シリア緊迫 米は軍事介入を急ぐな

朝日新聞 2013年09月12日

シリア問題 全面停戦への道を探れ

化学兵器疑惑の渦中にある中東のシリアをめぐり、国際的な取り組みが加速している。

アサド政権が保有している化学兵器を、国際管理のもとに置く。こうした新構想をロシアが示し、シリアは受け入れた。

これで米国による空爆は、当面先送りされる。大国の性急な軍事行動の余波を心配していた国際社会にとっては、かすかな希望の光が差したといえる。

だが、アサド政権の出方と、米ロなどの動き次第で、シリア情勢の火だねはいつでも再燃しかねない。

そもそもシリアの化学兵器を本当に管理下に置けるのか。これまで保有を公式に認めてもいないアサド政権が正直に申告するのか。疑念は尽きない。

国連安全保障理事会では新たな駆け引きが始まった。シリアが従わない場合の制裁を明示した決議を米国やフランスはめざし、ロシアが抵抗している。

この2年半、シリア問題に行動を起こせずにきた安保理が初めて機能不全から脱することができるのか。外交的解決を図る最初の関門はそこにある。

米欧は、人道介入の必要性を訴えて安保理の結束を求めてきた。一方のロシアと中国は、国家主権の尊重を唱え、内政干渉を嫌う主張を続けてきた。

21世紀の世界の危機管理をめぐる根源的な確執であり、シリア問題の行く末は国連外交の重要な先例となろう。

いま再び集中論議の舞台となる安保理は今度こそ、足並みをそろえて危機に立ち向かう有効策を編み出さねばならない。

米国務長官とロシア外相がきょう、ジュネーブで会うほか、米英仏も協議を急ぐ。

オバマ米大統領はこうした外交調整のかたわら、空爆に踏み切る態勢はゆるめず、圧力をかけ続ける構えを示している。緊迫の度合いは変わっていない。

当事者のアサド政権は、有言実行するほかない。化学兵器の保管場所を完全公開し、国際監視のもとで放棄すべきだ。時間稼ぎや妨害は許されない。

忘れてはならないのは、化学兵器がどう使われたかという問題以前に、果てしない内戦で、すでに10万人が殺され、200万人が家を追われ、今も戦火が続いていることである。

「今世紀の最大の惨劇」(国連難民高等弁務官)といわれながら、シリアの難民たちは「世界は私たちを見捨てた」と訴え続けてきたのだ。

いまやっと盛り上がった機運を逃すことなく、国際社会は全面的な停戦実現への道こそを模索すべきだろう。

毎日新聞 2013年09月12日

シリア情勢 米露協調で打開めざせ

軍事行動の足音は当面遠のいたようだ。ロシアがシリア・アサド政権の化学兵器を国際管理下で廃棄することを提案し、米国が原則的に受け入れたためだ。オバマ大統領は10日(日本時間11日)の演説で、シリア攻撃の是非を審議している米議会に対し外交交渉中は採決しないよう求めたことを明らかにした。

とりあえずは朗報である。オバマ大統領によると、アサド政権は化学兵器の保有を公式に認め、今まで参加していなかった化学兵器禁止条約に署名するという。アサド政権は首都ダマスカス近郊で先月21日に使われたという化学兵器への関与は否定しつつ、友好国ロシアの顔を立てて一定の柔軟姿勢を示したのだろう。

米露の協力を歓迎したい。ロシアと中国はこれまで、シリアに関する国連安保理決議案に拒否権を行使し続けた。プーチン露大統領は米国が国連決議なしに攻撃すれば「シリアを支援する」と明言した。このため米露の軍事衝突さえ懸念されていたが、一転して米露は共同作業の局面に入ったわけだ。

旧ソ連の衛星国家ともいわれたシリアは歴史的にロシアとの関係が深い。ロシアはシリアへの大口武器供給国であり、地中海に面した同国の港を軍港に使っている。本来ならロシアこそシリア情勢の改善に努めるべきなのに、米国の武力行使の瀬戸際に来てやっと重い腰を上げた印象がある。米露は化学兵器の問題を突破口として協調の分野を広げ、シリアの惨状を改善してほしい。

同国の人道危機は想像を絶するほど深刻に広がっている。人口2000万人強の国で内戦の死者が11万人に達し、人口の1割に当たる200万人が難民と化している現状は放置できない。人道危機の解決こそ最大の課題だ。アサド政権と反体制派が参加する国際会議構想は宙に浮いたままだが、米露は構想実現に今一度努力してもよかろう。

対処すべき問題は多い。化学兵器をめぐる安保理決議についてロシアと米英仏の意見対立もあるし、12日の米露外相会談の行方も予断を許さない。どう内戦を終わらせるかという青写真も描けていない。

オバマ外交の試金石だろう。米国の世論調査ではシリア攻撃への反対が賛成を上回る。上下両院とも軍事行動の承認は容易ではない。見方によっては、「伝家の宝刀」(武力行使)に手をかけたまま動けないオバマ大統領にロシアが「助け舟」を出したともいえる。この機会を生かしオバマ政権は当面、外交解決に全力を挙げるべきだ。

無論、米露だけの問題ではない。どうすればシリア危機を解決できるのか。もう一度、国際社会が懸命に知恵を絞る時でもあるはずだ。

読売新聞 2013年09月11日

尖閣国有化1年 毅然たる態度を貫くしかない

中国の威嚇にたじろがず、日本は毅然(きぜん)とした態度を貫くべきだ。

政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化して11日で1年になる。この間、中国の公船は、尖閣諸島周辺の日本領海に計63日侵入した。中国機の領空侵犯もあった。

8、9両日には、中国軍の爆撃機と艦船が沖縄本島と宮古島の間を通過した。無人機が尖閣諸島沖まで飛来し、航空自衛隊機が緊急発進する事態も起きた。偶発的な衝突に発展しかねない。

