すしや刺し身で人気が高いクロマグロの資源量が減っている。
最大の消費国である日本は資源回復に主体的に取り組む必要がある。
クロマグロの漁業規制を話し合う「中西部太平洋まぐろ類委員会」が2日、福岡市で始まった。米国や韓国、台湾など9か国・地域が参加している。
太平洋の親魚の資源量は1960年頃は推計13万トンあったのに、2010年には2・3万トンまで減った。委員会は8月、近い将来、1・8万トンを下回る可能性があるという報告書をまとめた。
日本市場には太平洋など世界から年間約4万トンのクロマグロが、本マグロなどの名称で供給されている。世界全体の約8割を消費する日本は、資源管理に大きな責任があると言えよう。
委員会は10年、幼魚(0~3歳)の漁獲量を02~04年の水準より削減するという規制を決めた。今回の会議の焦点は、それを強化するかどうかだ。
減少の主因は産卵する前の幼魚の乱獲とされる。太平洋で漁獲されるクロマグロの9割超を幼魚が占めている。
初日の2日、日本が幼魚の漁獲量を02~04年の平均値より15%以上減らすと提案したのに対し、米国は25%削減を求めており、主張には隔たりがある。
韓国など一律の漁獲制限に反対している漁獲国もあり、5日までの協議は難航が必至だ。
過剰な規制に踏み出せば、供給量が減って、価格が高騰しかねない。クロマグロを味わうこともなかなか難しくなるだろう。
日本はまず、資源を安定的に保てる漁獲量について客観的なデータに基づいた主張を展開し、議論を主導する必要がある。
絶滅の恐れがある生物の取引を規制するワシントン条約締約国会議では10年に大西洋クロマグロの禁輸措置が提案され、漁獲国の反対で見送られた。
太平洋産でも将来、禁輸などの厳しい対応を求める声が上がることを警戒しなければならない。
こうした事態を避けるには、日本が率先して実効性のある資源保護策をまとめるべきだ。他国との連携を強化し、違反操業の取り締まりも徹底してもらいたい。
養殖マグロの供給を増やすことも大切だ。天然の幼魚をとり、いけすで育てる従来の方法では、資源の減少を助長しかねない。
卵を人工孵化し、成魚に育てる「完全養殖」の拡大に向けた技術開発を官民で急ぐべきだ。
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