍的に進んだ。
2020年五輪は、どのような遺産を未来へと残すのか。
安倍首相が、経済政策であるアベノミクスの「第4の矢」と言うほど、五輪への期待は極めて大きい。
経済効果は3兆円に上り、15万人の雇用を生むと試算されている。
確かに、施設整備を担う建設業をはじめ、観光や不動産業など、様々な分野に効果が波及しよう。こうした「五輪関連銘柄」の株価は上昇傾向を見せている。
五輪開催を東京だけでなく、東日本大震災の被災地、さらに日本全体の活性化につなげたい。
主要競技場の電力に再生可能エネルギーを使用することや、湾岸部などの大規模な緑化事業など、環境に配慮した整備計画も着実に進める必要がある。
パラリンピックの開催に備え、街のバリアフリー化を一層、推進することも大切だ。
◆戦略的な選手強化を◆
五輪が盛り上がるためには、日本選手の活躍が欠かせない。
7年後の主力となるのは、現在の中学生や高校生だろう。自国での五輪出場を夢見て、スポーツに打ち込む子供たちがますます増えるに違いない。
文部科学省や日本オリンピック委員会(JOC)は、中高生を中心とした選手の強化に、戦略的に取り組むことが必要だ。
20年の東京五輪では、残留が決まったレスリングを含め、28競技が実施される。
7年後が今から待ち遠しい。
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