日中関係の再構築は、最重要課題の一つである。日中間の経済関係の結びつきは深く、北朝鮮の核開発、環境対策などでの連携も必要だ。険悪な状況が続くことは、双方にマイナスだろう。

だが、主権を巡る問題で譲歩はできない。尖閣諸島は、国際法的にも歴史的にも日本固有の領土だ。日中間に領土問題は存在しないし、棚上げする必要もない。

安倍首相が、中国側の「領土問題の存在を認めて棚上げすれば首脳会談に応じる」という誘いを拒否したのは当然である。

政府は、周辺海域で海上保安庁による警備体制の充実を図っている。防衛力の整備も含め、今後も万全の備えが欠かせない。

中国と同様に尖閣諸島の領有権を主張する台湾と、漁業協定を締結したことは、中台の連携阻止で一定の成果を上げたと言える。

尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であり、日米同盟こそ、中国に対する最大の抑止力だ。日米関係は、国有化当時、民主党政権下で不安定だったが、安倍首相がまず同盟の立て直しを進めたのは適切な判断である。

オバマ米大統領は先週、ロシア・サンクトペテルブルクで習近平・中国国家主席と会談し、尖閣諸島について、「力ではなく、外交や対話による解決」を求めた。米大統領が中国トップに直接、自制を促した意味は大きい。

日本が米国と緊密に協調しつつ、中国に一歩も引かない態度を堅持してこそ、中国が力ずくの外交を変える可能性が出てくる。

サンクトペテルブルクで安倍首相と初めて直接言葉を交わした習主席は、これまで日中首脳が確認してきた「戦略的互恵関係」を進めたいと語った。その真意はどこにあるのだろうか。

習政権は、愛国主義を求心力としている。国民の目に「弱腰」と映るような対日政策は取れない。日本政府は、尖閣諸島周辺での威嚇や挑発行為が長期化することを覚悟しておかねばなるまい。

産経新聞 2013年09月12日

シリアの化学兵器 武力行使圧力を緩めるな

シリアのアサド政権が化学兵器攻撃を行ったとされる問題への対応は、同国化学兵器を国際管理下に置いて解体するとのロシア提案を軸に当面、動くことになった。

国際社会は、管理、解体に加えて化学兵器禁止条約加盟をも受け入れるとしたアサド政権の表明を、単なる口約束や、米国などによる懲罰攻撃を回避する時間稼ぎにさせてはならない。

政権が一連の条件を受諾し化学兵器の保管場所を正直に申告することや、それを査察し破壊する専門家チームを派遣することなどをうたう国連安保理決議を、速やかに採択しなければならない。

米国などは、ロシアやアサド政権に姿勢転換を促した懲罰攻撃への態勢を維持し、軍事圧力を継続することで、政権側を化学兵器放棄へ追い込んでいくべきだ。

オバマ米大統領は10日の国民向け演説で、「武力を行使することなく、化学兵器の脅威を除去し得る潜在的可能性がある」と、ロシア提案に一定の評価を与え、それに沿って外交交渉を進めるべく、議会に武力行使容認決議案の採決も延期するよう要請した。

この構想でシリアから化学兵器が一掃されれば、内戦の混乱下で化学兵器が反政府勢力の一角を占める国際テロ組織、アルカーイダ系の組織の手に落ちてしまったらという悪夢は避けられる。

そして、化学兵器を含む大量破壊兵器は絶対に使ってはならないとの国際規範が何とか守られる長期的な意義は大きい。

だが、構想の具体化は困難で長い過程となる。シリアは大量の化学兵器を数十カ所に分散配置し、しかも移動させているという。政権側の申告に従って、それらの所在を確認し、危険な兵器を焼却などして破壊する必要がある。

そんな膨大な作業は内戦下では容易ではなかろう。政権側や反政府側の妨害も懸念される。

こうした障害を取り除くためにも、安保理決議は専門家チームに強い権限を与え、国際社会の支援態勢を整える必要がある。

そのプロセスへの国際社会の関与を停戦交渉へつなげてほしい。アサド政権の後ろ盾のロシアに求められるのは説得役である。

安倍晋三首相は、ロシア提案を前向きと評価し支持を示した。化学兵器放棄や、内戦終結への外交努力なら、日本にできることもそれなりにあるはずだ。

朝日新聞 2013年09月08日

G20首脳会議 世界的な協力の起点に

米国の大統領が、自ら軍事行動への国際的な支持の取り付けに走る――。

ロシアで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議はシリア問題をめぐって異例の展開となった。

シリアのアサド政権に近い議長国ロシアのプーチン大統領が軍事介入に強く反対したほか、国連を軸とする政治的解決を求める国も多く、オバマ米大統領の思惑通りにはいかなかった。首脳宣言もシリア問題に触れずじまいだった。

これが、首脳同士の応酬によってあぶり出された世界の現実である。

オバマ大統領はこの国際世論を直視し、シリアへの性急な軍事介入を再考すべきだ。

オバマ氏を押しきった感のあるプーチン大統領も、静観を決め込むことは許されない。問題解決に向けてリーダーシップを発揮しなければ、G20を単なる駆け引きの場におとしめたという批判は免れない。

平行線に終わった会議だが、浮き彫りになった現実を起点に各国がシリア問題について知恵を絞り、新たな行動を起こすなら、振り返ってG20首脳会議の新境地が開けたと評価される可能性もある。

世界経済については、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和の縮小を警戒して、新興国にあふれ出していたマネーが米国へ逆流している問題への対処が焦点だった。

