文官の背広組と自衛官の制服組が「車の両輪」として緊密に連携し、防衛相を支える体制を構築することが重要だ。
防衛省が省改革の組織改編案を発表した。文官と自衛官の相互配置を拡大するとともに、部隊運用の一元化に向けて、内局の運用企画局を廃止し、統合幕僚監部に統合することが柱だ。
背広組の防衛官僚は、法令作成や政策立案、政党・他省庁との調整を専門とする。制服組は豊富な軍事的知見や他国軍とのパイプを持つ。当然、双方が持ち味を生かし、協力することが望ましい。
現在は、2、3佐級の自衛官32人が内局で、若手の文官5人が陸上自衛隊部隊でそれぞれ勤務するだけで、人事交流は限定的だ。
来年度から、内局勤務の自衛官を56人に増やし、正式に定員化する。自衛隊勤務の文官も22人に増員する。防衛省の混合組織化を進める方向性は妥当である。
将来、幹部となる文官や自衛官が行政組織や部隊の実態を知り、視野を広めることは、人材育成面の効果も期待できよう。中長期的に、より高官の人事交流も含め、混合組織化を拡大すべきだ。
一方で、運用企画局を統幕に統合する案は、果たしてうまく機能するのか、疑問である。
現状でも、大規模災害や北朝鮮の弾道ミサイル発射の際は、防衛省地下の中央指揮所に文官と自衛官が集結し、迅速に対応している。平時は運用企画局と統幕が連携しており、特に問題はない。
部隊運用には、軍事的合理性だけでなく、政府としての政策・情勢判断が重要な要素となる。そこに文官の存在意義がある。
首相や防衛相が的確な文民統制(シビリアンコントロール)を行うには、統幕とは別に、情報を集約し、防衛相らを補佐する内局組織を維持することが必要だ。
中期的課題では、防衛装備品の調達を「防衛装備庁」(仮称)に一元化することも盛り込んだ。
陸海空3自衛隊の装備予算の比率は長年、ほぼ固定化しており、縦割りの弊害が指摘されている。より優先度の高い海・空の装備予算の拡大につなげる方向で、組織改編を進めることが大切だ。
大規模な改革は組織の混乱や士気低下を招くリスクを伴う。防衛大綱の改定など、多くの重要案件を抱える今、文官と自衛官の主導権争いを招きかねない省改革をあえて進める必要性は乏しい。
まずは混合組織化を進め、その功罪を検証しつつ、組織改編を慎重に進めるのが現実的だろう。
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