クロマグロ規制 資源回復へ主体的に取り組め

毎日新聞 2013年09月06日

クロマグロ保護 国民全体で取り組もう

急減している太平洋クロマグロ(本マグロ)の国際的な資源管理機関「中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)」の小委員会が、漁獲量を削減することで合意した。

日本は世界一の消費国だ。資源保護の先頭に立つ責任がある。すしや刺し身の「主役」を守るため、日本人みんなで資源の大切さを認識し、回復に努めるべきだ。

2010年の資源量は約2万3000トンで、15年前の3分の1以下に減った。太平洋のクロマグロを巡っては先に、日米などの科学者や政府関係者でつくる「北太平洋マグロ類国際科学委員会」が強力な資源回復策導入を初めて勧告した。絶滅が心配されるウナギの二の舞いになりかねない深刻な事態だ。

太平洋のクロマグロの約7割は日本が取っている。特に問題なのが、産卵前の未成魚(3歳以下)の乱獲だ。主流の巻き網漁は、幼魚から成魚まで文字通り一網打尽にしてしまうため、漁獲量の99%近くを3歳以下が占める。

WCPFC小委は今回、14年の未成魚の漁獲量を02~04年の平均から15%以上減らすことで合意した。削減幅は日本が提案したものだが、ここ3年間の日本の漁獲量は02~04年の平均を約17%下回っている。つまり、実績より甘い削減目標ということだ。これでは十分とはいえまい。政府は科学的データに基づき、資源回復に実効性のある規制を精査・検討し、各国に提案していくべきだ。

未成魚乱獲の背景の一つに養殖拡大がある。養殖したマグロを産卵させ、ふ化させて育てる完全養殖ではなく、捕獲してきた若い魚を育てる「蓄養」が主流だからだ。12年の養殖クロマグロの国内出荷量は10年前の約3倍に達した。それだけ天然の未成魚が取られていることになる。資源の悪化を防ぐには完全養殖技術の確立、普及を急ぐ必要がある。

消費者にも責任の一端はある。「メジマグロ」「ヨコワ」と呼ばれるマグロは、比較的安いことから居酒屋やスーパーなどで人気が高い。それらが、成熟する前のクロマグロであることをよく考えてほしい。成熟すれば産卵し、資源の回復に貢献するはずだ。5、6年待てば3キロ前後の体が100キロ程度に成長する。それまで我慢できずに食べてしまうのは、もったいない。

養殖の増加にしろ、「メジ」や「ヨコワ」の消費拡大にしろ、「気軽に安いマグロを食べたい」という貪欲さの反映に他ならない。クロマグロは本来、成熟に長い時間がかかる上、数も少ない貴重な魚である。無責任な大量消費を続けていては、資源は先細るばかりだと肝に銘じるべきだろう。

読売新聞 2013年09月03日

クロマグロ規制 資源回復へ主体的に取り組め

すしや刺し身で人気が高いクロマグロの資源量が減っている。

最大の消費国である日本は資源回復に主体的に取り組む必要がある。

クロマグロの漁業規制を話し合う「中西部太平洋まぐろ類委員会」が2日、福岡市で始まった。米国や韓国、台湾など9か国・地域が参加している。

太平洋の親魚の資源量は1960年頃は推計13万トンあったのに、2010年には2・3万トンまで減った。委員会は8月、近い将来、1・8万トンを下回る可能性があるという報告書をまとめた。

日本市場には太平洋など世界から年間約4万トンのクロマグロが、本マグロなどの名称で供給されている。世界全体の約8割を消費する日本は、資源管理に大きな責任があると言えよう。

委員会は10年、幼魚(0~3歳)の漁獲量を02~04年の水準より削減するという規制を決めた。今回の会議の焦点は、それを強化するかどうかだ。

減少の主因は産卵する前の幼魚の乱獲とされる。太平洋で漁獲されるクロマグロの9割超を幼魚が占めている。

初日の2日、日本が幼魚の漁獲量を02~04年の平均値より15%以上減らすと提案したのに対し、米国は25%削減を求めており、主張には隔たりがある。

韓国など一律の漁獲制限に反対している漁獲国もあり、5日までの協議は難航が必至だ。

過剰な規制に踏み出せば、供給量が減って、価格が高騰しかねない。クロマグロを味わうこともなかなか難しくなるだろう。

日本はまず、資源を安定的に保てる漁獲量について客観的なデータに基づいた主張を展開し、議論を主導する必要がある。

絶滅の恐れがある生物の取引を規制するワシントン条約締約国会議では10年に大西洋クロマグロの禁輸措置が提案され、漁獲国の反対で見送られた。

太平洋産でも将来、禁輸などの厳しい対応を求める声が上がることを警戒しなければならない。

こうした事態を避けるには、日本が率先して実効性のある資源保護策をまとめるべきだ。他国との連携を強化し、違反操業の取り締まりも徹底してもらいたい。

養殖マグロの供給を増やすことも大切だ。天然の幼魚をとり、いけすで育てる従来の方法では、資源の減少を助長しかねない。

卵を人工孵化(ふか)し、成魚に育てる「完全養殖」の拡大に向けた技術開発を官民で急ぐべきだ。

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