成長鈍化に悩む新興国にとって、資金の流出による株安や通貨安の加速は「泣き面に蜂」であり、これに輪をかけているのがシリアをめぐる国際情勢の緊迫である。

FRBの政策変更には新興国も見渡した慎重な配慮が求められる。復調しつつある米国経済も、新興国の変調が行き過ぎれば影響は避けられない。

ただ、より大きな問題は世界経済が緩和マネーに依存していることだ。投機資金は、成長への期待がはげ落ちた国からいち早く逃げ出す。それが経済の急速な悪化を引き起こす。

中ロなど新興5カ国は通貨安定のための独自の基金立ち上げに合意した。日本とインドは緊急時に通貨を融通し合う協定の拡大を決めた。

こうしたマネー対策とあわせて、各国が規制改革などを通じて腰の据わった長期的な投資を促し、着実に産業構造を変えていくことが必要だ。

雇用を創出し、先進国の復調を短命なバブルに終わらせないためにも、G20を核とした世界的な協力が欠かせない。

毎日新聞 2013年09月11日

尖閣国有化1年 焦らず信頼積み上げよ

沖縄県・尖閣諸島を日本政府が国有化して1年がたった。

安倍晋三首相と中国の習近平国家主席はロシアでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議の場で、初めて5分間だけ立ち話をしたが、正式な首脳会談の見通しは立っていない。1972年の国交正常化以来最悪と言われる日中関係は、改善の糸口すら見えない。尖閣周辺の海や空では、不測の事態を招きかねない緊張状態が続いている。日中関係は、本来のあるべき姿から随分と遠いところに来てしまったようにみえる。

特に、ここ1年に中国側で相次いで起きたことは、受け入れられるものではない。昨年8月に香港の民間抗議船の乗組員が尖閣に上陸し、間もなくして中国各地で大規模な反日デモが約1カ月続いた。

中国公船による尖閣諸島周辺の領海侵入が頻発し、1年間で63日、216隻に上った。今年1月には中国海軍艦艇から海自護衛艦に対して射撃用火器管制レーダーが照射されるなど、一触即発の事態も起きた。

こうした行動は、日本による尖閣の実効支配を力によって変更しようとする試みであり、米国などからも憂慮する発言が出ている。

さらに中国は尖閣を歴史問題と絡める戦略を強めてきた。李克強首相は5月にドイツ・ポツダムでの演説で、第二次大戦中に米英中首脳が「日本が盗み取った中国東北地方や台湾などの島々を中国に返還する」と定めたカイロ宣言や、カイロ宣言の履行を明記したポツダム宣言に触れて、「第二次大戦の勝利の成果を破壊、否定してはいけない」と尖閣を念頭に日本をけん制した。

しかし、そもそも日本が尖閣を沖縄県に編入したのは1895年で、それ以前の約10年間、尖閣にどの国の支配も及んでいないことを確認している。カイロ宣言がいう台湾に付属する島々に尖閣が含まれるという証拠はない。そして中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは、1971年になってからだ。

中国が対日強硬姿勢を強めるようになったのは、尖閣国有化が一つのきっかけだが、背景は複雑だ。

中国は、自国の安全保障や海洋権益獲得のため、沖縄、台湾、フィリピンなどを結ぶ対米防衛ラインの第1列島線を超えて、伊豆諸島、グアムなどを結ぶ第2列島線へ、さらに西太平洋へ進出しようという戦略を立て、尖閣諸島をその足がかりにしようとしているとみられている。

読売新聞 2013年09月07日

G20シリア問題 攻撃巡る米露対立が際立った

シリアを攻撃しなければ、化学兵器使用という大罪を見過ごすことになる。攻撃すれば、混乱が広がりかねない。

ロシア・サンクトペテルブルクでの主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)は、シリア問題を巡り米露両国が相反する主張を掲げて、多数派工作を行う異例の展開となった。

アサド政権への限定的攻撃を決断しているオバマ米大統領は、化学兵器の使用が「悲劇」であり、国際法に違反していると訴えた。シリアの後見役であるプーチン露大統領は、政権側による使用を断定する証拠がないと反論した。

化学兵器の使用が人道上許されないのは自明だ。まして、内戦の死者は10万人を上回る。事態悪化の責任はアサド大統領にある。国際社会は無為ではいられない。

だが、オバマ氏への支持は依然、広がりを欠く。主要国で攻撃参加を表明したのはフランスだけだ。G20サミットで採択された首脳宣言にもシリアへの言及はなかった。米議会ですら攻撃承認の決議案を可決するかどうか不透明だ。

攻撃後、シリア情勢がどうなるのか、見通せないからだろう。限定的攻撃は、化学兵器使用の懲罰にはなっても、アサド政権の軍事力に大きな打撃は与えられまい。政権側の反撃で、情勢が一層不安定になることも懸念される。

日本や米欧が求めるアサド氏退陣への道筋も見えてこない。反体制派にはまとまりがなく、混乱に乗じ、反米的なイスラム過激派が勢力を増す恐れがある。

今後、シリアにどう関与し、事態を収拾するのか。米国に問われているのは、軍事、政治両面にわたる総合的な戦略と言える。

国連安全保障理事会で、ロシアは中国とともに拒否権を行使し、アサド政権への非難決議を葬ってきた。内戦収拾への効果的な方策は示していない。国際的な責任を果たすべきだ。

一方、安倍首相はオバマ大統領との会談で、「化学兵器の使用は断じて許されない」と強調した。さらに「大統領の考えは十分理解している」と、表明した。

大量破壊兵器の使用は看過しないとする首相の認識は当然だ。

日本はシリアと軍事協力関係にある北朝鮮の核と化学兵器の脅威に直面している。国際社会がアサド政権に警告を発し、化学兵器の再使用を防がねば、北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねない。

日本は、唯一の同盟国である米国と連携し、情勢の変化を見極めることが大切だ。

産経新聞 2013年09月11日

尖閣国有化1年 新たな威嚇に備え強めよ

政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化してから、11日で1年を迎えた。尖閣周辺における中国の挑発行為は一段とエスカレートしている。

