太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気の固定価格買い取り制度で、政府の認定を受けたのに発電を始めない事業者が驚くほど多い。
高い価格で電力会社に電気を売る権利だけを取得し、太陽光パネルの値下がりを待って発電を始めるというのだろうか。買い取り費用は電気料金に上乗せされる。いずれ割高なコストを負担させられる消費者は、納得できまい。
いたずらに発電を遅らせている事業者の認定を取り消すなど、政府は厳しく対処すべきだ。
経済産業省によると、買い取り制がスタートした2012年7月から13年5月までに認定された発電設備は計2240万キロ・ワットで、このうち実際に発電しているのは約300万キロ・ワットに過ぎない。
特に、大規模太陽光発電(メガソーラー)は、認定された設備が多いうえに、発電を始めていない比率も9割超と極めて高い。
風力や地熱よりも、計画から発電開始まで短期間で済むのが太陽光の利点のはずだ。品薄でパネルが手に入りにくいなどの事情を考慮しても、進捗が遅すぎる。
太陽光の買い取り価格は今年4月、当初の1キロ・ワット時あたり42円から約38円に下げられたが、それでも風力などの2倍近く高い。
太陽光の価格を下げる直前に、駆け込み申請が殺到した。高価格で認定を得ようと、用地取得や機材購入などの計画があいまいなまま、申請した例もあるようだ。
中身のない「カラ申請」を減らすには、買い取り価格を認定時ではなく、発電の開始時に確定するよう見直せばいい。
現状の書類審査では、いいかげんな事業計画まで認定される懸念がある。建設地や機材購入先を抜き打ち調査するなど、審査の厳格化も欠かせない。
経産省は認定されても未着工の太陽光発電を調査する方針を示した。再生エネ発電の事業計画を、「権利」として転売する、悪質な例もあるとされる。徹底的に実態を解明してもらいたい。
そもそも、太陽光の買い取り価格が高すぎることが、様々な問題を引き起こしている。
太陽光パネルを設置する費用は、09年から4割も低下した。電気料金の高騰を抑えるためにも、政府は再生エネの買い取り価格を、コスト低下にあわせ、機動的に引き下げる必要がある。
再生エネへの期待は大きいが、現行の導入策は弊害も多い。消費者の負担に配慮した、より合理的な制度に改めるべきだ。
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