国の借金が1000兆円を超えているにもかかわらず、財政規律があまりに緩んでいないか。
財務省は各府省からの要求を厳しく査定し、不要不急な歳出を削減すべきだ。
2014年度予算の概算要求の総額が、過去最大の約99・2兆円に達する見通しとなった。13年度当初予算の約92・6兆円を大きく上回る規模である。
要求が膨らんだ主因は、来春に消費増税に踏み切るかどうか、安倍首相が最終的に判断する前で、税収見通しが立たず、歳出上限額を事前に示せなかったためだ。
政府は、公共事業など裁量的経費を10%削減する方針を示した。しかし、成長戦略や防災対策の名目で公共事業などの要求を別に認める「優先課題推進枠」を設けたことが抜け穴になった。
こうした状況の下、与党が後押しして、各府省が要求を大幅に積み上げたと言えよう。
象徴的なのが、約3・5兆円の推進枠の上限いっぱいまで要求が殺到したことだ。道路建設や農地整備など旧来型の事業も多く、推進枠の目的に沿った事業だけが要求されているのか疑わしい。
ビッグデータの活用促進など複数の省庁がほぼ同じ狙いの事業を別々に要求している例もある。
その結果、推進枠と合算した各府省の公共事業費が大幅に増額されたのは問題だ。
国土交通省の公共事業は前年度当初予算比で約17%増の5・2兆円に上った。「国土強靱化」を旗印に、道路やダム、整備新幹線の建設費などを積み上げた。
農林水産省の公共事業は、民主党政権で大幅に削られた土地改良事業の増額などで約19%増の7700億円ほどの要求となった。
インフラ(社会基盤)の老朽化対策や農業活性化策は重要だが、必要性が乏しい道路建設や農業支援策に多額の予算を計上する余裕はない。限られた財源の有効活用に知恵を絞り、事業の「選択と集中」を徹底すべきである。
各府省が、景気回復に伴う税収増や消費増税を当て込み、要求を増やしたとすれば、財政悪化への危機感が乏し過ぎる。
たとえ消費増税を実施したとしても、社会保障財源に充てるのが本来の目的で、予算の大盤振る舞いの財源にはならない。メリハリの利いた予算を編成しなければ、財政再建への道のりは遠のく。
厚生労働省の要求が約31兆円と過去最大になるなど、社会保障予算も膨らんだ。最大の歳出項目に切り込む改革も待ったなしだ。
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