9日には、中国が尖閣付近に無人機を飛行させたことが確認された。尖閣奪取を狙う中国は今後もあの手この手の威嚇で揺さぶりをかけてこよう。尖閣など国境の守りを万全にしていかなければならない。

無人機飛来に先立つ8日には、中国軍の爆撃機が沖縄本島-宮古島間の公海上空を往復した。いずれも日本の防空識別圏に入り、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)している。

さらに10日には、中国海警局の船8隻が、海上保安庁の巡視船の退去要請を無視して、尖閣付近の領海に侵入した。

2020年夏季五輪の東京開催決定に日本が沸いている隙を突いたかのような出来事だ。対日圧力を強める計画的な動きであり、極めて遺憾である。中国が1964年の東京五輪の開催期間中に、初の核実験を行った国であることも忘れてはならない。

今回、警戒すべきは無人機の投入だ。新たな威嚇手段といっていい。中国国防省は9日の飛行は定例訓練だとする談話を出した。実際には、無人機を尖閣の監視、測量に使うことで、領有権の主張を強める意図があるようだ。

中国の無人機は、これまでにも尖閣付近を飛行した疑いがあり、これからも繰り返し飛んで来る可能性は高い。外務省は中国側に自制を申し入れたが、簡単に受け入れるような国ではあるまい。

無人機への日本の備えは十分ではない。小野寺五典防衛相は、無人機が領空侵犯した場合の対応の検討に着手する考えを示した。現行のスクランブルの態勢で対処するのは難しいからだ。

例えば無人機に無線やサイン、信号弾などの警告が通用するかという問題がある。尖閣領空の長時間侵犯に際し、操縦手がカメラで監視していることを想定しての警告射撃や、撃墜措置、操縦妨害の可否も含めて早急に対応策を決めなくてはならないだろう。

新しい挑発手段の登場で、尖閣の守りは一層、厳しいものになりかねない。無人機のほかにも、中国の海上民兵による尖閣占拠や艦船搭載ヘリコプターによる領空侵犯などさまざまな事態に備えて、防衛態勢の総点検が必要だ。

朝日新聞 2013年09月07日

尖閣1年 あまりに多くを失った

戦争の記憶を呼び起こす8月に続き、9月は中国との関係を振り返る季節である。

18日は満州事変(1931年)が始まった日であり、29日は日中国交正常化(72年)の記念日。また、3日は中国では抗日戦勝記念日とされる。日本が降伏文書に署名した翌日の祝賀(45年)にちなむ。

そこに、9月11日が加わった。昨年のこの日、日本政府は尖閣諸島の3島を国有化し、中国政府は猛反発した。あれから1年。日中関係は冷え切り、非難と抗議の応酬が続いた。

見過ごせないのは、中国側が尖閣を歴史問題と関連づけて論じていることだ。

中国の李克強(リーコーチアン)首相は5月、第2次大戦中に米英中首脳が発したカイロ宣言にふれ、「日本が盗み取った東北(旧満州)や台湾などの島々を中国に返さなくてはならないと明確に定めた」と述べた。尖閣を念頭に置いた発言であることは明らかだ。

8月15日には、中国共産党機関紙・人民日報が尖閣について「第2次大戦後の日本の領土処理、国際秩序問題をどう扱うかに関わる」と論じた。島を不法に占拠する日本は、戦後の国際秩序に逆らっている――。そう印象づける意図さえにじむ。

だが、こうした中国の言い分は説得力に欠ける。

そもそも敗戦直後の台湾接収にあたり、当時の中華民国政府は尖閣の引き渡しを求めなかった。中国が領有の主張を始めたのは、それから20年以上もたってからだ。

中国が「歴史」を言い募るのは、日本の侵略や植民地支配と絡めて国際世論を味方に引き込む狙いからだろう。尖閣は別問題だと、日本政府は世界に向け丁寧に説明する必要がある。

一方、中国の理不尽な主張を許す隙が日本側にあるのも事実だ。この春、安倍首相が「侵略の定義は定まっていない」と発言し、欧米からも強い疑念の声があがったのはその典型だ。

この間、日中両国はあまりに多くのものを失った。

首相は一昨日、ロシアでのG20首脳会議前に中国の習近平(シーチンピン)国家主席と言葉を交わした。5分間とはいえ、この1年、首脳同士の接触がなかったことを考えれば一歩前進だ。

日本政府はさらに粘り強く対話を呼びかけるべきだ。まずは経済や環境など協力可能な分野で、接点を広げたい。

中国には、改めて自重を求める。歴史問題でナショナリズムをあおれば、自らの手足を縛る。習指導部にも、その愚かさは分かっているはずである。

毎日新聞 2013年09月07日

シリア情勢と日本 攻撃の根拠が知りたい

米国のオバマ政権が、化学兵器使用が疑われるシリアのアサド政権への軍事攻撃を検討する中、日本政府が難しい対応を迫られている。

政府内では、米国が国連安全保障理事会の決議なしに攻撃に踏み切った場合、イランや北朝鮮など大量破壊兵器絡みで国際社会と対立する国々への影響も考慮して、米国の同盟国として支持や理解を表明すべきだという考え方が強い。しかし、化学兵器が使われたのは間違いないとみられるものの、使用したのがアサド政権なのか反体制側なのかという、肝心な点がはっきりしない。米国はまずアサド政権側が使用したと主張する明確な根拠を示してほしい。日本は米国に証拠提示を迫るべきだ。

ロシアで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせ、安倍晋三首相は、オバマ大統領と会談し、米国が計画するシリア攻撃について「非人道的行為を食い止める責任感に敬意を表する」と述べ、シリア情勢改善に両国が緊密に連携することを確認した。踏み込むことを避けた首相の対応は、不明な点が多い現時点では妥当なものと言えよう。

最大の不明点は、化学兵器を誰が使用したかだ。米政府の報告書では、8月21日のダマスカス郊外での化学兵器使用疑惑について「アサド政権が使用したと強く確信している」としているが、断定できるのか疑問だ。仏政府の報告書も同様だ。

仮に化学兵器を使ったのが反体制側なら、「アサド政権に化学兵器使用を思いとどまらせる懲罰的攻撃」という米仏の攻撃の根拠は崩れる。

2003年のイラク戦争で、当時の小泉純一郎政権は、安保理決議がない米英両軍の攻撃を支持し、復興支援で自衛隊を派遣したが、開戦の根拠となった大量破壊兵器は見つからなかった。欧米では反省から検証が行われたが、日本では戦争支持の経緯や責任はうやむやのままだ。

シリア攻撃に近いケースとされる1999年のコソボ紛争では、安保理決議がないまま、アルバニア系住民の保護という人道的介入を理由に北大西洋条約機構(NATO)がユーゴスラビアを空爆した。日本は理解を示し、人道復興支援をした。しかし、人道的介入の考え方には、拡大解釈を生むなど批判もある。

シリア情勢は、安保理決議にロシアと中国が反対し、安保理が機能しない中、国際社会が紛争にどう対処するかという重い課題を突きつけている。安保理決議なしの軍事攻撃が制裁の方法として妥当なものかは、なお議論が残るが、まずは最低限、明確な証拠の提示がなければ、攻撃の妥当性を判断しようがない。政府は、米国がしっかりとした根拠を示すよう外交努力を強めるべきだ。

読売新聞 2013年09月03日

シリア攻撃決断 米は十分な情報開示と説明を

オバマ米大統領がシリアへの軍事攻撃を決断した。化学兵器は黙認しないという決意表明だ。

オバマ氏は声明で、シリアのアサド政権が化学兵器で市民多数を殺害したとして、強く非難した。「米国の安全保障にも深刻な脅威」であり「テロ組織への拡散につながりかねない」と危機感を示した。

シリアは化学兵器禁止条約に未加盟だが、化学兵器の使用や保有、拡散を禁じている国際規範に違反している疑いが濃厚だ。

米政府は報告書の中で、政権幹部の通信傍受記録などをもとに、アサド政権が化学兵器を使ったと「確信する」と結論づけた。

ただ、米政府は、詳細は機密情報として明らかにしていない。十分な情報を開示し、丁寧に説明することが求められる。

米大統領は宣戦布告なしに軍事行動を行う権限を持つのに、あえて、オバマ氏は議会に攻撃の承認を求めた。米国が一枚岩だと、国内外に強調したいのだろう。承認を得られない場合は、政治的痛手となる“賭け”だ。

シリア攻撃の賛否を巡り、米世論は割れている。ブッシュ前政権がイラク攻撃の根拠とした大量破壊兵器は結局、見つからなかった。米国にはこの苦い教訓がある。

9日に本格的に再開する米議会で行われる審議の行方を、世界中が注視している。

英国は軍事攻撃への不参加を決め、参加に前向きな主要国はフランスだけだ。米議会が攻撃を承認すれば、国際的な支持取り付けにも弾みがつく可能性がある。

オバマ氏は、攻撃が地上軍派遣を伴わない、「期間と規模を限定したものになる」と強調した。だが、米議会には、限定的な攻撃ではアサド政権の打倒にはつながらないと懸念する声もある。

大統領の決断が内戦収拾に道を開くかどうかも焦点である。

安倍首相は、オバマ氏の発表について「大統領の重い決意の表明」と理解を示した。シリア情勢の悪化については「無辜(むこ)の人命を奪い、人道状況の悪化を顧みないアサド政権に責任がある」とアサド政権を非難している。

妥当な認識だ。アサド政権が実際に化学兵器を使用したなら、北朝鮮の大量破壊兵器の脅威を受ける日本としても看過できない。

首相は、軍事攻撃時の態度表明をどんな論理や条件で行うかを見極めるうえでも、化学兵器の使用を認定した根拠の説明を米国に求めるとともに、米議会の動向の情報収集に努める必要がある。

産経新聞 2013年09月07日

G20とシリア 米国は関与へ理解広げよ

サンクトペテルブルクで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合で、シリア問題が重要テーマとなり、軍事介入の準備を進める米国と、これに反対するロシアが、駆け引きを繰り広げた。

オバマ政権が武力行使に踏み切るに際しては、可能な限り多くの国から理解と支持を取り付けるべきだ。武力行使は世界の安全保障秩序を守るためのものだが、最終的に目指すのは和平の実現だ。そのためにも国際社会の後押しは欠かせない。

シリアで化学兵器が使用されたことはほぼ間違いなく、これが国際規範に著しく反していることについての異論は聞かれない。米国は、アサド政権側が化学兵器を使ったとする証拠を提示したが、ロシアが強く反発している。さらなる証拠があれば、オバマ政権には可能な限りの開示を求めたい。

G20会合を前に、米側の要請で急遽(きゅうきょ)、日米首脳会談が開催された。安倍晋三首相は「米国の強い責任感に敬意を表したい」と述べたが、軍事介入への「支持」には踏み込めなかった。

国連安保理の決議抜きでの武力行使となることへの批判もある。だが問題は、拒否権を持つロシアが、アサド政権を擁護していることだ。同調する中国とともに過去3度、拒否権を行使して、制裁警告などの決議案を葬ってきた。

露中への説得をあきらめるべきではないが、安保理が機能しないなら、その枠外で紛争解決を模索せざるを得ない。安保理決議抜きの武力行使の是非をめぐり、G20でも意見は割れた。

国際社会の分裂は内戦激化を許すことにもなる。

オバマ政権は、武力行使は化学兵器使用に対する懲罰であり、数日で終わるとしているが、それで事態は改善するだろうか。一過性の攻撃ではなく、内戦終結に向けた努力の継続が求められる。

オバマ政権はこれまで紛争への本格関与を避けてきた。だが、軍事介入の後には交渉のテーブルを用意するなど、和平の達成に力を尽くしてほしい。

日本も同盟国として支援を惜しむべきではない。

安倍首相はオバマ大統領に「難民や周辺国支援に一層、積極的な役割を果たしていく」と伝えた。難民が殺到しているヨルダンやトルコ政府とも連携し、和平に効果的な支援を行うべきだ。

朝日新聞 2013年09月05日

シリア情勢 G20は存在感を示せ

米国がシリアへの軍事介入を検討するなか、主要20カ国・地域(G20)首脳会議がロシアで開かれる。

死者11万人を超え、深刻化する一方のシリア情勢に打開の方向性を見いだすべく、議論を尽くしてほしい。

米政権は、シリアのアサド政権が化学兵器で1400人以上の住民を殺害したことを、介入の根拠としている。

一方、英政権は、議会の承認を得られず介入を断念した。米国とともに戦ったイラク戦争で、介入の大義とされた大量破壊兵器が見つからず、戦線も泥沼に陥った。英下院が退けたのは、このときの教訓が大きい。

実際、米政権は議会の承認を得る方針に転じたものの、機密を理由に化学兵器使用の具体的な証拠を十分に示していない。アサド政権を後押ししてきたロシアや中国は「政権が化学兵器を使った証拠はない」と反論し、対立が続いている。

化学兵器の使用が、人道上許されないのは言うまでもない。

だが、現状では軍事介入について国際社会の納得を得られるとは言えまい。

しかも、シリアでは反体制派が結束できず、イスラム過激派もふくめ、仲間うちの抗争が続く。周辺国の思惑も複雑に交錯している。

米政権のいう限定的な攻撃を加えても、紛争が周辺国に拡大するなど、かえって事態の悪化につながる恐れが大きい。

G20はほんらい経済協議の場だが、シリア情勢の混迷は中東原油のさらなる高値を招き、先進国と新興国とを問わず経済を直撃する。

いまこそG20首脳は、これまでの対立を乗り越え、事態の打開に向けて足並みをそろえるべきである。とりわけ議長を務めるロシアのプーチン大統領の責任は大きい。

国連は化学兵器使用の現地調査を終え、その分析に入っている。オバマ米大統領は介入の決定を急ぐのではなく、まずはその結果を待つべきだろう。

安倍首相やドイツのメルケル首相は、国連安全保障理事会の場で中ロをふくむ合意を形成することの必要性を指摘している。その方向性は正しい。

中ロの首脳も、米国の軍事介入の動きを批判するだけでは無責任だ。事態が少しでも好転するよう、建設的な役割を果たす必要がある。

安倍首相は、プーチン大統領と5日に会談する。北方領土問題が中心議題だが、シリア情勢で米との協調に動くよう、強く働きかけるべきである。

毎日新聞 2013年08月31日

英が攻撃断念 シリア泥沼化を恐れた

前途の多難さを暗示する出来事だろうか。米国が検討するシリア攻撃に英国は参加しない見通しとなった。アサド政権側の軍事拠点攻撃を許可してほしいとする英政府の動議を、英下院が反対多数で否決したのだ。武力行使で米英が別行動を取るのは歴史的にも異例である。世界に驚きが走ったのも無理はない。

英政府はこれまで米オバマ政権とともに、アサド政権が化学兵器を使ったと非難し、国連安保理ではシリア攻撃を容認する決議案を提示していた。米国と二人三脚で軍事介入の布石を打ってきた英国の脱落は、オバマ政権にとって痛手だろう。

「特別な関係」とされる米英は、リビア攻撃(2011年)、イラク戦争(03年)、アフガニスタン攻撃(01年)、ユーゴスラビア空爆(1999年)、イラクとの湾岸戦争(91年)など主要な軍事行動で共闘してきた。だが、英下院は今回、化学兵器問題で国連調査団がまだ結論を出しておらず、安保理の協議も不十分として攻撃を認めなかった。

そんな英議会の空気も、国連調査団の結論いかんでは変わるかもしれない。だが、米主導の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中でカナダやイタリアも不参加を表明したのは、化学兵器をめぐる問題だけでなく、軍事介入でシリア情勢はさらに泥沼化しないか、アサド政権を倒しても欧米にとって好ましい後継政権ができるのかという、もっともな疑問を見据えているからだろう。

それ以前に、アフガンでの長い軍事作戦でNATO加盟国は疲れている。特にアフリカ・マリなどに軍事介入したフランスは新たな戦線を抱えたくあるまい。米国自身、巡航ミサイルなどで軍事拠点を破壊するのはともかく、地上軍派遣を必要とする事態を招きたくはないはずだ。

しかも安保理はロシアや中国の反対で容認決議採択の見通しが立たず、英国に続いて米議会が攻撃に反対する可能性もある。米国は「大量破壊兵器の脅威」を大義名分として英軍とともにイラクに侵攻したが、同種の兵器を発見できなかった。そのイラク戦争の苦い教訓が今、立ちふさがっている。

この際、オバマ大統領はもう一度、政治解決の方策を考えてはどうか。化学兵器を使った国を放置すれば、中東の同盟国イスラエルの安全にかかわるという判断もあろう。化学兵器は北朝鮮にもある。菅義偉官房長官が「日本にとって無関係ではない」と言うのは、その通りである。

だが、軍事行動を殊更急ぐ必要はないはずだ。攻撃後のシリアで何が起きるのか。オバマ大統領は、攻撃に伴うプラスとマイナスを慎重に見極めて結論を出してほしい。

読売新聞 2013年08月28日

シリア内戦 化学兵器疑惑の徹底解明を

シリア内戦では、犠牲者がすでに10万人を超えた。まして化学兵器が使用されたとすれば、一刻の猶予もなく流血を止めなければならない。

シリアの反体制派組織「国民連合」によると、アサド政権軍は21日、ダマスカス郊外に化学兵器を搭載したロケット弾を撃ち込み、多数の市民が犠牲になったという。負傷した子供たちの動画もインターネットで公開された。

政権側は、これを全面否定し、化学兵器攻撃を行ったのは反体制派だと主張している。

化学兵器の使用は、明白な国際規範違反である。事実が確認されれば、責任が厳しく問われなければならない。

シリアに入っていた国連調査団は、現地で化学兵器が使われたかどうかを確認する作業に入ったが、何者かに車両を銃撃される妨害に遭い、難航している。

安倍首相が、外遊先のクウェートで「国連調査団の現地調査が妨害なく遂行され、事実関係が早期に明らかにされることを望む」と語ったのはもっともである。

調査結果は、安全保障理事会での討議に付される見通しだ。安保理は、調査結果を踏まえて、化学兵器疑惑を解明し、シリアへの対応措置を講じる必要がある。

米国は、アサド政権側が化学兵器を使用したとみなし、国連の調査結果を待たず、英国やフランスなど北大西洋条約機構(NATO)諸国との間で、政権側に対する軍事攻撃の検討に入った。

オバマ大統領はこれまで、シリア内戦への米国の直接関与について、慎重な態度を取ってきたが、強硬姿勢に転じつつある。

化学兵器の使用は「越えてはならない一線」とアサド政権に強く警告してきたからでもあろう。化学兵器使用を黙認すると、米国の威信に傷が付く。世界の他の地域にも使用が広まりかねない。

ただ、米国務省は、「政治的解決」の重要性も強調している。軍事行動を決定する前に、一層の外交努力の積み重ねが求められるのは言うまでもない。

疑惑の解明と並行して、自国民への攻撃をやめようとしないアサド政権への国際的圧力をより強化し、内戦の収拾を改めて目指すことも重要だ。

6月の主要8か国首脳会議は、シリアの和平に向け、政権と反体制派、関係各国による国際会議の開催で合意している。早期の会議実現が望まれる。

シリアをめぐる国連と国際社会の動向を注目したい。

産経新聞 2013年09月04日

日米首脳協議 シリア関与で同盟深めよ

安倍晋三首相がオバマ米大統領とシリア情勢をめぐって電話協議し、日米が緊密に連携することを確認した。

オバマ政権は、シリアのアサド政権が化学兵器を使って、多数の住民を殺傷したとして軍事介入を決断した。両首脳が「いかなる事態でも化学兵器の使用は人道上、許されない」との考えで一致したが当然の認識だ。

国際社会はアサド政権に対し、断固とした態度を示すべきだ。軍事介入はそのための選択肢の一つではあろう。

だが、武力行使には、ロシア、中国が激しく反発している。フランスとともに軍事介入に加わると表明していた英政権は、最終的に議会の反対で断念した。米政権は厳しい立場に立たされている。同盟国として日本が米国をどう支えていくのかが問われている。

アサド政権の化学兵器使用に「強い確信」があるとする米政府報告書は、通信傍受記録などを根拠としており、具体的な証拠は含まれない。

開示しにくい機密情報が含まれるとの事情は理解できるが、米政府には、より丁寧で納得のいく説明がほしい。

イラク戦争では、米英両国などがイラクが所持しているとして開戦理由に掲げた大量破壊兵器が見つからなかった。

安倍首相はオバマ氏に「安保理の決議を得る努力も継続してほしい」と要請した。武力行使を含め、アサド政権に対していかなる行動を起こすにせよ、米国は最後まで国際社会の合意形成をあきらめてはなるまい。安保理決議があれば日本も支援が容易になる。

アサド政権を擁護するロシアと中国は5日からサンクトペテルブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合の場で、武力行使に反対する構えだ。

安倍首相は、G20で予定される日露首脳会談でプーチン大統領を説得し、米露の歩み寄りを積極的に促すべきだ。

米議会の承認が前提だが、オバマ政権は軍事介入すれば、それが限定的であれ、シリア情勢への関与を深めざるを得なくなる可能性がある。

日本のできることは限定的だが、シリア難民の支援など、米国の要請にも耳を傾けながら連携することが重要だ。そのことが同盟を深化させる。

朝日新聞 2013年08月29日

シリア情勢 国連の調査が先だ

内戦状態が続く中東のシリアに対し、米、英、フランスが軍事行動の検討に入った。

首都近郊で、アサド政権が化学兵器を使って多くの市民を殺傷した疑いが強まっている。

米英仏は、大量破壊兵器の使用は許さない決意を国際社会に示し、同じ殺戮(さつりく)を再び犯さないよう抑止するとしている。

だが、いまの米英仏の動きは性急であり、危うさを伴う。

化学兵器が使われたとの疑惑は、まだ十分に解明されたとはいえない。内戦を収束に導く抜本的な道筋も描かれていない。

いまは国連の調査団による事態の解明を尽くすべきであり、内戦の収拾に向けた外交調整にこそ本腰を入れるべきだ。

アサド政権は疑惑を否認しているが、今月から現地入りした国連調査団による解明に全面協力しなくてはならない。

調査の結果は、国連安全保障理事会に報告される。米欧は、その結果を踏まえて、これまで対シリア決議に反対し続けてきたロシアと中国の説得を再度試みることが必要だろう。

同時に、トルコやアラブ連盟など深い利害を持つ周辺国との意見調整を急ぎながら、シリアの人道危機に国際的な取り組みを強める新たな枠組みづくりを進めるべきだ。

2年半におよぶ内戦の死者は10万を超えた。隣のレバノンやヨルダンなどへの難民は200万にのぼり、国連によると、その半数は子どもだという。

この惨状に加えて化学兵器が使われれば、大量殺戮は歯止めがなくなる。これまで長らく介入に慎重だったオバマ米政権が危機感を強め腰を上げるのは、遅すぎたとはいえ当然だ。

だが、いま検討が伝えられる行動は軍事介入でしかない。アサド政権の軍事施設を破壊すれば無分別な攻撃の一時的な抑止につながるかもしれないが、逆にかえって混乱を拡大させる恐れがつきまとう。

空爆が反体制派を勢いづけたとしても、各派はいまも結束していない。中には国際テロ組織アルカイダに通じるイスラム過激派もいる。アサド政権後を担える国家体制の受け皿はまだ見えていないのだ。

米欧の強硬策は、アサド政権を支えるイランのロハニ新大統領を対話路線から遠ざける心配もあるだろう。中東全域が流動化する懸念がぬぐえない。

今回の化学兵器疑惑を機に米欧が力を注ぐべきは、無秩序な争いをやめさせ、各派を話し合いの席につかせるための方策を練ることだ。空爆では、抜本的な解決策は生み出せない。

毎日新聞 2013年08月29日

シリア緊迫 米は軍事介入を急ぐな

シリア情勢が重大な局面に差し掛かった。アサド政権側は首都ダマスカス近郊で化学兵器を使って市民多数を殺傷したと判断した米国は、英仏などと協力してシリアへの限定的攻撃に踏み切る構えだ。巡航ミサイルなどを使った攻撃は一両日中にも始まるとの報道もある。

他方、国連調査団は化学兵器の使用疑惑について現地調査を続けている。政府軍の使用を裏付ける証拠が得られるかは微妙だが、まずは調査団の結論を待ちたい。米国も武力行使を急がず、「疑う余地はない」(ケリー国務長官)との独自の判断に至った根拠を説明してほしい。

というのもシリア情勢は政権側と反体制派による情報戦の趣があるからだ。米オバマ政権は軍事介入の条件として、政権側による化学兵器使用を挙げていた。米国を巻き込むために反体制派が化学兵器を使った可能性も無視できない。この点は慎重かつ公正に判断すべきである。

だが、全体としてシリア情勢が好転するめどは立たず、北大西洋条約機構(NATO)加盟国による攻撃が始まりそうだ。外交解決が望ましいのは言うまでもないが、ロシアと中国はアサド政権に対する国連安保理決議案を拒否権で葬り続け、国連は機能停止状態に陥っている。

2003年のイラク戦争に関して米国が安保理の「機能停止」を批判した時とは事情が違う。10年前は「イラクの大量破壊兵器の脅威」という米ブッシュ政権の主張に対し、仏などが拒否権をちらつかせて反対した。米国の主張が根拠薄弱で、後に米国自身が誤りと認めたことを思えば安保理はむしろ機能したのだ。

他方、シリアでは内戦の死者が10万人に達し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、11年3月以降、周辺諸国に逃れた難民は約185万人。「今も毎日6000人が周辺国へ逃れている」(UNHCR幹部)という。ロシアと中国はこの明白な人道危機にほとんど目をつぶって拒否権を使い続けた。

米大統領報道官によると、攻撃は政権転覆を狙うものではなく、地上部隊派遣も考えていないという。空爆にほぼ限定する点では米英仏などのリビア攻撃(11年)、NATOによるユーゴスラビア空爆(1999年)などを念頭に置いているようだが、この二つの作戦が政権崩壊につながったことを思えば、アサド政権は実質的に存亡の分かれ道ともいえよう。

武力行使含みの局面になったのは残念だが、攻撃を境にシリア情勢が混迷を増す可能性も排除できない。米国にはあくまで慎重な対応を望みたい。シリアと関係が深い露中は、危機回避に向けてアサド政権への最後の説得に努めるべきだろう。

産経新聞 2013年08月30日

シリアの化学兵器 責められるべきは政権だ

シリアのアサド政権が化学兵器を使い子供を含む住民多数を殺傷したとして、米英などが軍事介入に踏み切る構えだ。

化学兵器など大量破壊兵器の使用を許せば、世界の安全保障秩序は揺らいでしまう。そうした事態を断つという国際社会の意思を示すためにも、懲罰的な武力行使は選択肢であってしかるべきだろう。

化学兵器による大規模攻撃は21日に首都ダマスカス郊外で起きたとされる。反体制派は政権側が攻撃したと非難、政権側は反体制派の仕業だと反論している。

オバマ米大統領は米テレビとの会見で、「シリア政府が実施したと結論付けた」と断言した。

イラク戦争では、開戦の主たる根拠とされた大量破壊兵器が存在しなかったと後に判明した。二の舞いを避ける意味でも、米政府はシリア政府が実行したとの証拠をできるだけ開示してほしい。

化学兵器による大規模攻撃は、イラクのフセイン政権が1988年にクルド人反乱鎮圧のため行い数千人を殺害して以来となる。

核、生物兵器を含む大量破壊兵器は使ってはならないというのが国際的な規範である。使用例が重ねられれば、その規範に支えられた国際秩序はぐらついてくる。

オバマ氏が、シリア内戦で化学兵器使用を「越えてはならない一線」としてきたのもそのためだ。ここで断固たる対応を取らなければ、核開発国に足元を見られるなど米指導力は損なわれよう。

実際、米英は、アサド政権に化学兵器を使わせない目的で軍司令部などを巡航ミサイルでたたく限定的介入を計画している。

問題は、軍事介入には本来、国連安保理の武力行使容認決議が必要であり、シリアの後ろ盾ロシアとそれに同調する中国が決議採択に反対していることだ。遺憾というほかないが、採択への外交努力はぎりぎりまで必要だろう。

決議が得られなければ、「有志国による介入」しかない。コソボ紛争では99年に「人道上の危機」を根拠に北大西洋条約機構(NATO)が決議抜きで介入した。

安倍晋三首相も化学兵器使用の可能性が高いとし、「責任は人道状況の悪化を顧みないアサド政権にある」と述べた。

シリア内戦の死者は10万人を超す。限定介入した場合、次に内戦終結への足がかりも模索しなければならない。

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